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アコギ回顧録 Vol.31 「ついにインストをやり始める」「ギターサウンドとギターミュージック」

 ギターを道具(弾くもの、使うもの)として捉え、プレイヤーの視点から見た良いギターとはどのようなものか?その答えを追い求めて50年余り。所有したギター本数も3桁に届くぐらい?!
 その答えと言えるかどうかわかりませんが、過去~現在を振り返って自分なりの考え方をまとめてみようと思いました。アコギ好きの方、興味のある方にとって、少しでもお役に立つことができれば幸いです。

「ついにインストをやり始める」
 ついに自分でもインストを弾いてみようと思い始め、中川イサトさんの教則ビデオ 「Shadowy Key」を買って練習し始めました。この曲をどうにかこうにか弾けるようになってからは、だんだんとインストへの興味が大きくなっていきました。次にまたイサトさんの教則ビデオ「Stray Cat Two-Step」を買い、頑張って練習しました。その後イサトさんのCDやタブ譜、岡崎倫典さんのビデオによる通信講座などを経て、ある程度フィンガーピッキングのことがわかるようになっていきました。神戸のヒロ・コーポレーションにも相変わらず足しげく通っていましたので、そこからもいろんな情報を教えてもらいました。

「Shadowy Key」と「Stray Cat Two-Step」You tubeにありました。
https://www.youtube.com/watch?v=psNXwWTHdjg
https://www.youtube.com/watch?v=2VxI72XHrwM&list=RD2VxI72XHrwM&start_radio=1

 贅沢な話ですが、ギターがたくさんあったので常に3本ぐらい出して別々のチューニングにして置いておき、とっかえひっかえ練習していました。途中で挫折した曲もありましたし、何とか弾けるようになるまで1年ほどかかった曲もありました。
 しかしそれだけ頑張って覚えた何曲かのインストも、ライブの前にはまったく弾かなくなります。自分たちの曲(もちろんインストではなく歌モノ)を思い出しながら練習しなくてはならないので、そっちに集中している間にどんどん忘れていってしまいました。あれだけ苦労してやっと弾けるようになったのに、それをまた一から練習する気にもならず・・・。
 それでもフィンガーピッキングをやり始めたおかげで、ギター音楽によって必要なサウンドが全く違うものであるということを始めて実感できたと思います。ある意味泥沼にハマって行くと言っても間違いではないのですが、ギター好きならそうなってしまうのも仕方がない事だと思います。

 この頃GREVENやSomogyiは一般のギターショップではほとんど見ることができませんでした。(まれに平行輸入されたものが出てくる程度。特にSomogyiは製作本数も少なく、高価でした。)GREVENは中川イサトさんがメイプルのSJ(カッタウェイモデル)を使ったことで、フィンガーピッキングの世界では少し知られていたかもしれません。後に押尾コータロー君の登場で有名になり、かなりの本数が市場に出ました。今でも押尾君のモデルは高い人気を維持しているようです。
 一方Somogyiは、1991年に火事で工房が全焼、そのあと2年ほど製作が中断します。この時点で年間製作本数の平均は、10本に満たないほどでした。(年間5~6本の時もあったようです。)約2年のブランクの後、1993年に製作を再開した時にはまったく別物のギターになっていました。ここから10数年の間、信じられないほどのサウンドの変化を見せてくれます。新しいギターが出来上がってきて、それを弾かせてもらうたびにその変化に驚かされました。いずれもハイエンドと呼ぶにふさわしい、高い次元の変化でしたが。
 Somogyiギターの話はまたいずれ、何らかの形で詳しくお話しできればいいなと思っています。

今回の写真は、ハカランダのド柾目シリーズ。Firlds Ⅾ 1996年製です。

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「ギターサウンドとギターミュージック」
 そんなこんなで徐々にフィンガーピッキングの世界にはまっていったのですが、フィンガーピッキングの楽曲を知れば知るほど(オープンチューニングのことを知れば知るほど)、だんだんとギターに要求されるサウンドについても考えるようになりました。それまではやはり定番であるマーチンのヴィンテージが一番良いと思っていたのですが、だんだんと「そうではないな」と思い始めました。マーチンのヴィンテージが悪いというのではなく、もっとそういった楽曲に合ったギターがあるということを考え始めたからだと思います。
 ギターサウンドは、ある意味その時代の音楽の要求によって進化してきたのではないかと思っています。MARTINを一つの例として考えてみても、それは間違いないことでしょう。より大きな音量が必要になってドレッドノートが生まれ、より太い弦を装着するためにスキャロップド・ブレイシングがノンスキャロップに変わる。その後PAやピックアップの進化により、大きなボディは必ずしも絶対的な要素ではなくなってきている。これは概ね間違いない事実であろうと思います。

 最近ではフィンガーピッキングの中でも、そのサウンドはもっと多様化してきています。マール・トラビスやチェット・アトキンスのような古くからあるスタイルからマイケル・ヘッジス、タック・アンドレス、ピーター・フィンガー、ピエール・ベンスーザン、トミー・エマニュエル、最近ではエリック・モングレイン、マイク・ドーズ、アレキサンダー・ミスコ等々、本当にほんの一例ですが様々なスタイルがあります。今はまだプレイヤー自身もそれぞれのギターミュージックに合うギターサウンドを模索しているところかもしれません。

アレキサンダー・ミスコの動画の一つです。
https://www.youtube.com/watch?v=dUROuB6ysnY

スタンリー・ジョーダンを知っている方には、それほど新鮮ではないかもしれません。1985年の映像です。
https://www.youtube.com/watch?v=2gvdX-wfPXw

 最近は(年齢のせいもあるのかもしれませんが)、エフェクターを通したアコースティックギターのサウンドがやたらと“電気の音”に感じてしまう自分がいます。ギタリストがそれぞれの楽曲を演奏する際に、本当に適切なエフェクトでその曲の持つ世界観を表現しているのか?ということをすぐに考えてしまいます。明らかに生音とは違うサウンドになるので、新鮮で面白いとは思いますが・・・。曲によっては「本当にそのエフェクト、必要?」と思ってしまうような楽曲もたくさんあります。フィンガーピッキングプレイヤーの皆さん、もう一度原点に立ち返ってアコースティックギターのサウンドを考えてみてもいいんじゃないか?と思う今日この頃です。

Fields F-RC 1996年製

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