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書評「Basketball Lab 日本のバスケットボールの未来。」

2019年9月2日に、1冊のバスケットボールに関する本が発売されます。本の名前は「Basketball Lab」。

日本では、サッカーでは「footballista」のように、サッカーという競技で実践されるプレー、戦術、戦略などを掘り下げて、詳しく説明する書籍はあります。

しかし、バスケットボールには、月刊バスケットボールのようにトピックを紹介したり、ダンクシュートのようにNBAのニュース、Fly Magazineのようにバスケットボールにまつわるカルチャー、ダブドリのように他のバスケットボール雑誌が取り上げないようなトピックを掘り下げる書籍はありましたが、プレー、戦術、戦略を掘り下げて紹介する書籍はありませんでした。「Basketball Lab」は、これまで日本になかったバスケットボール本作りに、果敢に挑戦している書籍です。

初回のテーマは「パス」。パスというプレーについて、指導者、選手、アナリスト、そして歴史といった様々な切り口で語っています。

指導者たちが語るコーチング哲学

僕が印象に残ったのは、特集と併せて語られている、指導者たちが語るコーチング哲学です。最近「チームの話」のことばかり考えているので、5人の指揮官の話は、勉強になる話ばかりでした。

Bリーグ2連覇中のアルバルク東京のルカ・パヴィチェヴィッチさんは、「技術や特定の局面を制する高度な戦術ばかり思考が向いていて、必要なことがスキップされていた」と語りますが、これはサッカーでも起こっていることです。

千葉ジェッツの大野篤史さんは、「コーチの押しつけがプレーヤーのパスをイメージする能力、創造性を奪う」、琉球ゴールデンキングスの佐々宜央さんは、「選手の長所をいかに引き出すか」というようなことを語っています。特に千葉ジェッツの大野さんは、2018年に練習を見学させて頂いたとき、メニューの指示を出した時以外は、大きな声を出さず、静かに見守っていたのが印象に残っていたので、インタビューで語られていることには、頷くことがたくさんありました。

宇都宮ブレックスの安齋竜三さんの、ペップ・グアルディオラの本を読んでいるというエピソードには驚きました。その上で「ペップあってもすべての選手に信頼されるわけではない」という考えには納得できます。また、三菱電機コアラーズの古賀京子さんによる「Facebookのオフィスでのコミュニケーションのとり方をヒントにした」というエピソードは、安齋さん同様以外な印象を受けましたが、海外や企業の取り組みからヒントを得ようというのは、僕がお会いした他のバスケットボール関係者の姿勢とも共通すると感じました。

千葉ジェッツの木村さんのインタビューを担当

なお、僕は千葉ジェッツのビデオアナリストの木村和希さんのインタビューを担当させて頂きました。木村さんが考える「パスの定義」は、多くの人が語る定義とは違う定義でした。

そして、本書では、木村さんが普段バスケットボールの分析で使っている「フレームワーク」を特別に紹介して頂きました。貴重な情報なので、ぜひ手にとって頂き、自分のチームの分析や、普段のバスケットボール観戦に活かしてください。

木村さんのインタビューを担当するのは1年ぶりでした。普段から連絡は取り合っているのですが、久々にお会いして、フルシーズンを戦った充実感と課題がいいバランスで身体に残っているのを感じました。2018-19シーズンは新たな取組にトライするとのことですので、ご期待ください。

僕自身としては、もっと納得のいく原稿が書けたのではないか、とも思いつつ、バスケットボールのプレーヤーとしての経験がない人間が、宮地陽子さんが巻頭コラムを書き、佐々木クリスさんがインタビューするような書籍で、原稿を執筆する機会を頂けたのは大変光栄でした。

とても読み応えがある書籍に仕上がっているので、ぜひ購入してご覧ください。


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