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書評「日本代表とMr.Children」

1993年のJリーグ開幕、初出場となる1998年フランスW杯から6大会連続出場で常連国となったサッカー日本代表。一方、1993年「CROSS ROAD」が初のドラマ主題歌となり、一躍日本音楽界のトップランナーへ、そこから現在に至るまで時代の先頭を駆け抜けてきたMr.Children。

平成という時代を駆け抜けてきた2つのコンテンツが、いかに交わり、どのような効果を生んだのか。

「音楽」と「スポーツ」の両面から、平成という時代を分析しようと試みた書籍が、本書「日本代表とMr.Children」です。

「Mr.Children」にとっての仮想敵

本書を読み終えて、僕は日本代表とMr.Childrenは共通の仮想敵を相手に戦ってきたのかもしれない。そんなことを感じました。

日本代表とMr.Childrenにとっての仮想敵とは何だったのか。本書にも書かれていますが、それは「世界」なのだと思います。

Mr.Childrenというバンドを語る上で、海外の音楽シーンとの関係は重要です。「深海」というアルバムは、レニー・クラヴィッツも使ったウォータフロントという当時世界最高とも言われたアナログレコーディングができるスタジオで製作を行いました。

本書にも登場しますが、「DISCOVERY」という曲は、RADIOHEADの「airbag」のイントロとほぼ同じです。RADIOHEADは当時(今もかもしれませんが)世界最高のロックバンド。Mr.Childrenが意識していたのがよく分かります。

桜井さんはその後「ap bank fes」で日本の楽曲のカバーを数多く演奏するようになります。

海外シーンを意識した後、自分たちの足元を見直す。僕はこの繰り返しが、Mr.Childrenの歴史だと思っています。Mr.Childrenの中には、常に頭の片隅に、「海外」があるような気がします。

「日本代表」にとっての仮想敵

「海外」を仮想敵として戦い続けてきたという点では、日本代表も同じです。チームとしても、個人としても、海外の存在が敵として常に立ちふさがってきました。

島国である日本にとって、「海外」は常に仮想敵でした。海外と比較しつつ、どうあるべきか。どうするべきか。敵でありながら、自らの存在を深く理解させてくれる存在でもありました。

乱暴に言うなら、古くは海外との間では、戦争や貿易戦争といった争いを通じて、お互いの距離を測り合っていました。ただ平成という時代では、音楽やスポーツといった、武器をもたない別の競争によって、海外との距離や位置を確かめていたのではないか。本書を読み終えて、そんなことを考えました。

なお、レジーさんの著書としては「夏フェス革命」もおすすめです。近年の音楽シーンや音楽ビジネスを理解するのにとても役立つ1冊です。


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