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2018年J1第11節 ヴィッセル神戸対川崎フロンターレ プレビュー「きつい試合だからこそ、力を発揮する"異質な"選手たち」

2018年J1第11節、川崎フロンターレの対戦相手はヴィッセル神戸です。まずは、Football-Labに掲載されている前節までのデータを元に、ヴィッセル神戸のデータから分かる特徴を紹介したいと思います。

プレビューで紹介する「2つの指標」

1つ目は、「チャンス構築率」。これは、シュート数を攻撃回数で割った指標で、1回の攻撃でどのくらいの確率でシュートチャンスを作れるかを把握するためのデータです。このデータから、チームのビルドアップ(攻撃の開始からシュートチャンスを作るまで)の特徴を把握することが出来ます。

2つ目は、「シュート決定率」。これは、得点数をシュート数で割った指標で、何本シュートを打てば得点を奪えるのか、把握することが出来ます。

2つの指標ともに、10%を目安にしています。守備では「被シュート構築率」「被シュート決定率」という指標に着目することで、シュートチャンスを作らせない守備がどのくらい出来ているのか、得点を奪われない守備が出来ているのかを把握することが出来ます。

ボールを保持して攻撃を仕掛けるヴィッセル神戸

前節までのヴィッセル神戸の攻撃のデータを分析すると、攻撃回数は127.6回でリーグ11位、シュート数は13.9本でリーグ8位、チャンス構築率は10.9%でリーグ4位、シュート成功率は11.5%でリーグ3位です。

ヴィッセル神戸の攻撃に関するデータを2017年と比較すると、明らかに増えているのが、「パス本数」と「ボール保持率」です。

パス本数は、2017年シーズンが1試合平均470.9回だったのが、2018年シーズンは544.9回。2018年シーズンのパス本数は、リーグ4位です。ボール保持率は、2017年シーズンが1試合平均49.8%だったのが、2018年シーズンは53.3%。これは、リーグ3位の数字で、川崎フロンターレに次ぐデータを示しています。ドリブル数がリーグ18位(10.3回)というデータからも、「パスをつないで、相手陣内にボールを運ぶ」プレーを志向していることが読み取れます。

そして、シュート成功率11.5%というデータは、川崎フロンターレの10.3%より高いデータを指名しています。ヴィッセル神戸はこれまでとは異なり、2018年シーズンからボールを保持する時間を長くし、攻撃を仕掛けるプレースタイルを掲げていますが、今のところ、チャンス構築率、シュート成功率も11%近いデータを記録しており、スタイルの変化は総得点数リーグ1位(FC東京とタイ)というデータにも現れています。

気になるのは、30mラインの進入回数は45.1回でリーグ5位というデータを記録しているのですが、ペナルティエリアへの進入回数は13.1回でリーグ11位と、シュート成功率が高くなるペナルティエリアへの進入回数は決して高くないことが分かります。

ポドルスキ、チョン・ウヨンのように、ペナルティエリアの外からでもシュートが決められる選手がいるので、ペナルティエリアからのシュートによるゴールも多いのかもしれません。したがって、ボールは保持出来るが、相手ゴール前までボールを運びきるプレーには、課題があるのではないかと読み取れます。

ヴィッセル神戸の守備のデータを分析すると、被攻撃回数は、129.6回でリーグ11位、被シュート数は12.9本でリーグ12位、被チャンス構築率は10.0%でリーグ13位。被シュート決定率は10.1%でリーグ13位です。2017年シーズンの被チャンス構築率が10.2%、被シュート決定率が10.6%であることを考えると、守備のデータは大きく変わっていません。したがって、プレースタイルの変化は、ヴィッセル神戸にとっては(今のところ)よい結果を生む変化といえます。

チームを支える奈良と阿部

川崎フロンターレは、アウェー連戦の2試合目。しかも、中2日。この試合は、前節復帰した大島と小林が出場すると思います。

その分、前節まで中3日、中3日で出場を続けていた、知念と守田はベンチスタート。もしくは、思い切ってベンチ外にするかもしれません。ベンチ外となったからといって、この2人に限っては、悪いことではありません。疲れもピークだったと思いますので、むしろ休ませたいところです。

むしろ、知念や守田のように、開幕からチームを支えてくれていた選手に替わって、奈良や阿部の2人のプレーの質が、目に見えて改善されているのは、嬉しい限りです。

奈良は、開幕当初は明らかに身体が動けていませんでした。得意の1対1でボールを奪いきれず、攻撃時には横方向へのパスが多かったのですが、最近の試合を観ていると、1対1でもきちんとボールを奪い切るだけでなく、攻撃時にも縦方向にパスを出す場面が増えました。奈良の復調は、右サイドからの攻撃が増えたことの要因でもあると、僕は感じています。

阿部も奈良同様に、開幕当初は明らかに身体が動けていませんでした。また、左サイドに攻撃が偏るため、家長が左サイドに移ってくる機会も多く、阿部がプレーするエリアが狭まり、明らかに窮屈そうにプレーしていました。僕は阿部の事を「守備が上手い大久保」と表現したことがあるのですが、開幕当初は大久保とプレーしたいエリアが重なる場面もありました。

しかし、最近の試合を観ていると、家長が左サイドに移動する機会が減り、阿部がプレーするエリアをきちんと確保した結果、少しずつ阿部らしい「フィールドの問題を的確に解決する」プレーが披露されるようになりました。

サガン鳥栖戦の前半の攻撃で、阿部がボールを持っていた時、阿部の左横を車屋が駆け上がった時、「上がらなくていい」とでもいいたげに、阿部が左手を上げて車屋を制した時、「阿部が戻ってきた!」と、僕は嬉しくなりました。

奈良と阿部は、これまでの川崎フロンターレに足りなかった「最後の最後まできっちりと走る」「最後の最後で足を出す」「状況に応じてプレーする」ことが出来る選手たちです。2017年シーズンにリーグ優勝したのは、チーム全体で、労を惜しまず、状況に応じたプレーが出来たことが要因でしたが、そんなチームを引っ張っていたのが、奈良と阿部でした。奈良が欠場し、阿部のコンディションが万全ではなかった、ルヴァンカップ決勝でセレッソ大阪に敗れたのは、偶然ではありません。

中2日でコンディションがきつい試合ですが、そんな試合だからこそ、奈良と阿部の力が試されていると思います。この2人は、川崎フロンターレのプレースタイルからは異質な選手ですが、欠かせない選手です。2人のプレーに注目です。

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