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「Martin D-35の話」「Martin D-28とD-35、70年代以降の価格について」

 「終活ギター アコギ庵」「アコギ弾き比べサロン アコギ庵」です。
 アコギ一筋54年。アコギの終活をやろうというオッサンが、《何かアコギ好きのためにできることはないか?》というところからスタートしました。アコギ好きのための”Support and Assist”を目標に、何かしらお役にたてることがあればいいなと思っています。
 そうそう簡単に弾くことができないと思われるギターも、何本か用意しています。初心者の方用、中級者用のギターもあります。とにかく来て弾いていただいて、そこから何かが始まることを期待しております。アコギ好きの皆様とお話しすることを楽しみに、お待ちしております。

「Martin D-35の話」
 Martin D-35に関して、ずっと思っていることがあります。それは、"新品の時はD-35の方が価格が上なのに、ヴィンテージや中古はD-28の方が高くなっている"ということです。同じことを感じている方、考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 これはひとえに"D-28の方が人気がある"ということの現れだと思っています。個人的にはそれぞれ別の魅力があり、どちらも好きなので甲乙をつけることはできませんが。

 D-28と比べてD-35はその歴史も浅く、全体的に見れば、当然使用しているミュージシャンも少ないでしょう。自分の持っている勝手なイメージですが、日本の中ではブルーグラスを除けばD-28をメインで使っているミュージシャンはあまりいないように思います。D-28=ブルーグラスで使うギターというイメージがあります。これに対してD-35は、イルカさん、若い頃の吉田拓郎さん、アリスの堀内孝雄さんなどが使われていて、主に弾き語りで使われるギターというイメージを持っていました。当時はそれぞれの音の違いなど全く知らず、単純にルックスと数字(28よりは35,35よりは45と言う感じです)だけで「D-35の方がええなぁ〜。」と思っていました。その要因の一つには、指板に巻かれている白いバインディングがあります。D-28にはなく、D-35にはありました。(D-45やD-41には白いバインディングが巻かれており、当時はそれだけで何かしらの高級感を感じていたものです。)

Martin D-35 1966
Martin D-35 1966

 一時はフィンガーピッキングを頑張って練習していた時期もありましたが、基本的には弾き語りをメインにやってきました。初めて手に入れたMartinはD-41、その次にD-28の順でしたが、いずれも1970年以降のものでした。2本目がD-28だったのは、アコギのスタンダードとしての地位を確立させており「1本ぐらいは持っていないとアカン!」という思いがあったからでした。そして、初のMartinのヴィンテージは、1967年製のD-35です。このギターを手に入れて使うようになってから(メインで10年ほどライブに使っていました。)、使うほどにD-35の魅力にハマっていきました。弾き語りには、間違いなくD-28よりもD-35の方が合うと思います。今もその思いは変わっていません。うまく言葉で表現するのは難しいですが、ヴォーカルのジャマをしないという点ではD-35の方が良いでしょう。D-28と比べると少し音が丸いように(角が取れたような音、エッジがD-28ほど立っていないように)感じます。違う言い方をすると、ヴォーカルの前に出て行かない鳴り方とでもいうのでしょうか?これに対してD-28の方はD-35と比べると、よりヴォーカルよりも前に出て行こうとするような鳴り方ではないかなと思います。

Martin D-35 1967
Martin D-35 1967

 あくまでも個人の勝手な感想なので、D-28を弾き語りに使わない方が良いという意味ではありません。現にD-28を弾き語りに使っている方もたくさんおられると思います。またそれぞれ個体差がものすごくあるので、全てを「こうだ!」と決めつけるのは無理があります。

 自分が過去に所有したD-35は7本。年代的には1966年から1976年まででした。サイド・バックがハカランダのものは3本。66年が1本、67年が2本でした。1970年以降のものは、71年、73年、74年と76年。このうち76年は今も手元にあります。
 66年と67年は少し違うサウンドでしたが、67年の2本はよく似ていました。70年代のものはそれほど差がなかったように記憶しています。60年代と70年代では、そのサウンドは大きく違っていました。やはりハカランダとローズウッドの差は大きいなと、弾き比べるたびに感じていたものです。サイド・バックがハカランダのものは65年から69年までの4年間しか製作されていませんが、その途中でもトラスロッドやブリッジプレートが変更になっています。それが微妙にサウンドの変化を創り出しているのかもしれません。小さなことですが、それも価格に反映されているようで、少しずつ差があることを感じています。これに対して70年以降のD-35は、D-28ほど価格に大きな差はないようです。

Martin D-35 1976
Martin D-35 1976


「Martin D-28とD-35、70年代以降の価格について」
 まずはD-28の話から。
 70年代と言っても、前半であればもう50年ほど経過しています。それよりずっと古いヴィンテージと比べると、「枯れている」という感覚はありませんが、「ヌケてきている」というのはあります。その部分は新しいギターにはないもので、きちんと価値として価格に表れているように思います。特に70年代の前半のものは高く、50万円以上のものも珍しくなくなってきました。それでもまだ、アメリカの価格よりは安いと言えます。5,000ドルを超えるものも珍しくありません。

 長い間自分の中では、70年代の前半のものが68〜69年の半分ぐらいという感覚でした。その基準でいけば、70年代前半は50〜75万円ぐらいの価格になります。それぐらいでやっと、アメリカの価格並みです。なので、個人的には70年代のD-28は、もう少し高くなっても不思議ではないなという感覚で見ています。

 D-35については概ね同じような印象ですが、70年以降の価格がD-28に比べて安いものが多いので、こちらの方がお買い得感があるのでは?と思えてなりません。価格は需要と供給の関係で成り立つものなので、市場価値としてはそれほどでもないのかもしれませんが・・・。

 D-28もD-35も80年以降のものには、価格差があまりないですね。ショップによっては80年代のものでもヴィンテージの範疇に入れているところもあるようですが、あまり価格には反映していないように思います。

 最近の価格を大まかな年代別で仕分けると、1969年以前、1970年代、1980年以降、のような区切りができているように感じています。69年以前と70年代の差は非常に大きく、70年代と80年以降とはそれほど大きな差はありません。世界的な材料の枯渇によって、使われている材料そのものや、質がかなり変わっています。そのことを考えると、自分の勝手な判断ですが「古いものの方が良いのではないかな?今だったら70年代ってお買い得?」と思えてしまいます。

 拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。 またアコギに関する相談等がございましたら、どんなことでもOKです。遠慮なくお尋ねください。
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