サッカー日本代表対パラグアイ代表 レビュー

ロシアワールドカップ前に行われる国際親善試合、サッカー日本代表対パラグアイ代表は、4-2で日本代表が勝ちました。僕はプレビューで、この試合のポイントとして、以下の4点(プラスα)を挙げていました。

1.酒井宏樹と乾の出場時間
2.遠藤と酒井高徳のポジション
3.岡崎のパフォーマンスと出場時間
4.チーム作りの進捗度合い
(プラスα)浅野と井手口のプレー

「プラスα」として挙げていた、浅野と井手口は出場メンバー登録からは外れていたので観ることは出来ませんでしたが、残りの4点についてはしっかりチェックすることが出来ました。

酒井宏樹と乾の出場時間から分かること

1点目は「酒井宏樹と乾の出場時間」です。プレビューでは、「90分フル出場もしくは、75分程度出場し、初戦のコロンビア戦の起用が問題ないか」判断すると書きました。

乾はスターティングメンバーで起用され、79分プレー。2得点という活躍を披露してくれました。乾についてはボールを持っているときのプレーばかり注目されますが、乾の凄さはボールを受ける動きと守備でも感じることが出来ます。ボールを受けるときは、常に相手の守備の位置を把握し、自分がボールを受けたい場所を空けておいて、ボールがもらえる瞬間に動く。この動きが抜群に上手いのです。

そして、スペインに移籍してから劇的に上手くなったのが守備です。ボールをいつ奪いにいくのか、どのタイミングで自分が担当する選手にアプローチするのか。そして、周囲の選手の位置を把握して、身体の向きや立つ場所をどこにすべきなのか。都度判断し、相手のプレーの選択肢を消す守備が、抜群に上手いのです。

この試合を観る限りは、乾のプレーには問題なさそうです。

気になったのは、酒井宏樹が後半45分のみのプレーだったということです。酒井宏樹もスターティングメンバーで起用されると思っていたのですが、右DFとして起用されたのは遠藤でした。考えられる理由は2つあります。

1つ目は、酒井宏樹の序列が低いということ。ただ、この試合とスイス戦を観る限りは、酒井宏樹が入ってからは、右サイドからボールを運ばれる回数が激減しただけでなく、ハーフラインを越えるまでのボールを運ぶプレーもスムーズになっているので、序列が低いということは考えにくいのです。

2つ目は、リーグ戦終盤に怪我をした左膝のコンディションがあまり良くないということです。練習メニューはこなしていますが、怪我の回復具合がそこまで良くはないので、慎重にコンディションをあげようとしているのかもしれません。ただ、この試合のプレーを観る限りは、コロンビア戦にはギリギリ間に合った気がします。

遠藤と酒井高徳のプレーから分かること

2点目は、遠藤と酒井高徳のポジションです。

遠藤は右サイドのDFとして45分プレー。中央のMFでのプレー機会はありませんでした。山口と柴崎がよいプレーをしていたので、90分出場させたということも考えられますが、たぶん遠藤は右DFと中央のMFの控えで、サイドのDFだったら酒井高徳、中央のMFだったら山口のような選手に怪我などのアクシデントがあったとき、バックアップするプレーヤーとして考えられているのだと感じました。

そして、酒井高徳は左サイドのDFとして90分間フル出場。右も左もプレー出来る貴重な選手であることを、改めて証明しました。この試合のプレーを観ていると、右サイドより左サイドのほうがプレーはしやすいのかもしれません。

酒井高徳や遠藤のような選手は、本大会でスターティングメンバーで起用する可能性は少ないのですが、チームに怪我人が出たとき、2人のような選手が代わりに出場しなければなりません。したがって、2人がどの程度プレーできるのかによって、チームは余裕をもって準備が出来ますし、逆に2人のような選手が怪我をすると、スターティングメンバーで出場する選手が怪我を恐れてプレーして、プレーの強度が落ちるということも考えられます。

この試合は、遠藤のプレーはあまり良くなかったので、今後の練習で改善点を意識して取り組んでほしいし、もっとコンディションを上げてほしいと思いますが、最悪ではなかったと思います。ある程度のコンディションをキープ出来ていることが分かってよかったです。

岡崎のパフォーマンスと出場時間から分かること

3点目は、「岡崎のパフォーマンスと出場時間」です。プレビューでは「スターティングメンバーであれば、70分程度プレーし、どのくらいアクションを継続出来たのかを把握したい」と書きました。実際には74分プレーし、得点を挙げることは出来ませんでしたが、岡崎の特徴はしっかり出してくれました。

岡崎が入ったことで明らかに改善されたのが、「ボールを受ける動きの量」と「守備」です。FWの選手というのは、相手に向かって先頭に立ち、チームとしてどう動くのか、自らのアクションで示すことも役割の1つです。これまでスターティングメンバーで起用されていた大迫と本田は、ボールを受ける動きと守備の時のアクションが遅く、量も少ないので、他の選手が2人に連動して動くのでアクションが遅くなり、量も少なくなり、相手に優位にプレーされるという場面が目につきました。

