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羨ましいステータスを持った全く羨ましくない人たち

「僕の幸せって何なんだろう?」と考えるようになったきっかけがいくつかあった。世間がどうとか周りの人がどうとか関係なく、自分は何に幸せを感じるのだろう?と。

その人たちはきっと日本人の大半が羨ましがるようなステータスを持っていた。僕もその人たちを最初は「羨ましい」と思ったし、今は覚えていないがもしかしたら軽く僻んだ瞬間さえあったかもしれない。

ただ、その人たちを知るほど失礼ながら「こうはなりたくない」と思ってしまった。僕が自分の幸せを探すきっかけになったその人たちの話をしていこうと思う。今回はその1人目だ。

※身バレ防止のため詳細は隠しています。

Aさんという人がいた。ジムで知り合ったその人はいわゆる兄貴肌で、僕をたまにいじりつつも何だかんだで気を遣ってくれた。Aさんは20代で年収1000万円を超えスポーツでも活躍し、結婚して都内に庭付き一戸建てを新築し、子宝にも恵まれお子さんたちもスポーツで活躍し週末はしょっちゅう家族で遊びに行き、周囲からの評判もよく家族ぐるみの付き合いの友人も多く夏はよくご友人家族とバーベキューをしたりしていた。

Aさんと出会ったときは僕はまだうつ病の治療中で、成功者を目指して必死に働いた結果うつ病になり仕事も失い、働き盛りに雨漏りするボロアパートで毎日のようにゴロゴロしていることしか出来ない自分を当時はゴミクズとしか思えなかった。

でもAさんはそんな状況の僕に「羨ましい…」と言った。ボソッと、疲れた顔で。

Aさんはうつ病を舐めているわけじゃない。僕がうつ病を明かしたときに、兄貴肌の世話焼きのAさんが「うちの職場にもいっぱいいますよ…」と言ってうつむいて立ち去った。何となく「この人はうつ病のリアルを多分知っている」と思った。

その後Aさんはうつ病について一度も触れては来なかったが「出世して家庭持って家建てて良い車に乗ることばかりが幸せじゃないですよ…」「早く結婚したことを後悔している…」「(僕が自分をゴミクズと蔑んでいた生活を聞いて)それでも、漫画家という夢のために生きているまるさんが羨ましい…」と僕に話した。そして「俺はうつ病にならないように気をつけている」とも。

その後Aさんが「海外旅行に行きたい」と話していたので僕は(今思うと無粋で申し訳ないが)「ご家族で海外ですか?良いっすね〜」と言ったら「いや、1人で行きたい。誰も知り合いがいない場所で1週間くらいボーっとしていたい」と、疲れた顔で無表情で言った。それ以上触れることはできなかった。

Aさんは多分大半の人が「羨ましい」と思うようなステータスをいくつも持っている。Aさんを成功者と呼ぶ人もたくさんいるだろう。賛否はさておき「男らしい」という言葉があるが、Aさんは正にその「男らしい」男だろう。前述の僕の生活と冒頭のAさんの生活と、どちらを目指すかと聞かれたら誰だってAさんの生活と答えるだろう。

でもAさんの幸福度はきっと高くない。僕にした話からして、多分本当は今とは全く違う生き方をしたかったんだと思う。今の全てがイヤというわけではないにせよ「こうしたかった」「こうなりたかった」という後悔ばかりなんだと思う。

最初は羨ましいと思っていたAさん。けど付き合いが長くなるにつれ羨ましいという思いは無くなっていった。むしろ「僕の幸せって何なんだろう?」と、兄貴肌でみんなを盛り上げる姿と疲れた顔で後悔ばかりを口にする姿とのギャップを見るたびに、僕は考えさせられた。

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