書評「ボールマンがすべてではない バスケの複雑な戦術が明らかになる本」(大野篤史、小谷究)

2018年4月20日現在、Bリーグ東地区の首位に立つ千葉ジェッツ。千葉ジェッツは「アグレッシブなディフェンスから走る」というスタイルをかかげ、スタイルを実行できるヘッドコーチ、選手を集め、魅力的なチームを作り上げました。そんな千葉ジェッツのスタイルを実現させているのが、ヘッドコーチの大野篤史さんです。

その大野篤史と流通経済大学バスケットボール部ヘッドコーチの小谷さんが、バスケットボールの戦術について書いた書籍が、本書「ボールマンがすべてではない バスケの複雑な戦術が明らかになる本」です。

本書は、ドリブル、パスといった、選手個人のスキルに関することではなく、ボールがないときに選手がどう動くか、どんな攻撃があるのか、攻撃に対してどう対応するのか、チームの約束事として定めることは何かといった、「ボールがないところ」に焦点をあててかかれた書籍です。バスケットボールの戦術にここまで焦点をあてた本は、珍しいと思います。

千葉ジェッツではどうしているか惜しげも書かれている

本書が面白いのは、大野さんが千葉ジェッツのヘッドコーチを務めていることもあり、「千葉ジェッツではこうやっている」と惜しげもなく書かれていることです。

例えば、ファーストブレイクと呼ばれる素早く相手陣内に攻め入って攻撃する時、千葉ジェッツでは選手がコートを5分割して定めた「レーン」のうち、どのレーンを、誰が駆け上がるのかということが、細かく決まっています。どのプレーヤーが、どのレーンを走ることで、どんな効果があるのか、きちんと狙いがあるのです。

サッカーの最新の戦術はバスケットボールを取り入れている

最近サッカーでも「5レーン理論」と呼ばれ、コートを5分割して選手が動く場所を細かく定めたり、「スペーシング」という言葉を使って、選手をバランスよく配置させたり、敢えて片一方のサイドに選手を寄せて、1対1でドリブルを仕掛けやすい状況を作り出したりすることがあるのですが、調べると、元ネタはバスケットボールのような「手を使うスポーツ」だと分かります。

サッカーの関係者はヨーロッパから情報を仕入れているようですが、足でボールを扱うより手でボールを扱うほうが精度が高いということを考えると、ヨーロッパの情報を仕入れなくても、「手を使うスポーツ」からヒントを得ればよいのだということが分かります。

バスケットボールは今後どう進化するのか

では、バスケットボールは今後どう進化するのでしょうか。

シュートチャンスを作る動きやパターンは大分洗練されていて、これ以上革新的な戦術は生まれないのではないかと思う人もいると思います。ただ、ゴールデンステイト・ウォリアーズのように、どの選手も複数のポジションを高いレベルでこなせる選手が揃うと、戦術のバリエーションが増えるということを証明したチームも出てきましたし、年々シュートレンジは広がっていますので、3Pシュートの重要度は今後ますます高くなってくると思います。

シュートチャンスを作り出す上での基本的な動きとして必要なことは、本書に書かれています。NBAでは、本書に書かれているような動きをきちんと実行した上で、選手が自分の技術を用いて、適度にアレンジして、スーパープレーを演出しています。ボールがないところの動きをきちんと理解しているから、スーパープレーが生まれるということが、本書を読み終えると良くわかります。

バスケットボールが好きな方だけでなく、サッカー、フットサルの関係者にも読んで欲しい1冊です。


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西原雄一

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