書評「夏フェス革命 ー音楽が変わる、社会が変わるー」(レジー)

ご紹介する「夏フェス革命 ー音楽が変わる、社会が変わるー」という本の帯には、いきものがかりの水野良樹さんによる、こんな言葉が添えられています。

フェス文化から一番遠いところにいた僕らいきものががりは、
2016年、ROCK IN JAPANのGRASS STAGEに立ちました。
この10年余り、変わったのは僕らではなく"あちら"の方です。
この本は、その変化の実態を、まさに書き尽くしています。

B`z稲葉浩志の口から出た言葉

水野さんが語っていることを証明したのが、2017年のROCK IN JAPAN 1日目のGRASS STAGEのトリとして、B`zが出演したことです。

ROCK IN JAPANを主催する「ロッキング・オン」が発行する雑誌、「ROCKIN'ON JAPAN」では、ロックバンドであるB`zのインタビューを掲載したことはないにもかかわらず、ロックフェスには出る。しかもトリとして。僕は驚きました。

B`zのステージは大盛況で、GRASS STAGEでは異例の入場制限が出たと言われています。そして、B`zの稲葉浩志は、「裸足の女神」を演奏する前のMCで、観客に(ちょっとおちゃめに)こう語りました。

こんなに素晴らしい景色が見られるなら、もっと早く来ればよかったなぁ。

ロックフェスにロックバンド以外にミュージシャンが出演する

ロックフェスに、いきものがかりやB`zが出る。1990年代の「ロック」の定義から考えられないことが、最近になってから起こっています。

ROCK IN JAPANが始まった当初に、B`zが出演するということが発表されたら、もっと反感を買っていた気がします。なお、2018年のROCK IN JAPANは、初めて松任谷由実が出演することが発表されています。

ロックフェスに、ロックバンド以外のミュージシャンが出る。これは海外ミュージシャンが出演するロックフェスでも同様で、2018年のFUJI ROCK FESTIVALにはKENDRICK LAMMERの出演が発表され、SUMMER SONICではCHANCE THE RAPPERの出演が発表されています。

共にアメリカの音楽シーンで人気のラッパーですが、ロックというジャンルに属するアーティストではありません。

音楽を切り口に、現代社会を説明した1冊

毎年夏に開催されるロックフェスは、「夏フェス」と呼ばれるようになり、ロックファンだけでなく、音楽が好きな人、アウトドアでお酒を飲みながら騒ぎたい人など、様々な人を巻き込みながら、規模を年々拡大し続けています。

規模を拡大している要因は、観客のニーズに応じて、ブッキングするミュージシャンや、観客に楽しんでもらうためにサービスを充実させていったフェスの主催者と、主催者と「協奏(共創)」していく観客の存在がありました。本書は丁寧にお互いがやってきたことを説明しています。

本書「夏フェス革命 ー音楽が変わる、社会が変わるー」は、タイトルに「夏フェス」という言葉が添えられているため、音楽について語られている本だと感じるかもしれませんが、実際に読んでみると、本書は音楽だけの本ではないことに気付かされます。

読み終えれば分かりますが、本書は、「夏フェス」を切り口に現代社会の変化を、ファクトを引用しつつ、丁寧に分析した本でもあるのです。

「音楽は時代を映す鏡だ」という言葉を聞いたことがあるのですが、本書を読んでいると、その言葉がグッと真実味をおびてきます。そして、著者はもしかしたら、音楽を通じて「今の時代はどうなっているのか」を詳しく把握しようとしているのかもしれない。そんな事を考えてしまいました。なぜなら、僕は「スポーツ」を通じて、「今の時代はどうなっているのか」を知ろうとしているからです。

なお、本書は音楽の棚に置かれていたのですが、もし、ビジネス本の棚に置かれていたら、もっと売れるんじゃないかなぁと思いました。

多くの方に読んで頂きたい、素晴らしい1冊です。


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失敗とはトライしないこと
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西原雄一

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