公(パブリック)と私(プライベート)〜行政のデザインは公平性から先進性へ


こんにちは。 三連休も企画書作成にあけくれております、もとこです。
さて、先日たまたま見つけた、奈良県生駒市のこちらのサイト。

生駒市トップページの右の画像に注目。

す、すごい。まるで『北欧くらしの道具店』みたい。
生駒市さんは、5年ほど前からわたしが手がける『小豆島カメラ』にコンタクトをくださったり、『長浜ローカルフォト』の視察に来られたりと、シティプロモーションに熱心な地域だと存じていましたが、このサイトにはほんとびっくりしました。

ひと昔前にくらべ、いまの若い世代や子育てママは、まちを「おしゃれかどうか」「デザイン的にカッコいいかどうか」で選ぶようになりました。そんなタイミングで出会った生駒市のサイト。 かつて「時代の気分」をこれほどたくみに汲み取ったシティプロモーション、行政デザインは見たことありません。”カッコいい民間のローカルデザイン” はあっても、行政のそれは皆無でした。

理由はもちろん、スマートフォンの台頭で、SNSやアマゾンを通じて都市のかっこいいデザインが地方でも簡単に手に入るようになったこと。服を買うために上京してラフォーレや裏原のお店に並ぶ、というのはもう昔のことなんですね。

サイトを手がけたのは、生駒市魅力創造課の大垣弥生さんという女性職員。彼女はこれを作成するにあたり、公平性を重んじる行政デザインをいかにアップデートするか、相当苦労されたようです。

「公平性を重んじるあまり、まちが求める若い世代や子育てママが全く興味を示さないダサいデザイン」か、「先進的に時代の気分を取り込み、若い世代やママたちが “カッコいい” “素敵” と注目し、ワクワクするようなデザイン」か? そりゃ、どうかんがえても後者ですよね……。

この生駒市の “先進的なクリエイティブによるまちづくり” は地元の若い世代の支持はもちろん、自治体の認知度向上にもつながって、今や「行政デザインは公平であるべき」という旧来の常識を覆す事件となりました。


生駒市のみならず、同じ関西圏の神戸市でも、行政デザインのイノベーションが起きています。神戸市は「デザイン都市・神戸」を推進して、2015年からクリエイティブディレクターを採用( 非正規ですが )しています。行政デザインのリテラシー向上を目指し、デザインの力で、産業振興、子育て、福祉などの課題解決に取り組んでいます。

神戸、もはや行政サイトとは思えまへん。

公(パブリック)と民間(プライベート)。公は公平を重んじ、民間は自由を重んじる。デザインも同様で、行政のデザインは ”まずは公平ありき”  でした。それが震災を機にゆっくりと、しかし大きく変わりつつあります。

住宅、商業施設、図書館、スポーツ施設など、あらゆる行政サービスが民間に譲渡され、公民連携の事業が増加するなかで、このような(公民連携の)風潮が自治体のサイトや広報物などのデザイン領域にまで影響を及ぼし、行政デザインは従来の 最大公約数向けの ”公平なデザイン” から、ターゲットを絞った"先進なデザイン” に進化していきます。

原因は、グローバル化によるデザインリテラシーの向上と、人口減少でしょう。 スマホでおしゃれなデザインが簡単に手に入る昨今、若い世代や子育てママに向けての施策が、従来通り "公平だがダサいデザイン” では、もはや興味を引くことは難しい。ゆえに「おしゃれ」で「かっこいい」民間のデザインセンスを取り入れてのシティプロモーションが求められるのです。

行政デザインは、今後すごいスピードで先進的、専門的にカッコよく進化していくと思います。なぜなら、それよりさらに速いスピードで人口が減っているからです。「公平から先進へ」。全国の自治体が若い人々を取り込もうと、生駒や神戸に続けと、日本中で行政デザインのイノベーションが起きるのではないでしょうか?



