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2017年J2第6節 名古屋グランパス対ロアッソ熊本 レビュー「サッカーの楽しさを堪能した90分」

2017年J2第6節、名古屋グランパス対ロアッソ熊本は5-1で名古屋グランパスが勝ちました。名古屋グランパスのサポーターは、選手たちが表現した素晴らしいプレーを存分に堪能した90分だったのではないのでしょうか。

松本山雅FC戦の勝利が選手の技術を引き出す

前節の松本山雅FCの後半以降、名古屋グランパスのプレーは明らかに精度が上がっています。2017年シーズンの始動から高めてきた、「止める」「受ける」「外す」「運ぶ」といった基本的な技術を高め、ポジションに関係なく、チームが勝つために、目の前の相手に勝つための術を身につけ、高めていく。つまり、「個人戦術」のレベルを徹底的に上げることに注力し続けました。

前節の松本山雅FC戦までは、選手が練習で高めてきたことを表現出来ていませんでしたが、松本山雅FC戦の後半以降、杉本という「運べる」選手の存在が入ったなど、様々なことが噛み合い、プレーの精度が上がってきました。そして、松本山雅FC戦の勝利で選手は自信をつけたのでしょう。この試合は、これまで高めてきた事を、選手は試合で存分に披露してくれました。

まず、パススピードが速くなりました。「止める」精度が高まり、相手の反応が遅れるくらい速いパスを出しても、味方が止められるようになってきたので、パススピードが明らかに速くなりました。そして、パススピードが速くなっても、「受ける」動きが上手くなった事で、スムーズにボールを相手ゴール方向に運べるようになりました。また、「受ける」動きを全員が足を止めず、パスした後も次にボールを受けるための動きを実行し続けた事で、次にパスをする選手を探すために時間をつかうことも亡くなりました。

劇的に変わったのは、「外す」動きです。分かりやすいのは、シモビッチの動きです。第1節、第2節に出場した頃のシモビッチは、ただ相手DFの前で立っているだけでした。どのタイミングでボールを受けたいのか、相手のマークを外すアクションが全く無いので、チームメイトもシモビッチの有効性が分かっていても、パスが出来ませんでした。

しかし、今節のシモビッチは違いました。パスを受ける瞬間、素早く1歩2歩ダッシュし、相手のマークを外し、味方からパスを要求するようになったのです。味方もシモビッチの動きを見逃さず、正確に足元にパスを出します。シモビッチは、元々ボールを扱う技術に優れた選手なので、パスを受けてくれれば、次に受ける味方をフリーにしてくれるようなパスを返してくれます。シモビッチにパスが入るようになったのは、シモビッチの「外す」動きが改善され、アクションを連続して実行出来るようになったからです。

そして、「運ぶ」事が出来る選手がいることが、パス回しを円滑にしてくれています。特に左サイドの杉本は、ボールを持ったらほとんど取られません。杉本がボールを運んでくれるので、他の選手は杉本がボールを運んでいる間に、動き直すことが出来るようになりました。そして、中央には玉田というボールを取られない選手がいます。中央の玉田、左サイドの杉本という、「運ぶ」事が出来る選手がいることで、パス以外の選択肢を活用しながら、相手の守備を攻略出来るようになりました。

基本的な技術を試合で表現出来るようになったことで、足元に正確で速いパスを出すというプレーも増えました。こうしたプレーを待ち望んでいたのが、佐藤寿人です。前半に和泉から1本、杉本から1本、佐藤寿人が動いた足元に、正確で速いパスが入りました。チャンスにはなりませんでしたが、今後このようなプレーが増えてくれば、佐藤のゴールも増えてくると思います。

名古屋グランパスの攻撃を支える和泉

今の名古屋グランパスの攻撃を支えているのは、和泉です。僕が観ていて、和泉のプレーが素晴らしいところは、3点あります。

1点目は「ボールを受ける事を恐れない」事です。相手がいても、ミスしても、次のプレーで自分にボールを預けるように動けるのは、簡単に出来る事ではありません。

2つ目は、「常に相手ゴール方向に向かってプレーしている」事です。ボールを不必要に後ろに下げないし、ボールを受けたら常に相手ゴール方向を向こうとします。

そして、3点目は「動きを止めない」ところです。ボールを扱う技術が高い選手は、1つアクションを終えると、動きを止めてしまう傾向があります。ところが、和泉は違います。「出して、受ける」を繰り返し、常にボールを受けようと、動きを止めません。そして、動きを止めないので、味方がボールを奪われたら、素早くボールを奪うアクションを起こす事が出来ます。この和泉が起こすアクションが、今の名古屋グランパスを支えています。

八反田のプレーが活きるようになった理由

この試合は、玉田に代わって八反田が途中出場しました。この試合の八反田のプレーを観て、ようやく八反田という選手の強みと質の高さを、名古屋グランパスのサポーターは理解してくれたのではないのでしょうか。

八反田の強みは、「出して、受ける」を繰り返せる事と、蹴って止めるという基本的なボールを扱う技術が高い事です。ところが、第3節までの名古屋グランパスは、チーム全体でアクションの量が少なく、八反田が望むタイミングで動く選手がいないため、八反田がボールを受けても、パスを出すところがないため、ボールを受けた八反田がつかまり、ボールを奪われ、ピンチを作られるという場面が何度もみられました。

ボールをキープし、味方が動く時間を作ってくれる玉田を起用していたのですが、チーム全体の動きが改善されたことで、ようやく八反田が望むタイミングでパスが出せるようになりましたし、八反田が望むタイミングでパスがもらえるようになりました。そして、八反田を中心にボールが素早く動くようになり、出場する前と比較して、パス回しのテンポが明らかに上がりました。

今後、八反田が起用されるのか、玉田が起用されるのかは、分かりません。田口もいよいよ復帰間近です。和泉、ワシントンという選手は外せないので、もう1人の中盤の選手として、誰が起用されるのか、チーム内の競争もより一層激しくなるはずです。

もっとサポーターが期待したくなるような試合が観たい

この試合を観ていると、風間監督が繰り返してきたトレーニングの効果によって、パス回しのテンポに入れる選手も増えていると感じました。途中出場したフェリペ・ガルシアや田鍋も、パス回しのテンポに順応してみせました。チーム力は松本山雅FC戦の勝利をきっかけに、明らかに上がっています。ただ、まだまだ課題はたくさんあります。特に守備は櫛引と宮原に助けられているところがたくさんあります。また、攻撃も最後の仕上げのパス、動きの精度がまだまだ高くありません。もっと正確にプレー出来れば、もっとチャンスを作れるはずです。

ただ、この試合は、名古屋グランパスのサポーターに、チームがどんなサッカーを目指しているのか、チームがどんな取り組みをしているのか、少し理解してもらえたのではないのでしょうか。まだまだシーズンは長いですが、この試合を観終わって、チームへの期待が高まったことは確かです。次の試合もどんな試合になるのか、楽しみです。

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