文字起こし「共同親権」国会 衆議院本会議採決 (2024/04/16)その3 道下大樹議員(立憲民主党)

立憲民主党・無所属の道下大樹です。会派を代表して、ただいま議題となりました民法等の一部を改正する法律案について討論いたします。法務大臣の諮問機関である法制審議会家族法制部会は、離婚後の共同親権導入などを巡り、3年近く議論、意見対立した末、民法改正要綱案を賛成多数で了承しましたが、参加委員21人のうち3人が反対、また慎重派異議の訴えにより追加した付帯決議は不十分な内容だとして、2人が反対しました。「家族法制部会長は全会一致が望ましかったが、今回は異論が残り、採決になった他、付帯決議も付けた事例だ」との所感を述べられました。
その書簡や反対棄権した委員の懸念は、残念ながら的中し、部会での審議内容やパブリックコメント、付帯決議は十分には反映されず、さらに関係府省庁間の事前協議や検討が不十分なまま、生煮え・玉虫色の民法等の一部を改正する法律案が今国会に提示されたと言わざるを得ません。
法定養育制度の導入などを行って評価する部分もありますが、この改正原案の肝である離婚後共同親権の導入は、「子の監護や進学、財産管理などを、離婚後も行使したい、親子交流を何とか実現したい」と期待する賛成派と参考人質疑で「この場に立つことはとても怖い、ですが、DV被害者の仲間たちの応援を受けて、国会で思いを伝えることに決めた」と陳述された、参考人のような反対派と意見や価値観が大きく分かれる非常に重たい法案であり、慎重な議論を進めてまいりました。
この生煮え玉虫色の原案に対して、我が会派は、委員会質疑で問題や懸念を浮き彫りにし、政府答弁で明確にすることによって、立法者の意思を国会政府の意思を築き上げてきました。この原案の重要部分である離婚後の親権については、共同親権、単独親権どちらも原則ではないこと、日本も批准しているハーグ条約は日本に共同親権の導入を求めるものではないこと、偽装DVであるとか、不当な子の連れ去り略取誘拐だと、一方の親を罵り犯罪者扱いすることは、人格尊重義務を損ねること、親権者を単独にするか共同にするかと親子交流とは別物であること、父母双方の合意がない場合、裁判所が共同親権と認める場合が極めて限定的であることなどが、答弁で明確になりました。
また、急迫の事情の例として、入学手続きやDV避難、緊急の医療行為、モラルハラスメント、中絶手術などが挙げられることや、監護および教育に関する日常の行為の例として、子の心身に重大な影響を与えないような治療やワクチンの接種、習い事の選択やアルバイトの許可などを挙げた答弁が出ました。海外では共同親権を推進し、親子交流の実施など法改正をしましたが、実はそれによって別居親が子を殺害するなど、子と同居親の生命身体に深刻な事態を生じさせることが多発、葛藤的な共同養育、コペアレンティングは子と同居親に悪影響を与えました。
離婚が子供や当事者に及ぼす長期的影響に関する権威であるアメリカの心理学者、ウォラステイン博士が最も訴えたかったことは、裁判所の命令のもとで、厳密なスケジュールに従って均等的・強制的に行われる親子交流は子の成長に有益どころか有害であること、子供の心身に取り返しのつかないような事態を生じさせるということでした。
近年、多くの国々は、共同親権ペアレンタルオーソリティから共同監護、ペアレンタルカスタディ共同養育、そして親責任、ペアレンタル・レスポンシビリティへと改正しています。日本だけ一週遅れで共同親権を導入しようとしていることを英語訳で説明し、明確化しました。
それでもまだ問題や懸念は残っています。裁判所が親権の指定または変更について判断するに当たって、子の意見表明権の規定がありません。共同親権下でも、親権の単独行使ができるとする急迫の事情とは、どれくらい差し迫った時間的範囲を指すのか。監護および教育に関する日常の行為とは何が当てはまるのかは依然として曖昧です。監護者の定めを義務付けないデメリットや子への支援が遅延が減少する不利益となる恐れ、協議離婚により共同親権を選択する合意型共同親権であっても、DV虐待、父母の葛藤が激しいケースが紛れ込む危険性、裁判離婚で裁判所がDV被害を認定せず、父母双方を親権者と定める非合意型共同親権が父母一方を危険にさらすリスクが高まる可能性、また離婚前後と協議中の相談支援体制の整備が不十分なまま、法施行のみが先行してしまうことの危惧もあります。共同親権を巡る裁判や調停が新たに発生しますが、家庭裁判所の裁判官および調査官などの人員、施設体制は、今でさえ十分と言えません。
