その時間を記念すること_

その時間を記念すること。

三脚を 立ててここに
二人ならんで 写真を撮ろう
眺めより 景色よりも
二人ならんで 写真を撮ろう
(THE HIGH LOWS『サンダーロード』より)

この動画の中で、安達祐実さんは、写真を撮ってもらうことを「自分の存在を確認する作業」と言った。「いいところだけじゃなくて、幸せということじゃなくて、いろいろあるよねっていうところも全部載せてるもの」だと。

それを聞いて「写真」という言葉の「真実を写す」という意味合いがなんとなくつかみとれた気がした。

そして、ぼく自身は、そんな存在を確認するための「写真」を毎日撮るような生き方をしているなと思った。

ぼくは毎日、日記を書いている。
ほぼ日手帳の五年と一年と、別の手帳の三年分のものの三冊。

そのほかにこうしてブログも書いているし、メルマガも出している。
頻繁にスマホで写真を撮ってインスタグラムにアップしているし、フェイスブックにもたくさん投稿している。ピアノを練習したり、歌を唄ったりするのを動画に撮って出してもいる。

そのすべては「日記」だと思っている。
一番の読者は自分(ぼくは「他の人が読みやすいように」と意識するのが苦手だ)。自己満足だと批判されたら「すいません」というほかない。

けれど、それが仕事にもなっている。

『あなたのうた』は、15分の語りを耳や意識を通して「辿り」、全身全霊というファインダーを通してお返しする仕事だし、

『作曲事始』は(やってみるまで気づかなかったけれど)、曲が生まれる過程を、赤ちゃんが生まれるまでの十月十日のように伴走し、そのときごとの曲の状態をお話をうかがうことで映し返す。

『歌い手冥利』は、その日そのときの歌い手さんの状態をたどり「表現したいところ」までついてゆく。ここでも写真を撮るように「存在を確認する作業」がたえず行われている。

最新の仕事である『「あなたの時間」に起きたこと。』では、15分語ったことを文字に起こし、いっしょに読んでいく。文字起こしは語りの写真だし、読み聞かせのように声に出すことで、その時間にいた相手の存在をていねいに確かめていくことになる。

あなたと出会った、その時間を、存在を記念すること。
あなたがこのようにいてくれて、ありがたかったと強く念じて、記すこと。

大げさかもしれないが、ぼくは毎日、そんな暮らしをしている。

そのぐらい、過ぎていく時間の中に、その人とのひとときがあったことを愛おしく思っている。

今日、『あなたのじかん』という形で、ほぼ初対面の方と一時間ほどおしゃべりした。

その中でも「全身全霊で人と向き合う」ことを語りあった。

お互いが元気になるような、いい時間。
その方がわざわざ時間を割いてくれたおかげで、ぼく自身もこんなことを思いついたおかげで、その時間が成り立った。ありがたかった。

夜には、奥さんが落ち込んでいるぼくの話を聞いてくれた。
おかげで元気を取り戻したし、結婚してはじめて聞く大事な一言を聞かせてもらってすごくうれしかった。ありがたかった。

一日一日、おとずれる時間を「これに費やしてよかったなあ」と思えるように。

これからも心のカメラに手ごたえのある景色を写していきたいし、そんなふうに暮らし、働いていきたいと思う。

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