日曜日⑥

G/2 G/2 3/G
剛志明奈の7、8、9回目の投球結果である。2ゲーム目が終わろうとしていたが、上達の兆しすら無かった。1ゲーム目では剛志対して下手すぎるだの雑魚女だの散々に煽っていた光も後半には勝負に飽きてスマホをいじっており、彼女の投球を見すらしない。シューズすら脱いでいる。自分の番にのみ、椅子から立ち上がり、靴下のままサッとボーリング玉を投げてはすぐに席に戻ってスマホをいじり出すの繰り返しであった。光は185cmの高身長でガタイもよく、運動ができないイメージが全く湧かない。当然のようにストライクを連発していた。そもそもなぜ彼女は勝てると思ったのか。初めから無謀な挑戦だったのだ。しかし当の本人は投げるのをやめず、挙句の末に私の番にも練習だと言って投球し始めていた。
「なんで曲がるよ!このレーン傾いてんじゃないの?!」
剛志は本気でクレームをいれそうな勢いで声を荒げた。
「もう良いだろ。諦めろ。お前こないだもビリヤードで負けて意地になって練習した割に今日も響にボロ負けしたんだろ?センスねーんだよ。」光が口を開く。
「うっさい!これストライクとったら私の勝ちに変更!」
私もどちらかと言えば光と同じ気持ちではあったが、彼女の負けん気には一周回って感心させられていた。自分勝手な振る舞いも見てて面白かった。光は急なルール変更ではあったにも関わらず黙ってスマホをいじっていた。万に一つもありえないと確信していたのだろう。
「だからなんで真っ直ぐ転がらんないのよ!やっぱ曲がってるわ!絶対!」
案の定ストライクはとれなかった。
「はい、俺の勝ちな。響が2位でお前がビリだ。ビリは奴隷だろ?あそこで売ってるマイボール買ってくれや。」光が言う。
「は?あんたあんなの買ったって使わないでしょ?無しよ無し。」
「奴隷ルールはお前が決めたことだろ?今回でボーリングにハマっちまったんだよ俺は。ほら買ってこい。ボーリングの球なら何でもいいからよ。」
「...もう!2度とやらないわ!ボウリングなんて!」
そう言って剛志は渋々売店に向かっていった。
「バカだなあいつは。」
そう言うと光はニヤニヤしながら売店に向かう剛志の後ろ姿の連写していた。

すぐに剛志はボーリングの球を持って戻ってきた。
「ほら、良いでしょこのボール。あんたにとってもお似合いだわ。」
そう言って剛志はピンクの下地に黄色い星がたくさんプリントされたボールを光に渡そうとした。
「あんた球なら何でも良いって言ったわよね?それに1番重いボールよ。ほら、これ裸で持って帰りなさい。18000円もしたんだから大切にしてよね。」
剛志は勝ち誇った顔をしながら言った。
「は?何言ってんだ?お前は奴隷だろ?おれんちまでお前が運べ。18000円もするからな。落とすなよ?」
「ふざけないで!」
剛志の怒りは限界に達していたのだろう。声のトーンが明らかにおかしかった。少し涙声だったかもしれない。
「ほら、お前がせっかく買ってくれたからな。インスタにあげといた。」
光は先ほど撮った写真を見せながら言った。その言葉が最後のトリガーとなったのだろう。とうとう剛志は何かを叫びながら光に向かって買ったボーリング玉を投げつけた。そして光の顔面にピンクの鉛玉が当たるかと思われたが、あまりの重さに全く飛距離が出ず、光の足元に玉は落ちた。しかし、直後、光は絶叫した。
「ゔぁあああ」
玉は光の足の甲に落ちていた。

その後、剛志は光をタクシーで家まで送り、早朝、病院へと向かったが、彼の足は骨折していた。松葉杖生活を強いられた光に対して、加害者である剛志は本当に奴隷のごとく世話をさせられた。タクシーに乗せ忘れたピンクのボーリング玉は私が持ち帰るハメになった。一体誰への罰ゲームだったのだろうか。

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キャラ紹介も兼ねてここまではノリで書いていましたが、来週からは物語らしくなる予定です。その意味ではまだ始まってすら無いけど、既に小説縛りやめたい。




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