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アコギ回顧録 Vol.25 「神戸へ、運命の出会い」「恐る恐る」

 ギターを道具(弾くもの、使うもの)として捉え、プレイヤーの視点から見た良いギターとはどのようなものか?その答えを追い求めて50年余り。所有したギター本数も3桁に届くぐらい?!
 その答えと言えるかどうかわかりませんが、過去~現在を振り返って自分なりの考え方をまとめてみようと思いました。アコギ好きの方、興味のある方にとって、少しでもお役に立つことができれば幸いです。

「神戸へ、運命の出会い」
 D-45LEに物足りなさを感じ、どうしても満足できないまま心の中では「やっぱりマーチンは1969年以前のものを探さないとダメなんかなぁ?」と思っていました。そしてとうとう、1968~1969のD-45を探し始めることになります。
 その時東京のK瀬楽器店に1本あり、自分のD-45 1976を持って行って弾き較べたりしました。音は良かったのですが値段がべらぼうに高く、買うことができませんでした。(無理しても買っておくベキだったかも?)このD-45は、今もK瀬楽器店に飾られている再生産の第1号ではなくまったく別のD-45です。 今思えばエンプロイーモデルで、全体に茶色く着色されており一目で普通のD-45とは違うことがわかりました。買っておけばかなりの希少価値があるギターだったかもしれません。マジで音は良かったです。

 そんなとき仲良くしてもらっていた京都の楽器屋さんから「神戸にすごい店があるらしいでぇ。マーチンやギブソンのオールドを探すのだったらその店が一番ええのんとちゃうか?」という話を聞きました。今思えばずいぶんアホな話ですが、次の休日には店の名前も場所も何も知らないまま神戸へ向っていました。

 何のあてもなくとりあえず三ノ宮へ行き、ひたすらギターショップを探して歩きました。しかし歩けど歩けど目指す店は見つからず(当たり前の話ですよね)、このままでは京都へ帰れへん。何とか探さんといかん!という訳で電話ボックスに入り、電話帳で楽器屋さんを調べて片っ端から電話しました。多分京都の楽器屋さんが言っていたのは「マック・ヤスダ」の店のことではなかったかと思うのですが、別の店で「オールドならたくさんありますよ」と言ってくれたお店がありました。電話で場所と行き方を教えてもらってその店に向いました。

 とりあえず指定された地下鉄の駅まで行きその周辺を歩き回りましたが、土地勘がまったくないところでしたので見つかりませんでした。どうしようかなと思いましたが、すでに2~3時間はうろうろしていたのでこのまま帰るのもしゃくだということ再度そのお店に電話して場所を確認しました。そんなこんなでやっとその店にたどり着き、ドアを開けました。

ヒロ ロゴマーク

 この瞬間から自分のギター人生が変わったと言っても過言ではありません。それほど衝撃的な出会いが待っていました。

ヒロカタログ①

ヒロカタログ②

当時のHIRO CORPORATIONのカタログ、中はこんな感じ。

HIROカタログのコピー


「恐る恐る」
 JR三ノ宮駅を降りてから約4時間、探しに探してやっとそのギターショップにたどり着きました。そこはビルの一室で、ギターショップの雰囲気など微塵も無い、まるで会社のオフィスのようなところでした。「えーっ、こんなとこで大丈夫やろか?ホンマにギター置いてあるんかいな?」それがドアの前に立って感じた正直な印象でした。そして・・・ついにドアを開けました。

 その頃の自分は東京へ何度も行ってマーチンやギブソンのオールドを相当数弾いていたこともあり、アコギに関してはかなり自信を持っていました。(今思えば本当に“井の中の蛙”そのものでした。お恥ずかしい限りです。)

 ドアを開けてまず驚いたのは、飾ってある(外に出してある)ギターが1本も無かったことでした。ギターはすべてハードケースに入れられ、スチールの棚に2本ずつ整然と並べられていました。外からはケースの中にどんなギターが入っているのかまったくわかりません。「なんやここは?なんでギターが無いんやろ?どんな店やこの店は?」
 最初にどんな話をしたのかまったく覚えていませんが、とりあえず1968~1969のD-45を探していることを伝えました。今在庫でその年代のD-45は無いけど、入荷したら連絡してあげるよ。けど価格的には同じぐらいで戦前もののOOOー45が買えるし、そっちを買ったら?」と言われました。今から思えば夢のような話ですが、どちらも程度が良いもので大体150万円ぐらいとのことでした。(昭和62~63年頃のことだったと思います。)

 あちこち探してなかなか見つからなかった1968~1969のD-45が「時間さえもらえればいいものを探せますよ。」と言われ、なかば半信半疑で聞いていました。何もかもが今まで自分が接してきたギターショップと違っていました。

 どんなギター探しているのか?の次に尋ねられたのは「どんなジャンルの音楽をやっているのか?」でした。それはプレイするジャンルやスタイルから最もそれに適したギターを選択するというプレイヤーにとっては当たり前で非常に大切なことですが、ギターショップでそういう風にアプローチされたことはありませんでした。

 また一般市場で売買されているギターのほとんどがきちんとセットアップされておらず、ほとんどプロユースには耐えられないということも初めて言われました。マーチンでさえ新品であろうがオールドであろうがほとんどピッチが合わないし、ナット、サドル、フレット、指板なども調整したり交換したりしているとのことでした。マーチンのオールドを探しに(買いに)行って、まさかそんな話をされるとは思いませんでした。

 このとき、最終的にはこの店で取り扱っているギター(オールド、新品を問わず)は完璧に近い状態にセットアップされているし、後々のアフターフォローも全責任を持つと言われました。しかし自分もすでにアコギのこと、アコギの音のことに関しては相当自信を持っていましたので、簡単には納得できませんでした。

 『なんや、結局自分の店のギターを売ろうとするためのセールストークか?』と言う感じで受け止めてしまっていました。

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当時の店内の様子。ギターは1968年のD-45と70年代のD-45。

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D-28 1946年、ヘリンボーンです。当時はこんなギターがゴロゴロありました。

 拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。
 またアコギに関する相談等がございましたら、どんなことでもOKです。遠慮なく聞いてみてください。
宛先 e-mail:mail@acogian.com または twitter(@acogibucho)にお願いします。

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