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2019年4月富岡浪江取材 滑稽な人々

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<続き>

更地。向こうに見える家も、ぱっと見だが人の気配はない。

真新しい家だが、帰還困難区域のため当然人は住まない。「入居者募集」の文字が切ない。

いいニュースとして全国で放送された夜ノ森の桜祭り。そのたった一本脇のの道に、こんな風景があることを一体全国のどれだけの人が知っているのだろう。

上の写真の反対側。向こうの道には桜が咲き、警備員や花見客が見える。こんな近くで。

この光景を見ても、一本裏の道の桜だけを見て「復興は進んでます」と言える人が、原発を推進していくのだろう。

車はひっきりなしに通る。駐車場が満車のため、路駐しようとする人もいる。そこに警備員がやってきて、別の駐車場を案内する。

帰還困難区域のバリケードを前にして、笑顔で車から降りてくる人たち。この感覚…浜通りを訪れるといつも感じるこの感覚。「非現実的」。非日常を通り越した「非現実的」な世界。

「高線量地帯」という文字を見てるのか見てないのか、車から普通に小学校入学前とみられる子供が降りてくる。空間線量は毎時0.8〜1.3μSvはあった。

そうこうしているうちに、夜ノ森の桜並木を隔てる帰還困難区域ゲート前へ到着した。いつものように、ゲート前に立つ警備員に声をかけに行った。

4/6は、このゲートの先を観光バスが通り抜けた。NHKは周辺の廃墟やフレコンバッグは一切映さず、非常に好意的に紹介していた。

バリケード前は意外と人が少ない。やはり現実はあまり見たくないということだろうか。バリケード前まで来てる人は、その向こうの帰還困難区域に家がある人や、周辺に昔住んでいた人たちが多いように思った。観光で来てる人がバリケードの先を見に来ることは少ない。

ゲート脇の廃墟。これから解体されるのだろうか。

バリケードの向こうを覗き込む。

ゲート脇に立つ警備員は、この場所に立つようになって3回目の春を迎えるという。目の前の光景については「この季節の風物詩ですね」といった

「普段は全く人がいないのに、ギャップに混乱しませんか?」
「最初は戸惑ったけど、今はもう慣れました」
その人は排気弁付きのマスクをして、目はゴーグルで覆っていた。
「花粉症ですか?」
「目も放射性物質から保護しなきゃいけませんから」

その場に立っている時間が長いとはいえ、働く人たちはしっかりと放射能に対する防護策を施してその場にいる。除染された桜トンネルの道でさえ毎時0.3〜0.7μSvはあり、土壌汚染も考えれば、そこは「放射線管理区域」なのだから当たり前。しかし僕ら一般人は、そんな場所に普段着で、赤ん坊やまだヨチヨチ歩きの幼児でさえも足を踏み入れる。というか、ここは避難指示解除され、人が普通に生活する場所だ。何なんだろう、この空間は…。

黄色く点滅する信号機が切ない。

バリケードの向こうは、桜が咲き誇ってはいても「帰還困難区域」。荒れ果てている様子が容易に想像できる(これでも、桜祭りでバスが通るために綺麗に除染、掃除されたはずだ)。

「お疲れ様です」と警備員に声をかけ、周辺を撮影しながら桜トンネルの方へ。祭りのように多くの人が歩いている。中には幼児も赤子もいる。脇を見ればバリケードと廃墟に廃車にフレコンバッグ。頭がクラクラする。人が多いのを見越して一度はカバンの中にしまったガイガーフクシマを、僕はあえて出した。

よく見ると、僕みたいにカメラをぶら下げて、苦々しい顔で撮影している人が数人いる。単純に興味があってきたのか、ジャーナリストなのかカメラマンなのか区別はつかない。しかし、自分と同じような気持ちの人がいるんだと思って、少しホッとした。

ゲートの脇に廃墟。笑顔で桜の写真を撮る人々は、数メートル先のこの光景には触れない。

綺麗だが廃墟、廃車。8年間このままだ。「もう8年も経つのに」だと? 8年経ってもこのまま放置されてる状態がまともとでも言う気なのか?

地震で壊れた様子はここから見る限り見えない。ここも、原発事故がなければこんな廃墟になることはなかったはずだ。

桜並木の脇のバリケード。

バリケードの向こうには重機とフレコンバッグ。

霞んで遠のいていくよ

僕には桜が可哀想に見えた。悲しくて悲鳴をあげてるようだった。

何なんだ、この喧騒は。

なんて人は滑稽なんだろう。

廃墟の隣で祭りに興じる人々。

誰かが、「こんなすぐ隣にアレがあると思わなかった」と話した。福島県民なのか、違う県からきたのか。すぐ隣のバリケードの先を想像して、みんなもっと考えて欲しい。

打ちのめされつつ、桜並木を南下しイベント会場である富岡第二中学に向かった。

<続く>


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