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ウーロンハイではなかった

 らーめん屋の新規開拓がしたくて隣駅近辺をウロウロしていたら、らーめん居酒屋を見つけた。個人経営の小さなお店。元々こういうミニマムなお店に入るのはあまり得意じゃないし、そもそもお酒を飲むつもりもない……と、その店の前を二往復して、三往復目に、ビビってんじゃねえよ、とお店ののれんをくぐった。

 客は俺一人だった……。テレビを見ていた店主が「お前なんで来た?」というような表情をしていたのが印象的だった。
 メニューを見てみるとどうやらラーメンは日替わりらしく、カレースパイスラーメンとカレースパイス油そばと食べるラー油油そばしかなかった。カレーを食べるつもりはなかったので、仕方なく、食べるラー油油そばを注文した。

 はぃお待ち下さいー、と店主が言ったきり、会話はない。気まずい……。こういう時に小粋な会話でもできたらいいんだけどなぁ、と思いながら、noteの新着記事をチェックして、何分かして食べるラー油油そばが来た。

たまねぎがあるのが偉すぎる

 ウマい。バカ舌なのて食レポできないのが悔やまれるが……まぁ、とりあえずうまい。俺がもともと食べるラー油が好きだからうまいんじゃないか、というか食べるラー油がうまいだけなんじゃないか、とか色々考えたが、とりあえず上手ければ優勝なのだ。……あ、ほら、チャーシューもうまかったし。食べるラー油がよく絡んでて。

 気が良くなってきて、せっかく居酒屋だし、と思いお酒も頼んでみることにした。が、食べるラー油油そばに合う酒ってなんだ?わからん……。
 でもこんな時こそ店主に聞けばよいのだ。なんのためのラーメン居酒屋店主か。
「すみません、お酒飲みたいんですけど、これに合うお酒って何がありますかね」
「うーん、と……そうですねー。……なんですかねー」
 わからんのかい。なんですかねーじゃないのよ。なんでラーメン居酒屋やってんのよ。
 間違いでもいいから、とりあえずお酒の種類上げてくれりゃいいのに。仕方がないので無難の王様であるウーロンハイを注文した。

 これがまぁ、びっくりするほど大外れで、別にマズいウーロンハイが出てきたわけじゃないんだけど、食べるラー油油そばと劇的に合わなかった。食べるラー油のしょっぱさとピリ辛の上から、ウーロンハイが独特の苦みだけを残して過ぎ去っていく……。
 こんなにラー油に合わない飲み物があるとは……。レモンサワーとかの方が良かったかもしれない。というかレモンサワーが飲みたい。歯切れのよいレモンの酸味が恋しい……。
 この後味を口に残してお店を出たくなかったので、仕方なくウーロンハイを一気に飲み干して、食べるラー油を美味しくいただいて、代金1350円を支払ってお店を出た。店主はアド街を見てた。

 ラーメンが食べたくてお店を探してたのに、仕方なく食べるラー油油そばを食べて、仕方なくウーロンハイを飲んで、仕方なくウーロンハイを一気に飲み干して出ていったのであった……。
 でも、面白いなぁと思えるのは、じゃたつまんないひと時だったかと言うと……。少なくとも、こう、文章にしたいなぁ、と思えるくらいの、ぬるたい風が吹く初夏の土曜の夜ではあったのでした。

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