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書評「マイケル・ジョーダン 父さん。僕の人生をどう思う?」

僕がバスケットボールに興味をもったころ、誰もが彼の名前が入ったバスケットボールシューズを履きたがった。バスケットボールシューズの名は、「AIR JORDAN」。バスケットボールを始めた人たちは、このシューズを履いて、彼のようにプレーしたがっていた。

彼の名前は、マイケル・ジョーダン。舌を出しながら空を飛ぶように決めるダンクシュート、相手を手玉に取るドリブル、そして勝敗を決めるシュートを次々としずめる「勝者」としての姿に、人々は熱狂しました。ナイキだけでなく、ゲータレード、マクドナルドといった企業がマイケル・ジョーダンをCMに起用したという事実からも、マイケル・ジョーダンがいかに時代のアイコンだったかが分かります。1990年代のアメリカを語るときに、マイケル・ジョーダンという人物を外すことはできません。

本書「マイケル・ジョーダン 父さん。僕の人生をどう思う?」は、マイケル・ジョーダンの人生を750Pという圧倒的な文章量で振り返った書籍です。

マイケル・ジョーダンに関する自伝・評伝は何冊も出ていますが(本書の巻末で紹介されてましたが全部読んでた)、本書は決定版といってよい出来だと思います。素晴らしい本でした。

トップの選手しか持ちえない光と影

本書を読み終えて感じたのは、トップの選手しか持ちえない光と影の濃さです。

マイケル・ジョーダンが生来持っている「勝者であることへのこだわり」は、バスケットボールのコートの上では、誰よりも強烈な光を放っています。時にはアリーナで勝敗を決めるようなシュートを決め、誰にもできないようなダンクを決め、相手をトラッシュトーク(相手の心理を揺さぶるような汚い言葉)で挑発し、完膚なきまでに叩きのめします。

そして、マイケル・ジョーダンという人は、「選手がブランドになる」ことを証明した人物でもありました。「AIR JORDAN」は今でもナイキにとって重要なブランドであるとともに、メーカーが選手との契約に注力するようになったのは、マイケル・ジョーダンがきっかけだと思います。

一方で、「勝者であることへのこだわり」は強烈な光を放つかわりに、誰よりも深い闇を伴う影となって、マイケル・ジョーダンの人生に暗い影を落としていました。

1回のラウンドで数百万円を賭けた結果、多額の借金を作った賭けゴルフ。1度目の引退前に起こった父親の死、本書ではほとんど登場しない1度目の結婚生活、そして、引退して野球選手としてプレーした後に復帰、さらに2度目の引退の後の3度目の復帰は、マイケル・ジョーダンという人が勝負の世界と日常生活を切り離せなかったこと、勝負の世界から離れられなかったことを示しています。

本書はマイケル・ジョーダンという人物の等身大の姿を、750Pもの文章量を用いて丁寧に説明している大作です。そして、何よりこの本は翻訳が素晴らしい。翻訳を手がけているのがバスケットボールに関する海外の文献の翻訳を手がけている佐良土 茂樹さんと佐良土 賢樹さんということもあり、バスケットボールというスポーツも理解した上で、英語にありがちな回りくどい表現を上手く読みやすく翻訳しているので、750Pという量も読みやすく、あっという間に読める内容に仕上がってます。人物評伝としても良作です。

スーパースターが放つ光と影。そのことへの理解を深めるにはおすすめです。


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