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書評「新しい分かり方」(佐藤雅彦)

もし「すごいクリエイターは誰だと思う?」と質問されたら、僕は佐藤雅彦さんの名前を挙げます。

佐藤雅彦さんは、「バザールでござーる」などのCMを手がけただけでなく、最近はNHK Eテレの「ピタゴラスイッチ」という番組の監修にかかわっています。

「ピタゴラスイッチ」の番組Webサイトには、こんな言葉が掲載されています。

私たちがふだん何気なく暮らしている中には、さまざまな不思議な構造や面白い考え方、法則が隠れています。
番組では、毎回こうした面白い考え方や法則を取り上げ、それによって起こる事象を紹介し、番組を見ながら「考え方」を育てることをねらっています。

人間とはどんな生き物なのか

佐藤さんは、映像作品を発表しながら、「人はどのように物事を理解するのか」「どんな考え方があるのか」といったことを常に考えながら、「人間とはどんな生き物なのか」を知ろうとしている人なのではないかと感じることがあります。「クリエイター」というよりは、「探求者」でしょうか。

佐藤さんは「ヘンテコノミクス」という、行動経済学を漫画で紹介している書籍を発表しています。

行動経済学は、「人間はどんな考え方をもとに行動するのか」ということを研究した学問です。行動経済学として研究された内容は、佐藤さんが長年映像作品を通じて探求したことと合致します。

緻密で正確

佐藤さんの著書「新しいわかり方」は、佐藤さんが探求し続けている研究結果の最新のレポートだと捉えると、とても興味深い書籍です。

佐藤さんの作品は、ピタゴラスイッチのように、緻密で、正確な裏づけに基づいて構築されています。クリエイターは感覚的な生き物だと考えている人がいるかもしれませんが、そんな感覚的な人とは真逆な場所に佐藤さんはいます。そして、本当のクリエイターとは、佐藤さんのような人ではないかと思うのです。

CMを手がけることが減ったので、あまり表に出ることはありませんが、稀代のクリエイターの腕が錆びついたわけではありません。ぜひデザイナーやクリエイター志望の若い人に読んでもらいたい書籍です。


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