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「ヤミイチ」を見て

ネタバレ的要素もあるので、それは嫌だという方はBackしたほうがいいかも!

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私が原案をしているWゆき(雪女のユキ&風花ゆき)の声優を務めてくださっているしほんさんの出演する舞台、「ヤミイチ」を見てきました。

フライヤーにも書いてある基本的な流れ(予備校講師のセクハラ騒動)というのはありますが、実際には1つの舞台の中に複数の物語があって、それが「ヤミイチ」というSNSを通じて交差していくという感じのお話でした。

特筆すべきは、リアリティだと思いました。全ての登場人物にダメなところ(作中で言うところの闇)があり、一方で筋が通っているところもあるという二面性。こういう人って絶対いるよなと確信できる人物たちでした。

見る人によって、だれに一番感情移入するかは違うだろうなと思います。自分と一番近い人に共感するのかもしれないし、逆に反発心を持つかもしれない。その辺が観客に委ねられているのが、この作品の面白さだと思いました。

私自身は特定の一人というよりかは、シーンシーンで共感する人が変わるという感じでしたが、六原さんの感じは分かるなと思うことが多かったです(笑)分かってないんだけど、他人のことが分かったつもりになってしまう感じね。分かりたいという気持ちがあるからなんだけど、どうにも空回りしてしまうという。チョロQの例えが分かっちゃうところで「俺ヤバいのかな」と思いましたよねw

印象的だったのは、SNSの歪みみたいなところですね。リアルな知人、友人、身内には言えないけど、リアルなつながりのない人には言えるみたいなことって確かにあります。だけど、実際にそこに真の本音が書けているわけではないし、リアルなつながりのない人たちとの関係が積み重なっていくと、それはもはや避けたかったはずのリアルなつながりになってしまうわけです。(作中ではオフ会をした時点で、SNS的つながりが完全に崩壊してしまいました)

そして、Twitter(X)やインスタグラムで言うところの「いいね」や反応(作中では「ハート」)が欲しくて、ますます本音から遠ざかり、書くことがテクニカルになっていく。

そうするとどうでしょう。SNS特有のつながりがあったはずが、気が付いてみれば、何らリアルと変わり映えのしない世界がそこにあるだけなのです。リアルと違う仮面をつけているだけ。

所詮、人間がやっていることだから、変わったように見えて変わっていない。変わるわけがない。

そこに作中の人物たちも気が付いていくわけですが、しほんさんが演じていた早苗さんが最後に言った「また見つけます」というセリフで、人間は創造と破壊を繰り返しながら、同じところをグルグル回るんだなとも思いました。多少は変化するんでしょうけど。でも早苗さんは、自分でものを決めてるから、回りながらも前に進んでいるのかな。

ラストで前を向けたんだろうなあという人もいれば、また絶望の世界に行ってしまうのかなという人もいるあたりもリアルで、色んな人生を見ることができました。

人生の不条理、難しさ、後悔、一瞬の幸福感。

舞台の上に、私やあなたの人生があった……のかもしれない。

そこに自分がいたかもしれないというゾッとする気持ちや間違っていると思うけど、突き放せないみたいな微妙な気持ちになったりするので、見ながら自分という存在と向き合うこともできる作品でした。

知らなかった自分を知ることができるかもしれません。

最後に、インターネットテキストの表現が面白かったです。こんな風に表現するのか~と思って。役名見てびっくりでした(笑)

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