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過ぎる

「ニシノさん、マジメだから 」 
40代後半あたりから、折につけこう言われる。こちらとしては大体においてヘラヘラしてるものだから、マジメと自分が結びつかない。どこが? どんなふうに? 問いただしたくなるが、いちいち問いただすのも大人気ないし、ムキになって否定するのもはばかれる。相手だってなんとなくの印象を言ったにすぎないはず。グッと言葉をのみ、ヘラヘラしながら首を横に振る程度の否定を続けてきた。

つい先日のこと。職場で小さなミスをした。ミスとも言えないようなことでチーフに報告をしなかった。しかし帰宅してからも報告しなかったことが気がかりで、社会人3年目の長女と大学生になってアルバイトを始めた次女に、そんなこんなでドキドキしてるのよ。弱音を吐いたところ、                 「そんなこと報告する必要ない。ママったらどれだけ小心者なの?」      で、ハタと思う。報告しなかったことをズルズルと気にかけるのはミスをごまかしているような心持ちになるからなんである。しかし報告を受ける側にしてみれば、とるに足らないようなミスをいちいち報告されても……と、胸の内でため息をついているかもしれない。
そうか、わたしのマジメはこれか。融通が効かない。正直が過ぎる。バカ正直。

実のところ、マジメと評されるたびに居心地の悪さを感じながらも、この言葉に悪い気はしていなかった。つまり、マジメのよき面、たとえば誠実なんてことを自分にあてはめ密かにニンマリしていたわけだ。そりゃ、なかにはイヤミでなくその言葉をかけてくれたひともあったろうが、もしかしたらほとんどの人は……。

たとえば職場のMさん。このひとはなにごとにおいてもキッチリしてる。時間をみつけてはあらゆる物の置き場所をつくり、ロスやミスを回避するために机まわりを整える。置いた場所をすぐに忘れてしまうわたしなんぞ、感心するばかり。しかしマメと評されるMさんに対しても時として「細かいからね」チクリと物申すひともある。

かの孔子も言ってる。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」


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