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パーカスにおけるエンベロープの話

はじめまして!早稲田大学Street Corner Symphonyでアカペラをやっていました、ゆーすけと申します。主にパーカスと、たまにベースをやっていて、先日サークルを引退しました。

社会人になるに向けて、自分の言語化の訓練も兼ねて、私がこれまでパーカス練習中に考えてたことを少しだけまとめてみようと思いました。なんのキャッチーさもないタイトルをつけてしまいましたが、そのままです。パーカスやってない方も「パーカスの人ってこんなこと考えてたんだ」くらいの気持ちで見て頂けたら嬉しいです。

自分は2年目のパーカス始めたての頃に2つ上の先輩(パーカスではない方)から「エンベロープの理解が足りない気がする」と言われ、それ以来これをずっと意識しています。

「リズムは外してないのになんかノリが良くない」と悩んでる方や「ミューズスコアみたい、単音を並べただけに聴こえる」とかいう講評をもらいがちな方には結構役立つ観点なんじゃないかなと思います。

エンべロープって?

※この章はSound Questを読んで頂ければわかることしか書いてないので、そんなの知ってるという方はすっ飛ばして頂いて全く問題ありません。

私は大学2年までこの単語を耳にしたこともなかったのですが、シンセサイザーによる音作りの世界では必須の知識らしいです。めちゃくちゃシンプルに言うと、「音を出してから消えるまでの音量の波形」をイメージしてもらえば良いと思います。この音量変化を、「アタック」「ディケイ」「サステイン」「リリース」の4段階に分類して考えていきます。

○アタック : 音を出してから音量がMAXになるまでの時間(音の立ち上がり)
○ディケイ : アタック後に音量が減衰する時間(演奏中の減衰)
○サステイン : 音を伸ばしている間の音量
○リリース : 音を出し終えてから音が消えきるまでの時間(演奏後の減衰、余韻、残響)

以上の4つの頭文字をとって「ADSR」とまとめて呼ばれます。詳細な説明はSound Quest様にお譲りします。投げ出してすみません。


パーカスへの応用


以上のエンベロープの考え方をパーカスの基礎音に置き換えて1つずつ見ていこうと思います。もちろんアカペラのパーカス向けに考えられた概念ではないので上手く説明がつかない部分もあるとは思います。ちなみにパーカスは鍵盤や管楽器などとは異なり音を伸ばし続けるといった動作は存在しないので、基本的にはサステインは無視してアタック、ディケイ、リリースについてのみ考えます。

※ここからは私見の占める割合が多くなります。間違っていることもあるかと思いますのであまり鵜呑みにしないようにお願いしますと保険をかけておきます。また、ちゃんと音楽理論を学んできた方には物足りないかもしれませんがご容赦ください…。素人の一考察程度に見て頂けると幸いです。

クラッシュシンバル

これが1番考えやすいと思います。パーカスやってるとよく言われる「2拍目のスネアまでしっかり伸ばせ」ってやつは、要するにリリースをしっかり表現することと同義と思われます。このときただ伸ばすのではなく、音量変化のカーブをイメージして音量を減衰させつつ次のスネアに着地するのが大事です。

また、初心者にありがちで、私自身割と最近まで悩まされた「ぴしー」「びしー」とダサく聴こえてしまう問題ですが、これはアタックとリリースが完全に分離した状態、滑らかなカーブにならずアタックの後でガタッと凹んでるようなイメージでしょうか。唇の破裂音に頼りすぎるとアタックが速すぎて叩きつけてるように聴こえてしまうので、喉キック(心臓の鼓動のモノマネするときにやるヴッってやつです)を混ぜつつアタックを丁寧に表現し、スロープ状の波形をイメージしながらリリースに持っていくと上手くいくのではないでしょうか。(わかりづらくて申し訳ないです。正直これは自分で試行錯誤し続けるしかないと思います…。)

