見出し画像

2017年J1第7節 コンサドーレ札幌対川崎フロンターレ レビュー「我慢の時期だが楽しみでもある」

2017年Jリーグ第7節、川崎フロンターレ対コンサドーレ札幌は、1-1の引き分けでした。


この試合のプレビューで、僕は今の川崎フロンターレは「小林さえ抑えればなんとかなる」と書きました。この試合が始まるまで、リーグ戦8得点のうち、小林が2得点3アシストと5得点に小林が絡んでいます。ここまで、小林に依存している理由として、僕は以下の3点を挙げました。

1.最大10人を超えた負傷者、離脱者の続出。特にエウシーニョの不在。
2.移籍した大久保の代わりがいない
3.現在スタメンで出ている選手の動きが分からない

この試合は、上記3点を解決するためにどのようなアプローチをチームが行ったか、今後のチーム作りにおけるヒントが見つかったのか、そこがポイントだと思っていました。結論から先に言うと、試合に向けて行った準備だけでは、問題を解決することは出来ませんでした。ただ、この試合を終えたから分かった事もあります。それは、別の解決策をチームは考えなければならない、という事です。

解決策は見つからず

まず、「現在スタメンで出ている選手の動きが分からない」という点についてです。「現在スタメンで出ている選手」とは、長谷川とハイネルの事を指します。2人の強みは、ドリブルで運ぶスピードが早いことです。しかし、ドリブルが得意なため、どんな時もまずは「ドリブル出来るか否か」を選択してから次のプレーを選択する、という思考でプレーを選択していると感じる事があります。したがって、ドリブルでボールを運べる時はよいのですが、ドリブルでボールを運べない時、あるいは、ドリブルでボールを運ぶ必要がないとき、次のプレーを選択するのが遅れる事があります。また、ドリブルが得意な反面、他の選手が優れている「受ける」「止める」「外す」といった動きの質が低いので、この2人にボールが渡ると、他の選手の動きが止まってしまいます。

次に、「移籍した大久保の代わりがいない」という点についてです。この問題が顕著になるシーンは2つあります。1つ目は、ペナルティエリア前のエリアで、ボールを受けてくれる選手がいない事です。登里、小林、ハイネル、長谷川ともに、中央のエリアでボールを受けるのは得意ではありませんので、どうしてもサイドでボールを受けようとしてしまいます。この試合、コンサドーレ札幌はボランチを宮澤が1人で務めていたため、宮澤の左右にスペースが出来る場面がありました。このスペースでボールを受ける事が出来れば、中央から攻撃することが出来たのですが、誰もボールを受けるアクションを起こしません。中村としては、このスペースを使いつつ、相手を押し込みたかったと思うのですが、誰も受ける選手がいないため、ボランチではありましたが、リスクを冒して、自分自身がボールを受けに行くことでチャンスを作ってみせました。試合途中で判断した中村はさすがですが、本当は他の選手がボールを受けなければなりません。

最後に、「最大10人を超えた負傷者、離脱者の続出。特にエウシーニョの不在。」についてです。コンサドーレ札幌の守備を観察していると、守備の時はDFは5人ならんで守っているのですが、左右のウイングバックと、3DFの左右の選手との間が空く事がありました。特に片方のサイドに選手を寄せた後、ウイングバックの選手が3DFとの間を少し空けてしまうので、空けたスペースからペナルティエリアに侵入し、ゴールチャンスを作る事が出来たと思います。実際、中村は試合中に弱点に気づき、明らかにそのスペースを狙っていました。オフサイドになりましたが、エドゥアルド・ネットに出したスルーパスは、狙い通りだったと思います。しかし、そのスペースが空いていることに、他の選手が気づきません。なんどか、中村が身振り手振りでそのスペースを狙って欲しいと指示しているのですが、アクションを起こせません。例えば、エウシーニョがいれば、執拗に狙ってくれたと思うのですが、エウシーニョもいません。

