2019/1/22の日露首脳会談についての評価

日露首脳会談に関しての記事にひと通り目を通した。これといった進展は見られなかったという印象を持った。6月に平和条約締結に至るのは難しいのではないか。一方、島の共同開発や経済協力についてはさらに着々と進むだろう。

結局は従来からの立場を日本側は今も変えられずにいるのかもしれない。それは何かと言うと、「引き渡し」と「返還」という言葉に集約される。

ロシアの主張は「第二次大戦の結果、合法的にロシア領(当時のソ連領)になった」というもの。
それに対しこれまでの日本の主張は「日ソ中立条約を一方的に破って参戦して占領、不法占拠され続けている」というもの。

だからこそロシアは「引き渡し(譲渡)」と言い、日本は「返還」という言葉を使っている。これは似ているようでまったく違う。

1993年、日ソ共同宣言の有効性を確認した東京宣言、2001年には「四島の帰属に関する解決をすることによって平和条約を締結」するとしたイルクーツク声明。前者は「四島一括「返還」」、後者は「二島先行「返還」」。

2018年11月でシンガポールでの日露首脳会談で日ソ共同宣言を基礎にしての平和条約交渉の加速させることで合意した。こうした結果をもたらしたのは、文字通り「二島「引き渡し」」を日本側が認めたからだと私は推定した。それは以下の通り。

・「日ソ中立条約を一方的に破って参戦しポツダム宣言後に島々を占拠」というというこれまでの主張を撤回し、ロシア側の主張通り、「第二次大戦の結果、合法的にロシア領になった」ということを認めた。
・米軍基地問題に筋道をつけられた。

実際に「二島のみの引き渡し」という報道が多くなっており、日ソ共同宣言に記されていることを文字通り決着点として今回解決を図るのだなと。

その後の日露の外相会談は、第二次大戦の結果を認めろと強く言ってくるロシア側に対し、日本側は共同記者会見を拒否するなどはっきりとした明言を避けた。これは日本側がとうとう、ロシア側には「返還」ではなく「引き渡し」、つまりロシア側の言っている「第二次大戦の結果を認める」ことを受け入れたからこそ、共同記者会見を拒否したのだと確信を深めた。

ところがだ。今回はっきりとした発表ができなかったというのは、二島「返還」で手を打つことは認めたが、「引き渡し」という言葉の定義によって折り合いがつかなかった、つまりは「日ソ中立条約を一方的に破って参戦して不法占拠した」という従来からの立場を日本側が崩さなかったからではないか。もちろんその核心部分についてははっきりと明言されていないのでこれは推測にしか過ぎないが。

あともう一つ懸念されるのは、米軍基地をどうするかということだ。ここも実は決まっていないのかも知れない。

ただ、今回の交渉が事実上最後。今回を逃せば解決の筋道というのはほぼ永久に絶たれる。一つは各国の政権の態度。もう一つは旧島民の年齢。

現在、アメリカはロシア包囲網に消極的なトランプ政権。トランプが大統領の間ならば、日本ロシアアメリカと三カ国によって、軍事協定を結び日米安保がロシアを仮想敵とせず返還された領土に軍事基地を置かないと明文化したり、国後択捉のロシア軍基地をこのまま存続させることを認めたりといった決断も可能かも知れない。しかし、来年のアメリカ大統領選挙で民主党の候補が勝利すれば再びロシア包囲網が敷かれることになり、そうなると、その可能性はなくなるだろう。(このページを参考にしたhttps://diamond.jp/articles/-/191385?page=5)

旧島民の平均年齢はすでに80歳以上になっている。今回を逃し、10年20年経つと、旧島民が生きている内に日本領になる可能性はなくなるに違いない。

日本側の主張を曲げずに先送りしろという意見も多々あるが、それはそれで酷い話だ。

この問題、引き続き注視していきたい。


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