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2019年4月富岡浪江取材 真っ黒な塊

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<続き>

大堀地区手前の帰還困難区域ゲートを後にし、高瀬川脇のフレコン置き場へと向かう。昨年10月にも来た場所。

常磐道の下をくぐっていく。昨年10月はこの右側の道へ向かった。

見えてきた。こちら側から撮影するのは初めてだ。広大なフレコン置き場、一度の訪問で全てを捉え切ることは出来ない。8年間時が止まったままの場所もあれば、日々変化していく場所もある。

(土手の上は荒れているが、思ったほどではない)

ここは緑のシートではない。真っ黒なシートで覆われ、黒光りしている。

(まさに“鎮座”している)

この光景は、絵になる。頭にイメージが浮かんだ。

向こうには家が見える。あそこは避難指示解除された場所だが、あの家の人はどう感じるだろう。ここに帰りたいと思うだろうか。

やりきれない思いを抱えて、引き返すことにする。

常磐道。トラックが走るたび揺れている。風も相変わらず強い。さっき見てきたフレコン置き場は、常磐道からも見えるはずだ。先日退位された天皇も見たはずだが、果たしてどう感じただろう。「放射性廃棄物」になってしまった、福島県民の大切な財産を…

この辺は毎時1μSvを前後していたが、風が吹くと数値が上がる。風向きの関係で、目の前の帰還困難区域に生い茂った木などから放射性物質が飛んでくるのだろう。

この数値を「空間線量は充分下がってる」と言えるのか。ここで子育てしろと言えるのか。拙速な帰還政策の目的は、高齢者の望郷の念を都合よく利用した棄民政策であり、そこに見え隠れするのは「経済最優先」と言う名のギラギラした拝金主義だ。国民の命を軽視した金欲に塗れた今の日本のやり方は、後の世代に大きな禍根を残すだろう。

戻ってきた。近くにフレコンの仮置場がある関係でアスファルトは新しく綺麗になってるが、ここに暮らしが戻ることは少なくとも数十年はないだろう。この先に見える家はただ朽ち果てていくのみだ。

…東京五輪の聖火リレーが話題になってるが、どうせならここまで来たらどうだろう。この惨状を、全世界に配信出来るものならやってみろ!

昨年10月はこの道を進み、常磐道の下で右折した。左側は上に載せた土手だ。

再び大堀幼稚園。こちらから見るとやや不気味。風ではためいていたブルーシートが見える。この後ろには、昨年10月は建築中だった一戸建てが完成していた。廃墟となった幼稚園と小学校の目の前で生活するのはどんな気持ちだろう。

大堀小学校で故障してしまった標準レンズ。あれやこれや試してみたり、望遠レンズに変えてみたり、いろいろやっていたら電池残量が少なくなってしまった。まだ午前中なのに…周囲の状況や空間線量のことなどもあり、気分はどんどん落ちてしまったw

風が吹くたびに空間線量が上がり、時折毎時2μSv近くまでいくこともあった。フレコン置き場で撮影したのち、本当は小野田地区の最西端、県道35号線の帰還困難区域ゲートまで行こうと思っていたが、気持ちも萎えてきてしまったので、また今度にしようと考える。奥さんは呆れているが、僕は今年も何度かここに通うだろうから。
カメラの故障で大きく時間をロスしたこともあり、通ったことのない道を歩いて一旦駅方面まで帰ることにする。

除去土壌等保管場所。「0.17μSv/h」と書いてある。敷地内は作業員が働くため徹底的に除染してあるので、空間線量は低い。線量計を持たずにここを訪れた人たちがこれを見れば、「避難指示解除されたエリアの線量は下がっている」と思うだろう。しかし実際は、この仮置場の周辺は0.5〜1.5μSv/hはある。人が暮らすことのない除染されたフレコン置き場の空間線量を表示することは、詐欺に近いと言ってよい。

(もやい展のギャラリートークでも触れたが、浪江の空は広く高く綺麗だ)

太陽光パネル。今回は県道253号の“歩いて行ける帰還困難区域”には行かなかったが、あそこにも今はもう大量のパネルが並んでいる。農地としてはもう使えないのだから、やむを得ない。

震災前は、夏になれば濃い緑の稲穂で覆われただろう。今は荒野だ。避難指示解除されようとも、あの日にはもう戻れない。目に見えない放射性物質が降り注いだのだから。

(鉄塔)

(野良桜)

この脇の家の住人は帰還している。家庭菜園を始めていた。カリウムを沢山蒔いて、帽子を被りマスクをして手袋をして長袖長ズボンで、風に舞うセシウムの付着した土を吸い込んで内部被曝しないように営農、それが福島県や環境省のお言葉。それに従ったスタイルで作業をすれば、「放射能安全」という連中から熱中症リスクが上がると批判され、コスプレ呼ばわりまでされて誹謗中傷される。

このフレコンを見ながら家庭菜園をやるのはどんな気持ちだろう。切ない。

もう一つの広大なフレコン置き場。東京五輪の選手団を案内したらどうだろうか。「アンダーコントロール!」と言いながら。

避難指示解除され帰還したり新築する家がある一方で、今も廃墟はそこかしこに立ち並ぶ。

ここは解体予定。

カーテンがはためいていた。

「入居者募集中」の文字が悲しい。

昨年5月に見た有明荘と万創企画。中を見たが、何も変わってなかった。桜だけが寂しく咲いていた。

連絡がつかないところもあるだろうが、意図的に解体しないところもあるだろう。日本政府も福島県も、東京五輪までになかったことにしようと躍起だが、そんなことは不可能だ。

<続く>

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