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ゲームとことば#33「絢辻さんは裏表のない素敵な人です」

『アマガミ』のパッケージヒロイン絢辻詞の名言。
彼女にこの言葉を言われたら一字一句間違えずに復唱しなければならない。

決して誰にも見られたくなかった手帳の中身を、主人公に見られたと勘違いした絢辻は、普段の優しい優等生姿をかなぐり捨て脅し掛けるようにすごむ。
しかし、主人公は親切心から拾った手帳の持ち主を探った程度で、中身までは見ていない。
絢辻はそのことを知ると、今度は先ほど見せた自分の本性を他人にばらさないようにと、表題のセリフで主人公に念を押す。
学校での優等生キャラや姉に対するコンプレックスなど、様々な悩みを抱えた彼女のキャラクター性は、思春期特有の精神的な危うさとか、きつい言葉の裏に隠れた純粋な気持ちなどが現れていて好きだ。

ところで「裏表のない人」ってどういう人だろう。
それは素敵なことなのだろうか。

ここでいう「表」とは普段人前にさらけ出している人格で、「裏」はその逆だから誰にも見せない、もしくは限られた人にしか見せない人格などを指すのだろう。
しかし人間誰でも相手や環境によって自分を演出する。
それはたとえ家族や恋人であっても、その時その時で喋り方やさらけ出すパーソナリティが違うはずだ。
とは言ったものの、思春期のコミュニティはかなりデリケートだから、そう簡単には割り切れないのだろう。
おじさんになって久しいため忘れかけているが、若い時は「普段見えている相手の性格が、いつも変わらず同じでいてくれるほうが安心」していた気がする。
若さゆえの傲慢さ、というかなんというか。
そして少しでも嫌な部分を見たり、または見られたりするとコミュニティが破綻するのではないかと不安になるものだと思う。実際はそう深刻に考えるものでもないかもしれないのだけれど。

おじさんは、世の中には「裏表があっても素敵な人」がたくさんいることを知っている。
だからどうしたという話だが、ときどきふとそう思う。


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