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2018年J1第25節 ガンバ大阪対川崎フロンターレ プレビュー「ボールがなくても『アクションを止めるな』」

2018年J1第25節、川崎フロンターレの対戦相手はガンバ大阪です。この試合のポイントを、football-labのデータを元にご紹介します。

ボールから遠い位置の選手が動かないガンバ大阪

この試合を見るときに注目して欲しいのは、ガンバ大阪の選手の「ボールを持っていないとき」のアクションです。

この試合のプレビューを書くにあたって、第24節のサガン鳥栖戦、第23節のベガルタ仙台戦を見てみたのですが、ガンバ大阪の選手の「ボールを持っていないとき」のアクションがほとんどないのが気になりました。

ガンバ大阪の試合を見ていると、攻撃時だと、ボールを持っている選手やボールを受けられる位置にいる選手は、アクションを起こしています。守備時だと、相手がボールを持っている選手に近い場所にいる選手は、ボールを奪うためのアクションを起こしています。まあ、当たり前です。

僕が気になったのは、ボールに近い位置にいる選手以外は、ほとんどアクションを起こさずに止まっていることです。

パスを出す選手、ボールを受ける選手だけでなく、その次のプレーを予測して、事前にアクションを起こすことがサッカーでは求められるのですが、ガンバ大阪の選手はボールを持っている選手と近くにいる選手しかアクションを起こしていないのです。

したがって、攻撃時は「パスを出す」→「止まる」→「パスを出す」→「止まる」というアクションになり、守備時は「ボールを奪いに行く」→「止まる」→「ボールを奪いに行く」→「止まる」というアクションになります。

攻撃時も、守備時も、「止まる」というアクションが入ってしまうため、攻撃時にはボールが相手陣内に運べても相手の守備を攻略できずシュートチャンスを作れない、守備時はなかなかボールが奪えず自陣に下がってしまっているのではないかと思われます。

データが裏づけるガンバ大阪の問題

ガンバ大阪のデータを調べると、1試合平均の攻撃回数は120.2回でリーグ11位、チャンス構築率は10.3%はリーグ12位と10%を超えているのですが、シュート成功率が7.8%でリーグ17位。ペナルティエリアの侵入回数が、1試合平均で12.1回でリーグ15位というデータからは、ペナルティエリアの外で打つシュートが多いのではないかと推測します。ペナルティエリアの外でシュートを打つと、どうしてもシュート成功率は下がります。

守備時のデータを見ると、攻撃を受けたときにシュートを打たれる確率を示す「被シュート成功率」が13.9%でリーグ18位。いかにボールが相手から奪えていないかよくわかります。

0-3で敗れた第24節のサガン鳥栖戦を見て感じたのは、失点の要因は全て「相手にボールを動かされた後のアクションの遅さ」によるものでした。

「ボールを奪える」と感じて奪えず、違う場所にボールが動いているのですが、ボールを奪いにいった選手以外の選手が、「自分は関係ない」と動きを止めてしまい、ボールが来た時の準備をしていないので、一歩アクションが遅れます。

もちろん、今野が長く怪我で欠場しており、ボールを奪える選手がいないというのも要因だと思いますが、僕はボールを奪えない要因は、ボールから離れた位置の選手のアクションの遅さが要因だと感じました。

ただ、リーグで最も「シュートを打たれやすい」守備にもかかわらず、被シュート成功率が8.9%でリーグ8位にとどまっているのは、東口というGKの能力の高さを現しています。実力のある選手はいるのです。

川崎フロンターレは攻撃でも守備でも「アクションを止めない」チーム

川崎フロンターレは、ボールを持っている選手のプレーに注目が集まりがちなチームですが、ボールを持っていない選手や、ボールの近くにいない選手がアクションを止めず、次のプレーを予測し、動き続けるチームです。

特に鬼木監督が就任してからはアクションを止めないことを徹底しており、守備の強度が上がったのは、アクションを止めなくなったことが要因だといえます。

この試合は、ガンバ大阪がボールを持てば、アデミウソン、倉田といった選手もいるので、ある程度攻撃を受ける時間はあると思います。ただ、ボールを持っていない時、ボールの近くにいない選手が動きを止めなければ、相手とのズレを作り出すことが出来るので、シュートチャンスも作れるし、ピンチも防ぐことが出来るはずです。

ボールがなくても動き続けるエウシーニョ

川崎フロンターレで、ボールを持っていないときのアクションが最も多いのはエウシーニョです。「そこにエウソン」と言われるように、チャンスになるとスルスルとFWの位置まで上がってきてチャンスを作り出すプレーは、川崎フロンターレのサポーターならご存知だと思います。

エウシーニョという選手の強みは、何度でもアクションを起こせることです。

パスが出てこなくても、味方が見ていなくても、アクションを起こす。そして、何度も、何度も、繰り返しアクションを起こすことができるのが、エウシーニョの最大の強みです。

エウシーニョのプレーというのは、ボールを持っている選手からは遠い位置でアクションを起こるので、あまり目立ちません。ただ、目立たない位置で相手の守備を動きで攻略しようとする選手がいるので、小林、家長、中村といった選手がいきるのです。

2018年シーズンの序盤、エウシーニョはどこか寂しそうでした。

攻撃はほとんど左サイドに限定され、どんなにアクションを起こしても、なかなかパスが出てこない。本来なら自分をサポートしてくれるはずの家長は、ボールを受けたがって左サイドに移動してしまい、パスを受けることが出来ても、自分の周りには誰もいないため、相手の守備を攻略するためのアクションが起こせない。普段はボールを受けられなくても不満そうな顔をしないエウシーニョが、シーズン序盤は何度か不満そうな顔をしていたのを思い出します。

しかし、徐々に攻撃に関する問題を解決し、攻撃の回数で左右差が少しずつ減り始めたことで、エウシーニョにパスが届く回数が増え、家長も左に移る必要がなくなり、エウシーニョのプレーがいきる環境が整いつつあります。そろそろ、本来のエウシーニョのプレーが見れるんじゃないかと、僕は期待しています。

年々進化を続けているエウシーニョ

エウシーニョは2015年に加入して3年目。2017年シーズンにベストイレブンに選ばれていますが、毎年少しずつ進化を遂げています。相手の背後を狙うプレーが読まれ始めたら、ドリブルで相手を外すプレーに取り組むようになりました。

縦方向に抜ける動きが読まれ始めたら、中央に移動して左足でシュートを決めるプレーを披露するようになりました。守備が欠点と言われていましたが、2017年に怪我から復帰した時、エウシーニョの上半身が明らかに大きくなったことに気がつきました。競り合いで負けないようにトレーニングを積んだのだと思います。

2018年シーズンのエウシーニョは、自分をいかすだけでなく、味方をいかすプレーに取り組んでいると感じます。中央の小林を狙うスルーパスを出してみたり、相手の背中を通すようなパスを出したり、パスで相手を崩すプレーも上達しています。

ただエウシーニョがすごいのは、自分の強みはあくまでアクションを繰り返せることだと分かっていることです。強みを失わずに、年々できることを増やしているからこそ、川崎フロンターレのスターティングメンバーとして、試合に出続けているのだと思います。

今日の試合は、エウシーニョの強みがいきる相手だと思います。どんなプレーをしてくれるのか、楽しみです。

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