aubeは面白い

このタイトルをつけるのにずいぶんと悩んでしまった。

でも結局
aubeは面白いのである

ジャグリングを切り口とした舞台公演が2010年頃から立ち上がり、2019年までに複数回の公演を経た実力のある団体がいくつか存在する。

aubeは、その筆頭の一つで稲葉悠介が率いる団体である。稲葉は JJF チャンピオンシップで活躍した早稲田インフィニティのシガーボックスチーム「アーロンチルドレン」のメンバーの1人である。

アーロンチルドレンの頃から、アクロバティックな動きを多用したり、ときにコミカルに動いたり、俳優っぽさあふれたケレン味のある「目立った」イケメンだった。それは彼自身のセルフプロデュースというかサービス精神というか、そういうものから出ている作られたキャラであった。

aubeは面白い。ジャグリング + 舞台で、どちらかと言えば演劇が主だ。というか8割は演劇だ。笑いあり、涙あり、歌あり、踊りあり、アクロバットあり最近の流行を全て取り入れている。

例えるなら aube の作品はハリウッド映画なのだ。掛け値無しに面白い作りで、演出は明るくわかりやすく見やすく良くできている。

世の中一般で、ハリウッド的というと、深みが浅く軽薄である、という含意がすこしあるのが否めない。学園祭や定期公演などで学生団体がやるハリウッド的な「明るい」作品では残念ながらやはり薄っぺらい感のあるものによくあたる。なんかいいなと思った断片をもってきて噛み砕かずに再現し、やっている側だけ悦に入る。そういう薄っぺらさがハリウッド的と呼ばれるものを定義づけてしまっている気がする。いっぽう、少し薄暗く、難解で、抽象的で、ヨーロッパ的で、わかりづらい、名前を挙げればながめくらしつのような舞台公演もある。この二つは、ほんとうに対極にあって、そして、なんとなくわかりづらいものが偉いようなそんな空気があったりもする。

aubeは面白い。僕自身の趣味はどちらかといえば薄暗い方だ。じっくり深読みしてなんとなく伝わってくるものを楽しみたい気持ちが強い。
でもaubeは面白い。

なぜなら aube は突き抜けている。その舞台にはいつでも流行りの技術、演出、プロットが全部入っている。それがすごい。そうしてごた混ぜにこれはというものを全部入れて一つの作品として矛盾と破綻なく綺麗で完璧に作られているのだ。簡単に言えば完成度が高い。覚悟を持って「エンターテインメント」に振り切っている。そこがちゃんと突き抜けているのだ。どこかで見たお決まりのパターンを徹底的に本気でやっている。ちょっとやそっとでは真似できないレベルと言ってもいい。

ちょっと暗いわかりづらい方がかっこいい。そんな空気の中で徹底的にわかりやすくカッコよく面白い。それは主宰の稲葉の心意気そのものなんだろうと思う。滲み出してくるものがある。

そんな面白い舞台なのである。aubeは。

aube https://www.facebook.com/aubeentertainment/
ジャグラー稲葉悠介を中心として2016年から舞台公演を発表している。ジャグリングの道具や動きを、見立てとはまたすこし違う使い方で、演目に融合させた作品を発表している。ジャグラーでなくとも楽しめる。作:稲葉、演出:昆虫

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