キミが主人公の日

「誕生日」というものに対して、私は疎い人間のような気がする。

というか、多分記念日に疎いのだ。
うちの家族は父が忙しいのもあって、誕生日や記念日に集まるということがほとんどない。そんなこともあり、我が家では「記念日」というのは一大イベントではなく、余裕があれば祝う、ぐらいだった。そんなこともあり、母や父や弟に、しっかりとした誕生日プレゼントを渡した記憶があまりない。(「いい子にする券」ぐらいはある)

しかし、家族を別にすれば「好きな人の誕生日」というのは血湧き肉踊るイベントである。思い出してみても、私の今まで好きになった人は一人を除き、11月から1月の間に生まれている。だからなんとなく、秋から冬にかけては、誕生日の季節だ。

とはいっても学生の時分。だいたい片思いの私にとって、学校があればその日にいかにさりげなく「誕生日おめでとう」を言えるか、ぐらいだった。もし、学校が休みであればメール。LINEではなく、メール。ガラケー(と、言われはじめたのも最近だけど)のメール。
いかに言えるか、メールが出来るか。なので、あまり「誕生日」を祝う、というイベントをしたことがなかった。

こんな「祝う」というよりも「言う」に重きをおかれた私の誕生日祝いライフのなかで、唯一私が「祝った」誕生日がある。

その人のことは当時ほとんど意識はしていなかったのだけれど、誰にでも気さくに仲良く話しかけてくれる人で。特殊な学校で、学年の人数が極端に少なかったのもあって何かの折に、その人が(家庭が割と複雑だったのか、親が忙しかったのか、もう覚えていないけれど)「誕生日をあまり祝ってもらったことがない」と漏らしていたのを覚えていた。

そんなこともあって、私は彼の誕生日の放課後に、仲良しの友達のうちで協力者を募り、割り勘で近くはないサンクスまで走ってコンビニでケーキを買った。ショートケーキかチョコケーキか悩んでチョコケーキを買った、ような気がする。(青春の日々は風化する。それが怖い。このあとは「ような気がする」をつけずに続けていくが、全て青春のフィルターがかかっている、と処理していただいて構わない。)

彼の仲良しの男の子たちにも協力してもらい、教室の先生―当時、自分の教室を半分「住処」にしているような人で、電子レンジやおおよそ暮らしに関係あるものなどをなんでも持っていた―に誕生日用のろうそくを借りて、ライターを借りて、コンビニで買ってきたケーキにさして、クラスの男の子たちと友達でクラッカーを持って。

校庭でバスケットボールをしている彼を、私が呼びに行ったのだ。

「ちょっととりあえず来て!」という風に呼び出した。

普段そんなに仲良く話す間柄でもないし、私たちが彼と一緒にバスケをしていた友達を事前に強引に引き連れて行って、彼は一人であったから、多分薄々感づいていた、はたまた「何か面倒事に巻き込まれるのかな」と懸念していたに違いない。(中学時代の私は後悔しないためになんでもやりたかったらやる人だったので、周りを面倒事に巻き込むことが多かった。)

そんなことがあって、向こうも苦笑いで「どうしたの?」という調子だった。

教室に向かって階段を登っていく間、恐らくしょうもない話をしたのかもしれない。間持たせの会話だったのだろう。もう覚えてはいないけれど、とにかく心臓がドキドキしたのを覚えている。

教室に彼を押しこんで、クラッカーを鳴らして。ハッピーバースデーを歌って、ケーキの上のろうそくを吹き消させて。「ケーキ、チョコがいいか分からなかったけれど。」と渡したら、ううん、チョコ好きだよ、すごく嬉しい、ありがとう―そう笑ってくれたのだ。

これが7年前の11月6日。

さて。

前にもいったとおり、今江くんは割と本気で私の王子様だと信じて疑っていない。彼の名前も、誕生日も、見た目も、好きなものも、全部私が好きなもので、好きになってきたものだからだ。

はじめに彼を見たとき、最初はなんとも思わなかった。ただ、彼のことを知っていくにつれ、彼の好きなものが、いやもうすぐ彼の全てが、私の好きになった、私の好きなものすぎて、「今までの恋愛は全て彼に出会うための布石だったのでは?」という、(大変に頭の悪い)、ぐるぐるとした、渦のような深みにはまってしまったのである。

笑顔が素敵なところ。
忙しそうなときにも、いつもこちらが思わず笑ってしまうような笑顔で笑っているところ。それだけだけでなく、周りの人(特に彼が居心地がいい、という7人)を笑顔にできるところ。そこにいるだけで、幸せを振りまける人。

かっこつけるときはかっこつけるところ。
眉毛をくっと目に近づけ、口を真一文字に結んでいるととても凛々しいところ。踊りに勢いがあるところ。実は一番ギャップにはっとさせられるかもしれない人。

アニメが大好きなところ。
貪欲に宮田くんや佐久間くんに雑誌で絡もうとしているところ。ファンの人におすすめのアニメやマンガやゲームやアプリを聞いてしまうところ。シャンシャンする音楽アプリを楽屋内でイヤホンなしでやって、中断さされると不機嫌になってしまうところ。にっこにっこにーポーズをFunky8の全員にやらせてしまうほど愛されている人。

いつもどおり、「言う」こともできないので「書く」だけだけれど。

今江大地くん、21歳のお誕生日おめでとうございます。

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