現行の親子交流では、家庭裁判所による決定により、別居親と親子交流を嫌がる子供を無理に親子交流させているケースもあります。養育費や同居親の親権のために我慢して傷つく子供が現れないよう、適切な親子交流の実施について検討が必要です。
養育費の公的立て替え払い制度が実現できなかったことも課題です。そこで、我が会派は、様々な問題点や不安、懸念を払拭すべく、11項目に及ぶ修正項目案を与野党に提示・提案し、交渉を重ね、合意した修正案は、我々の案を全て反映したものとは言えませんが、最低限盛り込まれたものであり、原案のまま運用されることによって生じる被害を少しでも軽減できると判断しました。
修正案は、子の監護者の指定の重要性について、父母が理解と関心を深めることができるよう、必要な広報啓発活動を行うこと、急迫の事情や監護および教育に関する日常の行為の意義など、趣旨内容について国民に周知を図ること、協議離婚における親権者の定めが、父母の双方の真意に出たものであることを確認するための措置等を講ずることなどが内容です。特に協議離婚における共同親権同意の真意の確認措置を明記できたことは大きな成果です。我が会派も提示した付帯決議は、政府および最高裁判所に、様々な事柄について格段の配慮を求めています。必要に応じて、法改正を含む更なる制度の見直しの検討、急迫の事情、日常の行為、子の監護の分掌等について、ガイドライン等で明らかにすること、子の意見の適切な反映、子の家族の安全や安心への配慮、養育費の受給等適切な実施や、公的立替払制度の検討、家庭裁判所の人的物的体制整備、DVや児童虐待の防止に向けた、加害者プログラムの実施推進、居住地等がDV加害者に明らかになること等によるDV被害、虐待・誹謗中傷、乱訴等の被害発生回避措置の検討、子に不利益が生じないよう、税制、社会保障、社会福祉制度等において関係省庁が連携して対応することなどがその内容です。
急迫の事情、日常の行為のガイドライン等を決める場合、関係省庁のみの閉鎖的な環境で議論策定するのではなく、当事者を含めて外部の意見を取り入れ、公開された中で策定されることを強く望みます。(拍手)。
我が会派が修正合意したことに批判を受けていることは事実です。批判をされる方々は、我々と法案の問題点を指摘しあった方々本当につらいです。法案に反対の姿勢を貫いてほしいという気持ちもよくわかりますし、その方が潔いでしょう。党内で賛否に悩む議員も多くいます。私もそうです。今もなお恐怖に怯えながら生活しておられるお子さんと、DV被害者の方々の気持ちを思うと胸が締め付けられます。
ただ、この原案に反対を貫いたままだったら何が起こるのか、とても怖いものがあります。今の政府や一部の政党議員に勝手なことをさせてはならない。我が会派が粘り強く関与し、家族法制度の運用に好影響を与え続けることが不幸になる人を少しでも減らせると判断し、ギリギリの選択をしました。
立憲民主党は、この法案が少しでも良くなるよう、参議院審議でも尽力するとともに、政府法務省並びに最高裁判所が、委員会審議における質疑答弁、原案に対する修正案、付帯決議で示された方向性や意味合い、我々の真意をきちんと理解して、今後の調停審判に臨み、適切に法制度を運用措置するよう、立法府としての監視機能を働かせていきます。そして、改正法の問題懸念を完全に払拭するため、今日告示された衆院3補選で勝利し、後に政権交代して法改正をすることを実現することをお約束いたします。その思いを胸に、本法案に対する賛成討論を終わります。(拍手)

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