岡崎の強みは、攻撃でも守備でも、自らアクションを起こし、そしてアクションを継続出来ることです。特に試合開始直後から強度の高いアクションを起こせるのが強みです。この試合では、岡崎のアクションに連動し、香川、乾、柴崎、武藤(原口)といった選手が動くことで、攻撃時にはボールを受けるスペースが空き、守備時には連動してボールが奪える場面が増えました。特に後半は明らかにボールを奪いに行く場所を相手ゴール近くに設定した上で、これまで試していた守備を強度高く実践出来るか試していたのですが、岡崎がいなければあそこまで上手くはいかなかったと思います。

岡崎の動きは途中出場の選手にも、よい刺激になったと思います。交代出場した大迫が、交代直後に素早くボールを奪いにいったシーンは、チームとして何をすべきなのか、選手自身が把握していることをよく現していましたし、岡崎のプレーを観ていて、思うところがあったのだなと思いました。

チーム作りで必要なことはやっている

そして、4点目は、「チーム作りの進捗度合い」です。プレビューで「これまで試合に出ていない選手が出るからこそ、分かる事がある」と書きました。この試合を観る限りは、チームとしてある程度コンセプトと戦略は共有出来ていることが分かりましたし、チームとして取り組んでいることも、ある程度レベルの差がなく、落とし込まれているのだということが分かりました。

ガーナ戦、スイス戦を通じて「どこでボールを奪いにいくのか」「どうボールを運ぶのか」という点について試行錯誤を繰り返していましたが、この試合を観る限りは、大分チームとして整理出来ているのだと思います。ボールを奪いにいく位置は、相手陣内ペナルティエリアとハーフラインの間で奪いにいき、奪えなかったら一度ポジションを整えて、相手がハーフラインを越えてから再度奪いに行く。この動きが大分整理されてきましたし、奪いに行くタイミングのズレも少なくなっていました。

ただ、選手間の縦と横の距離が広いと感じるときがありますし、柴崎は守備の時にボールを奪うアクションが少し遅いのが気になりました。ワールドカップで戦う3チームは、少しの隙間を上手く使うのが得意なチームなので、この試合のように簡単にはボールは奪えないと思います。ただ、奪えなくても、アクションを繰り返して、ボールを奪いにいくという意志と、コンディションがそれなりに整ってきていることは、プレーから感じられました。

攻撃時の課題は「どうボールを運ぶのか」でした。特にDFからMFにボールを運ぶときに、いかに縦方向にパスを出して、ボールを中央から運んでいくのか。植田、昌子、柴崎、山口といった選手がボールを持ったタイミングにあわせて、岡崎、香川、武藤、乾が受ける。この動きはガーナ戦、スイス戦と繰り返し行っていましたが、大分タイミングがあってきたと思いますし、選手同士が重なったり、同じ場所に立ったり、選手同士の距離が近すぎることも減りました。

ただ、パラグアイのFWの守備の強度が低かったため、ボールをスムーズに運べたという点は見逃せません。本大会では柴崎をあんなにフリーにしてくれないと思いますし、DFにはファルカオとハメス・ロドリゲスが強くボールを奪いにくるはずなので、もっと時間がない状況で、プレーの判断を求められるはずです。

この試合を観ていると、周囲がざわつく中で、チームとしてはしっかりやるべき準備をしてきたのではないかと思います。シーズン終了後の海外組と、超過密日程後のJリーグ組という、バラバラのコンディションの選手を一旦ある程度のレベルに揃え、コンディションが整ってきてから、ポジションの確認、ボールを奪いにいくポイントと、ボールの運び方を確認し、繰り返しトレーニングする。この順番で短い時間でチーム作りを進めてきました。

ガーナ戦は「コンディションとプレーするポジション毎のプレーを確認」し、スイス戦は「ボールを奪いにいくポイントと、ボールの運び方を確認」し、パラグアイ戦では「繰り返しトレーニングした成果の確認」を行いました。チームとしてはスイス戦とパラグアイ戦で得た情報を基に、13日にベースキャンプに移動した後、19日のコロンビア戦まで準備を進めていくのだと思います。

今後はどのような準備をするのか

今後の準備のスケジュールとして考えられるのは、こんなスケジュールです。後半には、現時点で考えられるコロンビア戦のスターティングメンバーも書いておきます。

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西原雄一

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西原雄一

プロ・スポーツレビュアー。note「勝ち負けだけじゃないスポーツの楽しみ方」で #川崎フロンターレ #ビジャレアル と #Bリーグ のレビュー連載中。趣味は愉快な人同士をつなぐこと。#coffee ☕好き。

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勝ったら嬉しい、負けたら悔しい。それがスポーツの楽しみ方の原点だと思う一方で、スポーツの楽しみは勝ち負けだけじゃないはずだ。勝ち負けだけじゃない、スポーツの楽しみ方とは何か。
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