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【244/252】新世界へ

こんな夢を見た。
はやりの異世界転生もの、ではなくひと昔前のタイムスリップものだったのは、昭和生まれのゆえか。
詰襟すがたで、茫然とたたずむ。目の前は、焼け野原。ずっと信じていたひとは、神様でなく人間だった。ぼくは、これから一体どうすれば。言葉になった懊悩が脳裏をよぎるかよぎらないかで、時間を飛び越える。
着いたのはまさに今ここ、2021年。世の中は、何もかも失った昭和二十年の夏に負けず劣らず荒れていた。なにより、上に立つ人間の心が。
これはきっとぼくたちにも、責任がある。あの夏、何もかもを奪われてそれでも立ち上がったけれど、それは素晴らしいことだけれど、少しだけ目を逸らしたことがあった。見えないふりして理想をまっすぐ信じて突き進んだ、そのことのひずみが、この時代のゆがみの一部を担っている。
自分の哀しみ、自分の喜び、自分自分自分。
きっとそこを、越えていかないといけない。
絶望のはてに、立ち上がる。そこで、76年前に無事に戻った。
最後はなぜか国会議事堂で一席ぶって、GHQとの交渉の席に着く役目を負うところで、目が覚めた。さすがにそれは夢すぎるなと思ったけれど、おそらく依代が17歳であることに意味があった。
過食症になったのが、その年齢。昔、占いでも、17歳のときに何かあったのと尋ねられたことがある。我と我が身のターニングポイントでは、あった。
それにしても、夢見のお医者が腹を抱えて笑うくらいにはわかりやすい夢で、本人もめざめて、
ちょっと笑った。
行きっぱなしでないのが、面白い。気づきを抱えて心機一転、新天地で生きるのでなく、どうやら焼け野原に戻ってきたい。
忘れたいことは、たくさんある。なかったことにしたいのも。
それでも、ここがいいのか。
古びた世界と傷んだからだを抱えたまま、顔を上げて前を見る。



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