まとめると、この試合は試合前に危惧していた問題がそのまま浮き彫りになってしまった試合だといえます。1-0で勝ち切れればよかったのですが、失点を恐れるがゆえに、ボールを奪いにいく位置が遠くなってしまい、コンサドーレ札幌の攻撃を受けてしまい、同点ゴールを決められてしまいました。

別の解決策を探してもよいのではないか

僕はこの試合を観て、チームとして問題を解決するために、別の解決策を見出さなければならないと感じました。まず、ゴールチャンスを作り出す事を小林に頼っていますが、小林は大久保ほど万能な選手ではありません。相手の背後でボールを受けるのは上手く、ペナルティエリア角からの両足のシュート、そしてヘディングは巧みですが、ペナルティエリア前でボールを受けるのは得意ではありません。どちらかというと、サイドから中央に走り込むプレーを得意としている選手です。そして、スピードが抜群に速い選手ではないので、相手を1人で振り切ってゴールを決められる選手でもありません。

小林にゴールチャンスを活かしてもらうなら、小林が苦手なプレーを他の選手に代って行ってもらう必要があります。具体的には、「ボールを運ぶ」動きと、「ペナルティエリア前でボールを受ける」動きです。長谷川とハイネルは、ボールを運ぶ事は出来ますが、ペナルティエリア前でボールを受ける事は出来ません。エウシーニョと同じ動きは、田坂なら頻度は少なくなるかもしれませんが出来ます。したがって、ペナルティエリア前でボールを受けて崩す選手は、他の選手を起用しても良いと思います。

解決策になりうる阿部と三好

現時点で、候補は2人います。1人目は怪我から復帰した阿部です。阿部は途中出場してから、ペナルティエリアの前でボールを受ける動きを繰り返していました。これまでの試合の阿部の動きを観ていると、少なくともどこでボールを受ければよいかは分かっています。阿部の課題は、ボールを「止める」動きです。ボールが正確に止まらず、せっかくボールを受けられても、次のプレーに移行するするまでに時間がかかり、ボールを奪われたり、他の選手の動きを止めてしまう事があります。ただ、この問題は時間が解決してくれそうな気がします。

2人目は三好です。三好は「ボールを運ぶ」動きと、「ペナルティエリアの前でボールを受ける」動きが出来る選手です。じゃあ、なぜスタメンで起用されないのかというと、2017年シーズンの三好は、攻撃の切り札として、同点もしくは1点差で負けている試合などで、どうしても1点欲しい試合で得点を奪って欲しい時に起用するという役割を担っています。鬼木監督は三好の役割をとても重要だと考えており、他の選手に変える気はあまりないようです。そして、三好自身のプレーも問題をかかえています。ハイネル、長谷川同様に、たまに「何をするのか、敵も味方も分からない」プレーをすることがあります。ハイネル、長谷川に比べると回数は少ないのですが、三好の方が致命的なミスをすることがあります。また、守備の貢献度は、ハイネルと長谷川の方が、三好より高いこともあり、鬼木監督はスタメンにハイネルと長谷川を起用していたのだと思います。

ただ、ここまで上手くいかないと、そろそろ別のアプローチをしなければならないと思います。中4日で清水エスパルス戦、そして中3日で水原三星戦が控えており、その後で中4日でセレッソ大阪戦。GW空けには、鹿島アントラーズや浦和レッズといったチームとの対戦が控えています。鹿島アントラーズや浦和レッズの日程から逆算すると、ここが変え時のような気がします。

鬼木監督はしばらく同じ事を続けるのか、それとも変化を加えるのかは分かりません。このタイミングでどんなアプローチをとるのかによって、鬼木監督の考えが理解出来るような気がしています。ベガルタ仙台戦の時にギリギリ保持していた余裕は、少しずつなくなりつつあります。鬼木監督がどんな決断をするのか、チームとして今後の試合をどう戦っていくのか、とても楽しみです。我慢は続きますが、楽しみです。

サポートと激励や感想メッセージありがとうございます! サポートで得た収入は、書籍の購入や他の人へのサポート、次回の旅の費用に使わせて頂きます!