誰もいない場所を探し続けて
僕はあまり過去を振り返らない。
自分がやってきたことも、大抵のことは忘れている。過去の仕事のことも忘れているので、周りの人に苦笑いされることも、しばしばある。
今朝、妻とコーヒーを飲みながら、こんな話をした。
「nishi19 breaking news」というブログを立ち上げたのは、2012年10月。ブログ開設当時から書いているコンテンツに「書評」がある。僕の書評から売れた本も多く、コンスタントに毎月50冊以上売れて、累計で100冊以上売れた本もある。
僕は「書評を書くと本が売れる」と、あまり宣伝してこなかった。
大きな声で宣伝すれば、もしかしたら、僕に本を献本してくださる出版社もあったかもしれない。でも、僕は積極的に宣伝したことはなかった。たまに思い出したかのようにツイートすることはあっても、あまり大きな声で告知することはなかった。
ところが、最近になって「献本したい」と言われる機会が増えた。書評を読んでくださったからなのか、試合のレビューを読んでなのか、友人の紹介なのかはわからないけど、本を頂ける機会が増えた。
最近noteというプラットフォームのおかげで、作ったコンテンツに対する収益を定期的に得られるのはありがたないなぁと思う一方で、「複業でいくら稼いでるんですか」と聞かれることも増えたし、会社では「西原さんは複業で稼いでるんだから羨ましい」「いくら稼いでるんですか」「稼いでるんだからおごってくださいよ」と言われることが増えた。
僕はおごることは丁重に断った上で、ハッキリとこう答えるようにしている。
献本してくださる方だったり、連載を依頼していただいたり、コンテンツを定期的に買ってくださる方がいたり、日本スポーツアナリスト協会の活動をサポートする機会を頂いたり、ブログを始めてからいろいろな出来事があった。
でも、献本や連載など、人から頼み事をされるまで、6年かかった。たかが6年、されど6年。人によっては1年もかからずに依頼がくる人がいると思うと、なんと時間のかかったことか。自分には才能がないなぁ。そんな話を妻にした。
そうしたら、妻はこう言った。
妻に言われるまで、僕はそんなこと考えたことすらなかった。
なぜなら、自分が過去に何をしたのか、全く興味がないし、自分が興味がないことに、人が興味をいだくとは思えない。そう思っていた。
僕はよく「謎の人」と言われるのだが、「謎の人」と言われるのは、自分のことをきちんと説明していないからだと思う。僕がブログを書き始めてから6年。僕が書いてきたのは「他人」の話ばかりだ。自分のことはほとんど書いたことがない。
妻に言われて気がついたのだが、これが僕でなければ、何をしたら僕のようになるのか、知りたい人はいる気がする。そう思った。
6年間ブログを書き続けた結果、サッカーのことを書いているにもかかわらず、メディアに連載したり寄稿しているのは、なぜかバスケットボールのこと。サッカーに関する文章を特定のメディアに書いているわけでもないし、普段の仕事が有名なわけでもないのに、noteで月間の売上が10万円を超えている。自分で書いていて、覆面アーティストのことを書いているような気分になってきた。確かに謎だ。
6年前にブログを始めたころに「こうなっていて欲しい」と考えていたことについて、達成できていることもあるけど、達成できていないこともある。達成できていないことの方が多いかもしれない。6年前には「6年後には海外のサッカーチームで監督やってる」って考えていたような気がする。
これまで過去を振り返ってこなかったのですが、このタイミングで、過去に公開した(恥ずかしい)コンテンツとともに振り返りながら、僕がなぜこんなことを始めたのか、続けている動機はなにか、そして、僕が何者なのかを明らかにできればと思っているし、もしかしたら、この6年で初めて「あまりやりたくない」ことを始めるのかもしれない。
この連載は、定期購読マガジン「勝ち負けだけじゃないスポーツの楽しみ方」でも連載していきますが、せっかくなのでマガジンを作りました。
マガジンのタイトルは「誰もいない場所を探し続けて」。
過去を振り返ったことがない人が、過去を振り返る。忘れていることばかりなので、どこまでちゃんと振り返れるのか不安ですが、読んで頂けたら嬉しいです。
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