クリエイティブの地産地消 小豆島カメラ

10年前、わたしが地方のフィールドワークを始めた当時は、カッコいいクリエイティブは東京をはじめとする都市のものであり、クリエイターは都市在住が当たり前でした。

それが一変したのは(もちろん、インターネットの普及もありますが)やはりなんといっても東日本大震災です。都市在住のデザイナーがこぞって地方移住を始めたことが契機となり、地方にデザイナーやクリエイターが増えていきました。


また、わたしは2013年、カメラメーカーオリンパスや写真雑誌・ファットフォトとともに『小豆島カメラ』という小豆島に住む女性7人によるカメラチームを作りました。チーム結成の目的はもちろん、移住促進や観光を目的とした民間のシティプロモーションでしたが、本当の目的は、地域クリエイターの育成でした。

というのも、今後さらに人口が減っていくなかで「地方地域が外部委託に依存することなくデザインができれば、若い人の流出を少しでも防げるかもしれない 」と思ったからです。 それにはまず ”地域クリエイターの育成” という訳で、半ば社会実験的に『小豆島カメラ』を結成しました。


予感は的中し、いま小豆島カメラのフェイスブックページの「いいね!」は11000を超え、香川県ベスト3(のフェイスブックページ)となり、メンバーの経営するカフェには毎週のように移住相談者が訪れるようになりました。また、昨年の島の移住者は500名という驚くべき数でした。もちろん、この数は彼女たちだけの手柄ではありませんが、5年にわたる日々の発信は、まちに若い息吹を与え、今では島のあちこちにカフェや飲食店や雑貨屋やアクティビティができて、ローカルカルチャーが根付いています。



デザインの新自由主義? クリエイティブのアップデートが地方の課題を解決する

話はちょっと飛びますが。

かつての社会主義国の崩壊……東西ドイツの統一(1989)や、旧ソビエト連邦の崩壊(1991) や、最近なら北朝鮮の近代化など、それらは結局、隣のほうがカッコいいじゃん、おしゃれでうらやましい!が本当の原因でした(池上彰のやさしい経済より)。東ドイツが、隣の西のほうがよっぽどおしゃれで素敵な生活してるじゃん、とか、ロシアもダサいブーツよりもっとカッコいいブーツが欲しいとか、北朝鮮の人々も南のようにブランドを着てスマホを持つ生活がしたいとか。

政府がどれほど情報統制しようとも、人々の欲望は抑制できなかった。これらベルリンの壁や旧ソビエトのエピソードは、そっくりそのまま、今の日本、東京対地方の構造に当てはまるのではないでしょうか? 行政が 公平性を重んじ、ダサいことを良しとしていては、新しいものに敏感で、切磋琢磨を好む若者はますます地元を離れ、まちは衰退する一方でしょう。


そう、おしゃれとか、カッコいいとか そういった「時代の気分」は、今や国や自治体にとって重要な評価基準なのです。

おしゃれな iPhone がダサいガラケーに取って変わったように、カッコいいまちが選ばれ、そうでないまちは棄てられる……。そんな若い世代の目に見えない "欲望” や " 気分” を生駒市は見事に捉え、プラットフォーム化に成功しました。これはパブリック(公)とプライベート(私)の間にある、コモン(共)のデザインで、まさに公民連携時代のデザインといえるでしょう。


そのルーツは、例えばNTT。80年代の中曽根政権が、国のサービスだった日本電信電話を民間に譲渡した結果、携帯電話のイノベーションがおきました。

さらに原点をたどっていくと、80年代のイギリスのサッチャー政権とアメリカのレーガン政権による、新自由主義(ネオリベラリズム)に行き着きます。ネオリベラリズムはその後グローバリズムに進化して、結果GAFAという巨大帝国を生み出し、今や日本の地方のデザインにまで及んできました。

生駒や神戸のルーツは、まさかのサッチャリズム/レーガノミクス

デザインの新自由主義。それが本当に正しいかどうかは、今の時点ではわかりません。ただ、人々にまちに興味を持ってもらい、参加をしてほしいと望むのであれば、行政のデザインが切磋琢磨を良しとしない公平性のままでは、難しいと思います。まちの課題解決には、クリエイティブのアップデートが必須なのです。



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MOTOKO oshima

写真によるまちづくり、ローカルフォト主宰。 活動範囲は、小豆島、長浜市、真鶴町ほかいろいろ。
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