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「たゆたう」(長濱ねる著)を読んで

昨日の投稿に出てくる『本』というのは、長濱ねるさんのエッセイ集「たゆたう」である。

彼女は欅坂46(現・櫻坂46)というアイドルグループに在籍していたことがある。私は欅坂46を2019年の夏頃に追いかけるようになったのだが、彼女はそれからほどなくして、グループを卒業していったので、アイドル時代の活躍をリアルタイムではあまり知らない。

このエッセイ集は、「ダ・ヴィンチ」という雑誌で彼女が書いている連載をまとめたものである。

昨日の投稿でも少し書いたが、彼女がダ・ヴィンチで連載しているのは知っていたし、単行本を出したことも知っていた。インスタグラムだってフォローしている。

でも、連載を読んだことがなく、単行本の話も「そうなんだ〜」と流していたのが実情である。(別に彼女のことが云々とかではなく、元々自分の心に響かないとものを買わないタイプなのだ)

それなのに、なぜ単行本を買ったのか。それは図書館で雑誌を読んだ時に、想像以上に彼女のエッセイが肌にあったからである。

はたから見れば恵まれているところもたくさんあるのだろうが、それがかえって人々の悪意に利用され、彼女を苦しめる。その一方で彼女自身も自分がきっと恵まれていることを自覚していて、その悪意を簡単に受け流すことはできない。

その中でも、時たま訪れる暖かい言葉や人との出会いによって、どうにかこうにか生きている。そういう、まるでドキュメンタリー映画みたいなエッセイ集だった。

「たゆたう」という言葉は「揺れ動く」という意味だが、確固たる自分を見つけられず、社会の中で苦しみながら生きていることを表している部分があるのだろう。

これは私もよく分かるという文章が、そこら中に出てきた。こんな本はなかなか存在しない。

読み終わって、抱きしめたくなる本だった。

きっと、これからも自分自身にとって大切な本になると思った。

一番印象的だったというか、読みながら涙ぐんだのは「島の母」というタイトルのエッセイのタクシー運転手さんの言葉だった。マッサージ屋さんの話も、その言葉で私も泣けてしまうだろうなと思った。

嬉しくなったり、死にたくなるぐらい苦しくなったり。

言葉には魔力がある。

彼女の周りが優しい言葉で溢れますようにと、願わずにはいられない。

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