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「先生」のホスピタリティ

数年前、病院で「患者さん」を「患者さま」と表現する動きが活発化した事がありました。残念ながら医師は「敷居が高い」「偉そう」などの印象を与えてしまう例が見受けられた為、顧客満足の為に改善を図ろうという取り組みであった様ですが、多くの場合は浸透せずに元の「患者さん」という表現に戻っている様ですね。

ニーズをリサーチせずプロダクトアウトの発信をしてしまった例とも言えますが、医師と同じく"先生"と呼称される事の多い職業である士業は、果たしてどうでしょうか。

いわゆる"先生業"は業務の性質としてクライアントに「頼りない」という印象を与えてしまうと成立しないという側面があります。コンサルタントなどにも当てはまりますね。過度にへりくだる事は適切ではありませんが、かといって前時代的にふんぞりかえっていては決してクライアントの信頼を得る事はできないでしょう。偉人や成功者には、その低姿勢ぶりを驚かれたという逸話を持つ人も多く、成熟した文化人はおごり高ぶらない品性を備えているという事でもありますので、そういった当たり前の振る舞いもできない様な人は仕事も出来ないだろうと評価されても仕方がないと言えます。

威圧感を与える事で尊敬を得ようとする振る舞いは、実力不足をカバーしようとする行為にも見えますので、かえって逆効果になる事もありますよね。真に"先生"として信頼を得る為には呼び方など表面的なものに目を向けるのではなく、お互いに尊重し合い心地よいと感じられる関係を築く為の「ホスピタリティ精神」が欠かせないのです。

また、高度で専門的な分野になるほど、依頼する側が専門家の業務対応レベルに見当をつける事は難しくなる為、比較要素として接客応対や人柄などが重要視される傾向が見られ、ホスピタリティレベルを高める事は競合に対する強力な武器を手に入れる事であるとも言えるでしょう。

もちろん、丁寧に対応する事そのものが圧倒的なクオリティであれば、それ自体が商品価値を持ちます。オンラインでの調べものによく利用される「よくあるご質問」でいくら検索しても見つからない、チャットボットの対応では解決しない問題だったなど、対人対応ならではの効果が求められている場合には、より価値を感じて喜んで頂ける筈です。

相手にどの様な印象を与えているのか、自分では案外気がつかないものですので、折々に振る舞いを省みる習慣をつけておくとクライアントの為にも自分の為にも有益かと思います。

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