2018年J1第21節 清水エスパルス対川崎フロンターレ レビュー「トライしている大島と、トライしていないように見える車屋」

2018年J1第21節、清水エスパルス対川崎フロンターレは、2-1で川崎フロンターレが勝ちました。

毎回試合のレビューを書く前に、映像を2回見るようにします。1回目は全体をチェックし、2回目は自分がチェックしたいポイントに焦点を当てて見るようにしています。

1回観れば、どんな試合だったかは把握することは出来ますが、選手が何を考えて、どうプレーしようとしていたのかは、もう1回みないと分かりません。1回目はボールの動きを中心に、2回目は選手やチェックしたい場所に焦点を当てて見ることが多いです。

清水エスパルスの守備の問題

この試合は、2回目は大島のプレーに焦点を当てて見ていました。

この試合の大島は、相手を見ながら、微妙にプレーする位置や判断基準を調整しつつ、チームとしてどこを攻撃しようとしているのか、どこでボールを奪いにいくのか、プレーだけでなく、身振り手振り、声を交えて、味方に伝え続けていました。

大島は「川崎フットボールアディクト」の試合後のコメントにも書いてありましたが、まずは清水エスパルスの守備を中央から攻略しようと試みます。

試合開始時の清水エスパルスの守備は4-4-2で守っていたのですが、2点問題がありました。1点目はMFとDFの間が距離が空いており、ボールを受けられるスペースがあること。2点目は左右にボールが動いたときに、守るべき場所に選手が移動するスピードが遅いこと。パスが通ってから移動するので、どうしても相手選手への対応が遅くなってしまうのです。川崎フロンターレのパススピードが他のチームより速いというのも、選手の移動が遅く見える要因でもあるのですが、相手選手がパスを止めてから動いていては、ボールはなかなか奪えません。

ドゥグラスが負傷交代してからは、4-5-1に変更し、河合にDFとMFの間のスペースを埋めさせようとしましたが、河合の両脇が空いているので、家長と阿部の2人がサイドから中央に移動し、ボールを受けていたので、清水エスパルスの対策は、大きな効果を生むことはありませんでした。

大島は清水エスパルスの守備の問題に、試合開始前から気がついていたと思いますし、試合開始直後の中村へのパス(その後、中村から小林にパスが通りGKとの1対1に)が通ったことで、「中央から崩せる」と感じていたと思います。ところが、大島にとって少しだけ予想外だったのは、中央からの攻撃を仕掛けてボールを奪われた後の清水エスパルスの攻撃が、素早く、正確だったことだと思います。

ドゥグラス、北川、金子という3人は、ボールを受ける動きが巧みで、ボールを運ぶプレーにも長けています。3人は動きながらボールを扱えるので、ボールを相手陣内に運ぶときにスピードを落とさずに運べます。

3人の攻撃の質が高かったため、2点目を奪われるリスクを考え、中央からの攻撃の頻度を減らし、サイドから攻撃を仕掛けるプレーを選択します。中村にはDFとMFの間に立ってもらいつつ、大島自身は中央よりサイドへのパスを選択することを増やし、清水エスパルスの守備者が横に動く機会を増やし、確実に中央で受けられる機会を増やそう。そう考えたのだと思います。

登里のスパイクが脱げたときに大島が選択した行動

この試合の大島は、エウシーニョの横でプレーすることが多かったのですが、エウシーニョがボールを持つと、すぐに左サイドの方に首を振って、サイドが空いているか、相手がどこにいるのかを確認していました。中央はある程度どんな状況なのか分かっているので、次のプレーで選択しようと考えているサイドの状況がどうなっているのか、先のことを考えて状況を確認しているように見えました。

大島が次のプレー、その次のプレーといった、「次に何が起こるのか」「最悪何が起こるのか」ということを想定しながらプレーしていることを象徴していたのが、前半に登里のスパイクが脱げてしまった場面です。多くの人がくすっとしてしまうような場面だったかもしれませんが、僕は笑う気にはなれませんでした。それは、大島がとった行動に気がついたからです。

スパイクが脱げてしまい、脱げたスパイクを手で持ってポジションに戻っていた登里ですが、ボールを奪い返した後、スパイクを履こうとします。スパイクを履こうとしている登里の横で、ボールを受けようと動いたのは、大島でした。大島はなぜ登里の横に移動したのか。登里がスパイクを履いているので、攻撃するタイミングではないということをチームに示したいというのも理由の1つだと思いますが、僕なりに大島が登里の横でボールを受けていたのは、万が一ボールを奪われたとき、登里が守るべき位置を自分が守ろうとしたからだと思います。

中央のMFを務める選手は、攻撃時にどのポジションが空くのかを見て判断出来ないといけませんが、守備時にも自分たちのチームがどの場所を空けてしまっているのか判断して、必要であれば自分がその場所に移動して、相手の攻撃を食い止めたりするプレーが求められます。

この試合の前半、攻撃時に家長が空けた右サイドのスペースを中村が逆サイドから戻って守備をした場面がありました。ボールが来なかったので、中村のプレーに焦点が当たることはありませんでしたし、何気ないプレーですが、中村がいかに周囲の状況を把握しているのか、よく分かるプレーでした。

何気ないことですが、大島がとった行動は、「次に何が起こるのか」「最悪の場合、何が起こるのか」、頭の中でいくつかのプレーが想像出来ていて、実行出来ているということを示しています。

アクションの強度だけでは分からない大島の変化

今の大島は、攻撃でも、守備でも、チームがどうプレーすべきか仕切ることにトライしています。今の川崎フロンターレは、ほとんどの選手が「いつ」「どこで」「どう」プレーすべきか分かっている選手たちばかりなので、Jリーグであれば大島がやることは限られていますが、最低限の指針は示さなければなりません。大島は「どこまで伝えればよいか」であったり、「同プレーすればよいか」試行錯誤しているように見えます。その上で、ゴールやアシストといった「目に見える結果」を奪おうと考えていることも伝わってきます。

Jリーグ再開後の大島は、良くも悪くも、無理をしてプレーしていないように見えます。もしかしたら、ワールドカップから帰国した後、目に見えるアクションを、強く、速くすることで、「さすが日本代表」「ワールドカップから帰ってきて変わった」と言われるほうが簡単かもしれません。ぱっと見たら、大きく変化しているように見えないかもしれません。しかし、ワールドカップが終わった後、大島は大きく変わろうとしています。

僕が大島に望むのは、コーナーキックやフリーキックといった、セットプレーのキッカーにもチャレンジして欲しいと思います。川崎フロンターレには、中村憲剛という素晴らしいキッカーがいますが、チームを取り仕切る選手には、セットプレーも取り仕切って欲しいと思います。

もちろん、日本代表で海外のチームと対決するとき、アクションの強度が求められる機会もあると思いますし、相手の守備の強度が上がったときに、意図したプレーをどこまで出来るかは分かりません。ただ、大島が現在トライしようとしていることについて、僕は理解出来ます。大島のトライがどう実を結ぶのか、楽しみにしたいと思います。

「なんとなく」プレーしているように見える車屋

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西原雄一

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西原雄一

プロ・スポーツレビュアー。note「勝ち負けだけじゃないスポーツの楽しみ方」で #川崎フロンターレ #ビジャレアル と #Bリーグ のレビュー連載中。趣味は愉快な人同士をつなぐこと。#coffee ☕好き。

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