書評「武器としての交渉思考 」(瀧本哲史)

「交渉」という言葉を聞くと、企業間のビジネス交渉や、犯人を言葉で説得する「交渉人」をイメージする人がいると思います。しかし、交渉という言葉が持つ意味は、それだけではありません。著者は「交渉」について、以下のように語っています。

大人になって自分の力で決断できるようになっても、いくら高い能力や志を持っていても、世の中を動かすためには自分一人の力ではとても足りません。共に戦う「仲間」を探し出し、連携して、大きな流れを生み出していかなければならない。そこで必要となるのが、相手と自分、お互いの利害を分析し、調整することで合意を目指す交渉の考え方です。交渉とは、単なるビジネススキルではありません。ときには敵対する相手とも手を組み、共通の目的のために具体的なアクションを起こしていく―そのための思考法なのです。

「ときには敵対する相手とも手を組み、共通の目的のために具体的なアクションを起こしていくための思考法」としての交渉とは何か。本書「武器としての交渉思考 」は、具体的に説明しています。

自分の立場ではなく、相手の「利害」に焦点を当てる

本書には、交渉にあたって考えるべき点や交渉テクニックが数多く紹介されていますが、何度も繰り返して紹介されているのが「自分の立場ではなく、相手の「利害」に焦点を当てる」という考え方です。

交渉にあたって、自分たちの希望や条件を叶えようと、自分の意見ばかり押し通してしまいがちですが、交渉で大事なのは「相手のメリット」を実現してあげることなのです。就職面接でも、実際の商談でも同じです。

本書では「バトナ」という言葉が紹介されています。バトナとは「Best Alternative to a Negotiated Agreement」の頭文字をとった言葉で、「相手の提案に合意する以外の選択肢の中で、いちばんよいもの」という意味です。

目の前の選択肢で合意する以外にも選択肢を持っていれば、交渉相手に「よい条件でなければ合意しない」と宣言することができます。できるかぎりたくさんの選択肢をもった上で、自分にとってメリットの大きな選択肢(=バトナ)を持っておくことで、交渉を優位にすすめることが出来るというわけです。

交渉は問題を解決する第一歩

何か物事を変えなければいけない時、問題を解決しなければいけない時、交渉相手との利害が一致しないのは、当然です。なぜなら、交渉相手は自分ではないからです。しかし、自分と同じではないことに違和感を持ち、人のせいにしたり、文句を言ったりして、その場をやり過ごし、結局何も解決していない人が大半なのだと思います。

交渉は、問題を解決するための手法として、最も採用しやすい方法です。しかし、どのように交渉したら良いのか分かっていない人が、実際に社会で働いている人の中にも多いと思います。だからこそ、交渉方法を身につけることは、自分の考えに同意してくれる仲間を増やすというだけでなく、自身や周囲の問題を解決し、他人より優位な条件で生活するための武器を身につけるということを意味するのです。

本書は、「交渉」という武器を持つ意味が分かりやすく紹介されています。また読んでみたくなりました。

※2014年12月に書いた記事を再掲載致しました。

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