見出し画像

ムキムキになって紅茶を入れる。たぶん、彼女はそんなこと望んでいない。

PC画面に写るメールを見て思わず、ムキになった私は、そのまま紅茶を入れにキッチンへと向かった。

久しぶりに飲むセイロンティーのルフナ。裏面には「賞味期限2022年3月」と書いてあったが、そんなものはどうでもいい。残り少なくなっていた茶葉を全部入れて、大きめのガラスポットにお湯を注ぐ。ああ、こんな感じで色んなものを全部熱湯にかけられたら良いのに。
普段はあっという間に訪れる5分の抽出時間も、今日だけはやけに遅くて、ついついベランダのメダカの様子を見に行ってしまう。

今までの猛暑に比べたら、かなり過ごしやすい気候になっていた。吹く風も涼しくて、ゆったりと空気の匂いを味わう余裕さえある。そうこうしているうちに、紅茶も出来上がり、牛乳を加えて素敵なミルクティーが完成した。

しっかりと抽出したルフナは独特な甘みが出ていて、砂糖なしでもその甘味を体感することができる。私は牛乳がないと、少ししつこく感じてしまうので、迷わず牛乳を入れる。乳糖不耐症だけど。

普通の紅茶だと、お茶の味が牛乳で薄まったようにも感じてしまうが、ルフナは違う。ミルクの中でもしっかりと甘みを押し出してきて、飲むたびに美味しいなぁと感じながら、一旦デスクに戻る。

「しかし、こんな素敵な紅茶でさえも、私の一時的な感情の消化に使われるなんて、かわいそうじゃないか。」

ふと、デスクに置いたミルクティー入りのマグカップを見て感じる。

「だって仕方がないじゃないか、ムキムキしたのだもの。」

そんな自分自身のやり取りに、カピバラさんのクッションをギュッと抱きしめてしまう。

何となく、上手く行っているようで上手くいっていない感覚がずっとある。何かを成し遂げても、すぐに欲が湧いてしまってキリがない。資本主義的上昇志向に毒されているんじゃない?そんな言葉がよぎるが、だから何なんだと自分の中で逆ギレが発生していたりもする。本当に、忙しい人だ。

ベランダのメダカは当初6匹いたはずが、気づけば3匹に減少していた。環境の変化と、猛暑の結果かもしれない。集落にいた時のような、独立した世界には程遠い現状に、今までの積み重ねを捨てて、もう一度やり直す気で環境を構築するべきだと感じた。

メダカは申し訳程度の枯れたミントの葉の裏に潜んでいる。そんな様子からも彼らが求めているものは明白なようにも思えた。

トクサって可愛いよね。

恐らく、今までの積み上げのような意識がどこかにあったのかもしれない。しかし、場所が変わればルールは変わるもので、自らの積み上げてきた体験や経験などは、その場のルールにおいては役に立たないことも多い。まぁ、何だかんだ言っても20代だしなぁ〜。

実家に舞い戻ってから、かなり意識してしまっていた田舎暮らし。たぶん、もう美化と言っていいほどのレベルに達していると思う。もうそろそろ、新しいゲームを始めても良いんじゃない?だってどんな場所にいても、結局は自分自身が一番の問題なのだから。

この記事が参加している募集

リモートワークの日常

100円からサポートを受け付けております。こちらの記事が気に入った方は、サポートして頂けると幸いです。よろしくお願いします!