2018 FIFAワールドカップロシア グループH 日本代表対セネガル代表 レビュー

2018 FIFAワールドカップ グループH 日本代表対セネガル代表は、2-2の引き分けでした。

セネガルの強度の高いプレーにいかに対応したのか

試合開始10分過ぎまでは、セネガルが攻撃を仕掛けてきました。セネガルのチームオーガニゼーションは、守備時は日本がハーフラインを越えるまでは4-4-2、ハーフラインを越えてからは、4-5-1で守っていました。

試合開始直後から、日本の吉田と昌子という2人がボールを持つと、9番のニアングと、17番のパパ アリウヌ エンディアイエが素早く距離を詰め、正確なパスを出す余裕を与えません。先制点を奪われるまでは、セネガルのプレーの強度が高く、日本は守備をする時間が長く続きました。

先制点を奪われてから、日本がボールを持てるようになります。きっかけは、長谷部が吉田と昌子の間に立ち、3人のパス交換でボールを運ぶようになってからでした。

日本は試合開始からしばらくして、セネガルが4-4-2で守備をしていること、長谷部には17番のパパ アリウヌ エンディアイエ、柴崎には5番のイドリサ ゲイエ、香川には13番のアルフレッド エンディアイエがマンマーク気味についていることに気がついたと思います。長谷部がDFの位置まで下がってパス交換に参加したことで、17番のパパ アリウヌ エンディアイエは試合開始直後ほど、積極的にボールを奪いにいけなくなります。

そして、セネガルが長谷部、柴崎、香川にマンマーク気味に守っているため、他の選手がフリーになりやすくなります。

1本のパスを通すために行っている緻密な連携

セネガルの守備を上手く利用したのは、乾でした。昌子がボールを持つと、乾が相手の守備の間でボールを受け、相手陣内にボールを運んでいきます。セネガルとしては、守備者の間でボールを受けさせるプレーは避けたかったと思うのですが、乾はサイドのDF、サイドのMF、中央のMFが空けるスペースにタイミング良く動き、上手くボールを受けていました。

乾がボールを受けるプレーは、何気なくやっているように見えますが、決して簡単なプレーではありません。乾以外のプレーヤーが連携して動くことで、乾がボールを受けることが出来ているのです。まず吉田と昌子と長谷部の3人のパス交換で相手の守備を動かします。

3人がパス交換している間に、大迫は相手DFの背後を狙う動きと、相手DFとMFの間でボールをもらう動きを繰り返します。サイドの酒井宏樹と長友がタッチライン際でパスを受ける動きをして、セネガルのサイドのMFを牽制します。乾と原口は相手のサイドのDFが守る位置から、短い距離をダッシュし、空いているスペースでボールを受けようと動きます。この時、柴崎と香川は原口と乾と重ならないように動くのがポイントです。

日本代表はガーナ戦の頃からこの攻撃を試していました。ガーナ戦の頃は選手が立つべきポジションを把握するだけで精一杯でしたが、試合を重ねるにつれて、パスを出すタイミング、ボールを受けるタイミング、動くタイミングがあってきて、ミスなくパスがつながるようになりました。

このプレーで大切なのは、FWの選手がアクションを起こすこと、そして、FWの選手のアクションに応じて、他の選手が連動して動くことです。全員が相手の間を狙ったら、相手に捕まってしまいます。

相手の背後を狙う選手ばかりだと、ボールを受ける選手がおらず、パスの出し手が相手に狙われてしまいます。選手同士が連動して動かなければ、乾、香川、原口、柴崎といった選手につながっているパスはつながりません。このパスが日本の攻撃の生命線なのです。

なお、この攻撃は以前のサンフレッチェ広島、浦和レッズ、現在はコンサドーレ札幌が得意としている攻撃です。そう、ミハイロ・ペトロビッチが監督を務めたチームで披露される攻撃です。

今の日本代表は、サンフレッチェ広島でペトロビッチ監督と同じプレーモデルのチームを率いた森保さんがコーチを務めています。森保さんの持っているノウハウが、日本の攻撃には活かされていると思わずにはいられません。

用意していた得点を奪うための選択肢

後半に入ってから、セネガルは攻撃時も4-4-2にチームオーガニゼーションを変更し、再び積極的にボールを奪おうと試みます。そして、セネガルのDFがボールを持った時に上手くボールが運べないので、MFのゲイエがDFの位置まで下がってパス交換に参加し、日本の守備の起点を外そうと試みます。ところが、この試みはさほど効果がなく、しばらくしたら止めてしまいました。

セネガルはチームオーガニゼーションを変更しても、一定のレベルで戦えるチームなのですが、動きに継続性がなく、得点を奪ったり、ある程度攻撃出来たら動きを止めてしまうことがあるチームです。

また、プレビューにも書きましたが、右DFのワゲは守備時にボールに気を取られ、相手選手に背中を向けてしまう癖があります。日本はセネガルの右サイドの問題を理解した上で、攻撃を仕掛けているようにみえました。

リードを奪われた日本代表は、得点を奪うための選手交代を行います。本田は元々準備していた交代に見えましたが、岡崎を原口に替えて入れて、4-4-2にチームオーガニゼーションを変更します。

岡崎を入れるのは、相手のDFの前に身体ごと飛び込めるというだけでなく、守備時にしつこくボールを奪うアクションを仕掛けたり、攻撃時に何度も相手の背後を狙ったりといった、相手にとって嫌なプレーが出来る選手だからです。

そして、途中から出場してもすぐに順応し、強度の高いアクションを起こせるのも強みです。岡崎を入れることで、日本は攻撃回数が増えるのです。攻撃回数を増やすプレーは、日本では岡崎しか出来ません。だから、西野監督は岡崎のメンバー入りにこだわったのだと思います。

同点に追いついてから、日本も3点目を狙いにいきましたが、途中出場した宇佐美、岡崎、本田は、日本の生命線である連携した動きが苦手な選手なので、3人が入ったことで、ボールが相手ゴール方向に運べなくなってしまいました。3人がスターティングメンバーで出場しない理由もよくわかった試合でもありました。

日本代表のプレーは数多くの約束事の積み重ねで成り立っている

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西原雄一

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西原雄一

プロ・スポーツレビュアー。note「勝ち負けだけじゃないスポーツの楽しみ方」で #川崎フロンターレ #ビジャレアル と #Bリーグ のレビュー連載中。趣味は愉快な人同士をつなぐこと。#coffee ☕好き。

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