見出し画像

「ギター用材の質について」「ラインで(ピックアップを使って)音を出すこと」

「終活ギター アコギ庵」「アコギ弾き比べサロン アコギ庵」です。
 アコギ一筋54年。アコギの終活をやろうというオッサンが、《何かアコギ好きのためにできることはないか?》というところからスタートしました。アコギ好きのための”Support and Assist”を目標に、何かしらお役にたてることがあればいいなと思っています。
 そうそう簡単に弾くことができないと思われるギターも、何本か用意しています。初心者の方用、中級者用のギターもあります。とにかく来て弾いていただいて、そこから何かが始まることを期待しております。アコギ好きの皆様とお話しすることを楽しみに、お待ちしております。

「ギター用材の質について」
 もう何年も前から感じていたことで、ことあるごとに話もしてきました。アコースティックギターに限られたことではありませんが、使用されている材料の質は間違いなく落ちてきていると思います。昔は潤沢にあった材料が枯渇してきていることは、かなり以前から指摘されていました。そのことがワシントン条約に繋がり、木材等の値上がりの一因になっているのは皆様もご承知のことと思います。このことがハカランダ等の希少材の価格の高騰、しいてはヴィンテージギターの価格の高騰につながっています。以前はほとんど聞かれなかった木材の名前も、今では当たり前になってきました。マダガスカル、ボンジュラス、グアテマラ等のローズや、ウェンジ、グラナディロ、ココボロ、ジリコーテ、アフリカンブラックウッド等々、調べればもっと出てくると思います。これらの木材は、自分がマーチンやギブソンに興味を持ちはじめた頃(1970年代)には聞いたことがないものばかりです。マーチンがサイド・バック材をハカランダからイーストインディアンローズウッドに変更して行き、その後指板材やネック材までがどんどん変わっています。最近ではイーストインディアンローズウッドという名称さえ、ほとんど聞くことがなくなりました。

 過去に載せたかもしれませんが、『現代ギター1992年6月号』の中のギター製作家 河野 賢さんの記事です。今から31年以上前の話ですが、この時点で「値上がりが一番激しいのはハカランダで、次がドイツ松(ジャーマンスプルース)。これらはこの数年間に2~4倍になった。」ということが書かれています。

 少し前のことですが、知り合いのビルダーの方のネック材の仕入れに同行させてもらう機会がありました。
 その際、ホンジュラスマホガニーとアフリカンマホガニーを購入されたのですが、私には全く見分けがつきませんでした。どちらもかなり良質の材だったようで、そのビルダーがアフリカンマホガニーを見て「これ、市場ではホンジュラスとして売られている材ですよ。」とか言っていました。おそらく似たようなことは、トップやサイド・バック、その他の材でもあるのだろうなと思います。産地名で全てが決まるわけではありませんので(結局は出来上がった状態、その音で判断します。)、一つ一つの名称にあまり目くじらを立てても仕方がないのかもしれませんが・・・。心配なのは、はっきりと材の質を見分けられる人がほとんどいないということです。ですので、実際には越の材料だったのに、名前だけが独り歩きしてしまいそれをうのみにして買ってしまう人がいるかもしれないということです。
 音で納得して買うのであれば、そんな心配はいらないお世話なのかもしれませんが・・・。
 
 最近はアコギの世界にも新しい技術がどんどん導入されてきています。その最たるものがマーチンのVTS(Vintage Tone System:木材に熱と圧力による特殊な加工をすることで、木材のもつ振動特性や音の伝達力が高まり、ビンテージライクな音響特性を再現)やヤマハのA.R.E. (Acoustic Resonance Enhancement:ヤマハが独自に研究・開発した木材改質技術。 ギターのボディ材にこの技術を施すことで、長年弾き込まれたような豊かな鳴りを実現)ではないでしょうか?
 そのほかマーチンのD-28だけを調べてみても、細かい仕様変更がびっくりするほど何度も行われています。技術的な進歩も含まれているとは思いますが、少し視点を変えると材料のクオリティが下がってきたことをカバーするために行われている変更ではないのかな?と考えてしまう自分がいます。


