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2018年J1第5節 川崎フロンターレ対サンフレッチェ広島 プレビュー「どこまで無理をさせて、どこまで無理をさせないか。」

2018年J1第5節、川崎フロンターレの対戦相手はサンフレッチェ広島です。まずは、Football-Labのデータを元に、サンフレッチェ広島のデータから分かる特徴を紹介したいと思います。

対象は2018年のデータです。4試合のデータなので、サンプル数が少ないので、参考までに読んで頂けると幸いです。

プレビューで紹介する「2つの指標」

初めてこのプレビューを読んだ方向けに説明させて頂くと、僕のプレビューでは2つの指標を元にチームの特徴を分析しています。(今シーズン3回目なので、念のため。ご存じの方は読み飛ばして頂けたら幸いです。)

1つ目は、「チャンス構築率」。これは、シュート数を攻撃回数で割った指標で、1回の攻撃でどのくらいの確率でシュートチャンスを作れるかを把握するためのデータです。このデータから、チームのビルドアップ(攻撃の開始からシュートチャンスを作るまで)の特徴を把握することが出来ます。

2つ目は、「シュート決定率」。これは、得点数をシュート数で割った指標で、何本シュートを打てば得点を奪えるのか、把握することが出来ます。

2つの指標ともに、10%を目安にしています。守備では「被シュート構築率」「被シュート決定率」という指標に着目することで、シュートチャンスを作らせない守備がどのくらい出来ているのか、得点を奪われない守備が出来ているのかを把握することが出来ます。

ドリブルが少ないのに、直接フリーキックの回数が多いサンフレッチェ広島

Football-Labのデータによると、サンフレッチェ広島の「チャンス構築率」は8.9%でリーグ14位。攻撃回数は、125.8回でリーグ13位、シュート数は11.3本でリーグ14位です。

攻撃回数も少なく、チャンス構築率も少ないというデータから分かることは、自陣からボールを相手陣内に運ぶプレーが上手いチームではないという事です。ペナルティエリアとハーフラインの中間辺りを示す、「30mラインの進入回数」は1試合平均37.5回でリーグ13位、ペナルティエリア進入回数(Webサイトリニューアル後、このデータが見れるようになりました)が12.5回でリーグ13位、ボール支配率は41.6%でリーグ16位。こうしたデータからも、ボールを保持する時間が長く、自陣からボールを相手陣内に運ぶプレーが上手いチームではないということが読み取れます。

ただ、攻撃のデータを詳しく分析すると、1試合平均のドリブル回数が12.3回でリーグ10位にもかかわらず、1試合平均の直接フリーキックの数が17.3回でリーグ3位。これは、2つの要因が考えられます。

1つは、FWがボールを保持した時にファウルをもらう回数が多い。FWにはパトリックという、身体が強い選手がいるので、ボールを奪おうとする守備者から上手くファウルを奪っている可能性があります。

もう1つは、守備でボールを奪われた瞬間に、相手チームの選手が足をひっかけている。サンフレッチェ広島の、相手のパスをカットしてボールを奪う「インターセプト」の回数は4.3回でリーグ1位。相手の攻撃を受け止め、パスコースに素早く身体を入れてボールを奪う守備をすると、パスを奪った直後に相手チームの選手はチャンスを作られることを避けるため、ファウルをすることがあるのです。

サンフレッチェ広島は、総得点4点のうち、2点がセットプレー。セットプレーには注意して臨む必要があります。パトリックに対して、ファウルをせずにゴール前に運ばせない。直接フリーキックによるセットプレーを増やさないことが求められます。

シュートは打たれているのに決めさせない守備

守備のデータを分析すると、攻撃を受ける回数を示す「被攻撃回数」は、1試合平均126.5回でリーグ6位と多くありません。

このデータからは、サンフレッチェ広島の攻撃回数も少ないけれど、相手チームの攻撃回数も少ないということが読み取れます。ボールを保持する時間が両チーム長いと攻撃回数は減りますが、サンフレッチェ広島のようにボールを保持しないチームとの対戦で攻撃回数が減るということは、サンフレッチェ広島の守備がよいということが読み取れます。

ただ、守備のデータから分析すると、興味深い点が浮かび上がります。

サンフレッチェ広島がシュートを打たれている本数は、1試合平均14.3本でリーグ14位。攻撃回数からシュートを打たれる割合は11.3%でリーグ15位と、決してシュートを打たれていないわけではありません。ところが、シュートが決められた割合を示す「シュート成功率」は、1.8%でリーグ1位。つまり、「シュートは打たれるけれど、決めさせない」チームなのです。

このデータから浮かび上がるのは、サンフレッチェ広島が「成功率が低いシュートを相手に打たせている」ということです。

たぶん、DFとFWの距離を短く保ち、相手にボールを受ける場所を与えず、シュートを打たれても、ゴールから遠いか、守備者にブロックされるようなシュートを打たせる。たぶん、積極的にボールを奪いにくるというよりは、相手が攻撃するのを待ち構え、タイミングよく奪う守備を心がけているのだと思います。間接フリーキックの本数(≒オフサイドを奪う回数)が、1試合平均3.0本でリーグ4位というデータからは、サンフレッチェ広島がいかにオフサイドを獲得する回数が多いか分かりますし、DFとFWの距離を短く保つ守備を心がけていることがわかります。

サンフレッチェ広島の攻撃と守備のデータを分析すると、川崎フロンターレがボールを保持する時間は長くなると思います。ただ、サンフレッチェ広島は中央からの攻撃は防ごうと、DFとFWの距離を短く保ち、攻撃する場所を与えないように守るはずです。

川崎フロンターレとしては、相手を左右に揺さぶりながら、中央からいかにボールを運べるか、相手の守り方、選手の特徴を踏まえ、対策を考えているのではないかと思います。

どこまで無理をさせて、どこまで無理をさせないか。

ここから、5月のワールドカップ中断前まで、最大でも中3日の連戦が続きます。間にACLが最低2試合あり、ずっと同じメンバーで戦うのは不可能です。メンバーを入れ替えながら、コンディションが良い選手を起用していくことが求められます。

サポーターに求められるのは、「ある程度の負けや引き分けを許容する」「完膚なきまでに叩きのめした完勝を望まない」ことだと思います。選手を入れ替えれば、上手くいかないところも出てきますし、中3日だと、相手チーム対策だけで練習が終わってしまい、自分のチームの問題を改善する時間がとれません。したがって、相手の良さもある程度出させつつ、上手くしのぎながら勝つ。もしくは、あと一歩上手くいかず、負ける試合もあると思います。

僕は中断前に、リーグ戦なら1位のチームと勝ち点6差以内だったら御の字だと思います。ACLは厳しくなってしまいましたが、まだ可能性は残っています。たぶん、この中断期間中に、監督・スタッフ間では、今後起こりうる事のすり合わせを行い、どのようにチームを運営していくか、プランを話し合っているはずですし、選手にも共有されているはずです。

この連戦の楽しみは、どうチームをマネジメントするか。どこまで無理をさせて、どこまで無理をさせないか。そういう意味では、大島の怪我は痛いですが、どこかで迎える可能性があったトピックスだと思えば、最高のタイミングでの怪我だったかもしれません。

Jリーグが再開します。どんな試合になるのか、楽しみです。

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