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2017年J2第29節 名古屋グランパス対アビスパ福岡 レビュー「今こそ小林裕紀のプレーに注目しよう」

2017年J2第29節、名古屋グランパス対アビスパ福岡は3-1で名古屋グランパスが勝ちました。

前半11分に先制点を挙げるまでは、アビスパ福岡のペースで試合が進みました。アビスパ福岡は、名古屋グランパスのDFがボールを持ったら、素早く距離を詰め、ボールを奪いにきました。名古屋グランパスは、アビスパ福岡の守備を上手く外せず、ボールを相手陣内まで運べません。特にイム・スンギョムがボールを持ったとき、アビスパ福岡の選手たちは素早く距離を詰めているように感じましたので、アビスパ福岡の狙いはイム・スンギョムだったのだと思います。

イムは、ミスを恐れずにプレー出来る選手なのですが、右DFの宮原に比べると、ボールを運ぶプレーが上手くありません。しかし、自信があるからなのか、必要以上にボールを持ち過ぎて奪われる事があります。アビスパ福岡は、イムの特徴を把握していたのか、イムがボールを持ったら、素早く距離を詰めて奪いにきました。

先制点を奪ってからは、アビスパ福岡は積極的に奪いに行くのを止め、名古屋グランパスが攻撃を仕掛けてくるのを待ち構えるような守備に変えます。ところが、待ち構えるのは良いのですが、ボールを奪いにいくタイミングがFWとMFで揃っていないため、ボールを奪うことが出来ません。次第に名古屋グランパスに押し込まれ、同点にされてしまい、その後も名古屋グランパスのペースで試合が進みました。名古屋グランパスとしては、前半のうちに同点に追いつき、ボールを保持し続けた事で、アビスパ福岡の守備の時間を増やし、攻撃に割く体力を削ぐ事が出来ました。

直近の試合で、名古屋グランパスがリードを奪った後「動きを止めてしまう」という問題について、風間監督が言及していました。

この試合ではアビスパ福岡もリードを奪った後に動きを止めてしまったように感じました。Jリーグを観ていると、リードを奪ったり、得点を奪った後、安心して動きを止めてしまうチームが他にもあります。これは、Jリーグ全体の過大なのかもしれません。

アビスパ福岡が仕掛けた後に2得点を奪って勝負あり

後半に入って、アビスパ福岡は再び積極的にボールを奪おうと試みます。たぶん、時間帯やスコアによって、ボールを奪いにいく位置を変えていたのだと思います。再びイムが狙われ、アビスパ福岡がボールを保持する時間が増えます。アビスパ福岡は、ボールが保持する時間が増えてきたところで、ジウシーニョに代わって石津を入れて、石津を左MF、山瀬を右MFに移します。

この交代を仕掛けた直後、名古屋グランパスの2点目が入ったため、アビスパ福岡は後手に回ってしまいました。その後、守備で貢献していた松田が交代したあとは、名古屋グランパスにボールを保持される時間が増え、DFからFWにロングパスを出してもオフサイドになってしまい、なかなか相手陣内にボールが運べません。2点目が勝負の別れ目だったと思います。アビスパ福岡に攻撃を仕掛ける体力は残っていませんでした。

小林裕紀のプレーは何がすごいのか

名古屋グランパスはこの試合に勝って5連勝。ガブリエル・シャビエルや5試合連続得点を決めた青木に注目が集まりがちですが、僕が注目しているのは、中央のMFとしてプレーする田口と小林のプレーです。特に素晴らしいプレーを披露しているのは、小林です。

小林は攻撃を開始する時は、新井の横に下がってきてボールを受け、パス交換をサポートします。相手陣内にボールを運んだら、フィールドの中央を起点に、ボールを持っている選手の少し後ろで、常に味方からボールが受けられるように準備し、ボールを受けたら、他にボールが受けられる味方にミスなくパスをする。パスをしたら、動きを止めずに再びパスを受けられる位置に移動する。この動きを、小林は1試合を通して繰り返しています。

小林が素晴らしいのは、常に意図が伝わるパスを出していることです。パスを出す相手、方向、スピード、球種、長さなど、様々なパスを使い分け、味方に対して、攻撃を仕掛けるべきなのか、まだ相手をおびき寄せるタイミングなのか、どこを攻撃するべきなのかといった自らの考えがよく伝わるパスを出しています。小林が中央のMFに入った事で、ガブリエル・シャビエル、青木、田口といった選手のプレーが活きるようになったのではないかと、僕は感じています。また、守備の時でも危ない場面でボールを奪うアクションを起こしているのは、小林です。

第2節の前半途中交代から立て直した小林

第2節のFC岐阜戦では、小林は前半途中で交代させられています。FC岐阜戦での小林のプレーを振り返ると、攻撃の時も、守備の時もアクションがほとんどなく、何をしたら良いのか分からないといった戸惑いがプレーから感じられました。しかし、その後DFとしてプレーした後、天皇杯2回戦からMFとしてプレーします。この天皇杯の時のプレーが素晴らしかった事で、MFで再びプレーするチャンスを掴んだのだと思います。天皇杯の時には、攻撃の時も、守備の時も、アクションを起こし続けていました。

中央のMFというポジションは、「アンカー(船のいかり)」とか、「ボランチ(ポルトガル語でハンドル)」とか、「ピボーテ(スペイン語で軸)」といった言葉で表現されるほど、チームの中心を担うポジションです。攻撃、守備でチームが何をすべきなのか、監督のプランを踏まえて、選手に適切なアクションを促すポジションです。中央のMFがチームのレベルを決めるといっても過言ではありません。このポジションで、小林と田口が素晴らしいプレーを披露している事が、僕は5連勝の要因の一つだと思います。

5連勝しても状況は劇的に変わっていない

5連勝し、2位のアビスパ福岡とは勝ち点差3、首位の湘南ベルマーレとは勝ち点差8に縮まりましたが、まだまだ自動昇格圏内の2位には達していません。まだ2チームとは差があります。前半戦に負けてしまった分を、まだまだ取り返しきれてはいません。

次節の相手は横浜FC。7位につける横浜FCとしては、負けられない試合です。5連勝したといっても、まだ残り13試合ありますので、順位なんて簡単に入れ替わります。次の試合も楽しみです。

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