「ラインで(ピックアップを使って)音を出すこと」
 音楽シーンの変化で、求められるアコースティックギターのサウンドが変わってきているということもあるのかもしれません。音響機器の進歩もありますが、ラインで音を出すことが飛躍的に増えたと思います。アコギ用のピックアップも進化したと思います。私がピックアップを使い始めた頃のサウンドは、ほとんどエレキと変わらないような感じでした。

1985年頃(ギターはYAMAHA L-53 1977)
1986年頃(ギターはMARTIN D-41 1972)

 当時バンドを組んでいて、ライブをする時どうしてもマイクで生音は難しかったので仕方なく使っていました。音は好きにはなれませんでしたが、バンドとしては演奏が楽になりましたね。この”演奏が楽になる”というのは、ものすごく大きなポイントでした。弾き語りやバンドでアコギを使う場合は、圧倒的にピックアップを使う方が楽ですよね。マイクで音をひらう場合、動くとマイクとギターの距離が変わってしまい音の強弱にムラが出てしまいます。その点ピックアップは、動きに左右されないという利点があります。YAMAHA L-53にはDean Markley、MARTIN D-41の方は、覚えていないんですがDeArmondだったかな? この2本以外にYAMAHA L-54にもK,Yairiのエアーシステムをつけていました。

1985年頃(ギターはYAMAHA L-54 1978)

 この頃はまだヴィンテージの世界に足を踏み入れる前で、ピックアップに関しての音質云々はまったく考えていませんでした。マイクの位置を気にせずに弾ける!それだけです。そのせいもあるかもしれませんが、それぞれのピックアップにそれほど差は感じませんでした。
 後にフィンガーピッキングをやり始め、より繊細な響きや小さなアタックに対するレスポンスを気にするようになりました。その頃から少しずつですが、ピックアップの音質というものを考えるようになって行ったと思います。最終的にはライブのメインで使っていたGREVEN(D-HBDX)に、M-factoryのピエゾだけを装着しました。ライブでは主にマイクをメインで(7~8割)音を録るようにして、ラインで補正するというやり方でした。

 実際のところ、ライブでギターの音をラインで出す方のほとんどは「音が良いから」ではなく、「楽だから」ではないのでしょうか?これは演奏者だけではなく音響さん(オペレーター)にとっても同じです。ひょっとしたら演奏者以上に音響さんの方が「この方が楽だ」と思っているかもしれません。特にアマチュアの方の場合は、まともなリハーサルなどしないことがほとんどです。(十分な時間を取ってリハをすることは、まずないでしょう。)つまり、時間との戦いになってしまう訳で、ラインに流れてしまうのはある意味必然なのかなとも思います。音質にこだわって時間を取ってしまうと、周りの顰蹙を買うことになりかねません。
 そんな中でも、フィンガーピッキングをやっているアマチュアの方は少し違うと感じています。ほとんどがラインでエフェクターを通して音づくりをされているようで、自分なりのこだわりをもっておられるのでしょう。機材等にもお金をかけておられるように思います。
 全部が全部そうだとは言えませんが、フィンガーピッキングをやっている方とそれ以外の方では、概ねそのような傾向に分かれるのではないかなと思っています。

 拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。 またアコギに関する相談等がございましたら、どんなことでもOKです。遠慮なくお尋ねください。
 アコギ庵は「ギターを弾いてもらって、ゆっくりアコギの話をする。」そんな場所です。勝手ながら、完全予約制で運営させていただいております。
お手数ですが、まずはメール、もしくはメッセージでご連絡をお願いいたします。
宛先 e-mail:mail@acogian.com または twitter(@acogibucho)にお願いします。
 FACEBOOKのページもあります。こちらにメッセージを送っていただいてもかまいません。よろしくお願いいたします。



 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?