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書評「バスケットボールの教科書3 チームマネジメント基礎」(鈴木良和)

本書「バスケットボールの教科書」は、バスケットボールというスポーツを、「技術」「戦術と戦略」「チームマネジメント」「指導者の美学と哲学」という4冊に分けて、バスケットボールというスポーツを改めて定義し直した書籍シリーズで、本書は「チームマネジメント基礎」について定義した書籍です。

チームの成功とは、組織の成功である

本書の冒頭で、「チームの成功とは、組織の成功である」と定義しています。そして、ビジネス書を読み進めていった後、技術、戦術、戦略といった要素は組織の成果を左右する一部分であり、組織の成功を左右する要素は他にもあると考えたそうです。

なお、本書では「成功」の定義について、バスケットボールの名指導者でもあるジョン・ウッデン氏の言葉が紹介されています。

「成功とは、なりうる最高の自分になるためにベストを尽くしたと自覚し満足することによって得られる心の平和なのである」

そして、ビジネス書を読み進めていく内に、多くのビジネス書に重要だと紹介している要素は、組織にとって重要なものなのだと気がついたのだそうです。

成功するチームを形作る「チームマネジメントピラミッド」

そして、著者はビジネス書が紹介しているエッセンスを重要なものから潤に積み上げて、「チームマネジメントピラミッド」という形に作り上げました。

ピラミッドで隣り合っている要素は、お互いに影響し合ったり補完しあったりするもので、上に積み上がっている要素は、下の2つの要素が強く影響するものです。

そして、チームマネジメントピラミッドでは、以下の5つをピラミッドを支える基盤として定義しています。

理念:組織の土台になるもの
環境:理念と仕組みを考える
信頼:組織をつなぎ合わせるもの
責任:人材の基礎になるもの
規律:チームを一つに統一するもの

本書では、このチームマネジメントピラミッドに従って、5つの基盤について詳しく紹介するだけでなく、それぞれにおいてコーチが求められる役割、スキル、考え方といった点について詳しく紹介しています。

知識だけでは信頼は得られない

僕が最も印象に残ったのは、「信頼」という項目について書かれていたこの言葉です。

選手から信頼されるかどうかは、コーチの知識だけではなく人間性が鍵です。コーチには人間としてどうあるべきか、どう振る舞うべきか、という本質的な部分が問われるのです。

なぜこの言葉が印象に残ったかというと、サッカー日本代表のハリルホジッチ監督が契約を解除されてから、ずっと考えていたのは「信頼」についてだったからです。

ハリルホジッチ監督の契約解除については、過去のインタビューを遡って読んでみたり、Webで掲載されているテキストを読んだり、事情を知ってそうな人に意見を求めたりしました。僕が分かったのは、ハリルホジッチ監督が選手からの信頼を失っていたということでした。

その理由をずっと考えていたのですが、本書で紹介されている「チームマネジメントピラミッド」に照らし合わせると、ハリルホジッチ監督の契約解除にあたって、どのような問題が起こったのか理解を深めることが出来ました。

ここまで指導者に求められる要素を分かりやすく説明した書籍はない

ここまで、「技術」「戦術と戦略」「チームマネジメント」と読み進めてきましたが、日本の指導者向けの書籍で、ここまで分かりやすく、体系立てて、指導者に必要な要素を分かりやすく説明した書籍は読んだことがないし、正直ビジネス書でも、ここまでのレベルの書籍はほとんど読んだことがありません。本当に素晴らしい書籍だと思います。

バスケットボールの本だからと敬遠せず、野球、サッカー、ホッケー、ラグビーといった、多くのスポーツの指導者に読んでもらいたい1冊です。

※「チームマネジメントピラミッド」については、こちらも参考になります。(片岡さん、いつもありがとうございます)

バスケットボールの教科書3 チームマネジメント基礎


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