バスドラム

バスドラムは基本的にはアタックをはっきり出し、リリースは短めでタイトに打つのが良いかと思います。多くの場合1拍目、小節の頭に置かれるきっかけの音になるので、アタックが不明瞭だったり残響でモワッとなると、その後のリズム全体に支障をきたす恐れがあります。(単音で使うときはあえて残響を出すのは全然ありだと思います。)

※ここでいうバスドラムのリリース(残響)は、有声で過度に声が残ってしまったり息漏れが激しい状態を指してます。私は無声(唇の破裂音で鳴らす)のバスドラムを使うことが多いですが、重さと楽器のバスドラムの空洞に響き渡る感じを出すために少しだけ低音の声を混ぜたりするので、そういった意味ではリリースは適度にある方が良いのかもしれません。難しい…。

関係ないですが、ビートの骨格を作る上でバスドラムは地味だけど1番大切な音だと思います。1拍目に置かれたバスドラムが基準となって他の音との距離が決まるからです。スネアが気持ち良い位置に来ない問題はスネア単音に拘るより、1,3拍の強拍に来るバスドラムをしっかりはめることを意識すると意外と改善する気がします。2,4拍に置かれるスネアはあくまで1,3拍のタメがあってのアクセントなので。重さと弾力でしっかりタメ感を作り、弾けるスネアとのコントラストも意識したい所です。


スネアドラム

スネアは曲によってかなり遊びが効くため、絶対的な正解というものは存在しないと思います。
例えば、以下の2曲をスネアに着目して比較してみるとどうでしょうか。

どちらも16ビートの曲ですが、Rock With You の方のスネアは余韻(残響)が短くスパッと切れているのに対し、流星のサドルでは程よく残響があるのがわかります。

*参考*
以下の記事によると、Rock With Youを含むアルバムではレコーディングの過程で生まれるドラムの残響音をあえて削っていたようです。確かにリズムがクリアで聴きやすいです。

ボイパの場合は有声や無声、息の出し方等を工夫すれば楽器よりもリリースをコントロールしやすいので、是非原曲を研究したりアレンジャーと相談したりして丁度良い塩梅を見つけてほしいです。

例えばハーフタイムシャッフルの楽曲だと多くの場合短くスパッと弾けるスネアが好まれるように思えます。もちろん例外もありますが。

逆にローテンポのバラードでは、感覚的ですが適度に余韻が残るスネアの方が情緒や暖かみがあって曲調に合う場合も多いと思います。

また、これもパーカス界隈でよく言われる(?)「乾いたスネア vs ウェッティーなスネア」「薄いスネア vs 厚みのあるスネア」というような二項対立ですが、これらの違いは恐らくディケイの長さの違いと置き換えられそうです。例えばディケイが長すぎて(過度に厚みのある状態)「ボフッ」みたいな音になってしまうとバスドラムとのコントラストが無くなり、バスで作った1,3拍のタメを2,4のスネアで弾き切れず結果的に進行感を削ぐ要因になるんじゃないかと思ってます。70年代のディスコミュージックなどで多用されるようなピッチ低めで厚みのあるタイトなスネアは、割とこれと紙一重な気がします。厚みを出しつつ「ボフッ」とならないためには、唇の接地面積をやや広めにとり息出しを素早くタイトに行うと良いかと思います。このとき口周りの脱力はすごく大事です。このときに限らないですが。

やはり一概にこれがベストというのは無いので、原曲を研究した上で唇の接地面積や巻き具合、息出しの速度、余韻の残し具合を調整するなどして曲に合うものを模索したいです。

ハイハット

ハイハットは音価が短く音量もそこまで出すのが良しとはされないため、エンベロープとしては考えづらいかもしれません。しかし、これもディケイの長さを調節することでアクセント等を表現することが出来ます。例えばP.Y.T.のイントロはハイハットを8分でシンプルに刻んでいますが、表拍と裏拍で明らかに音が違うのがわかると思います。これを単純に音量差と捉えても良いのですが、よく聴くと、表拍の方がよりシャンシャンした音に聴こえないでしょうか。

これは、ハイハットを叩く位置を分けることで表拍のディケイを長くとり、ディケイの差によるアクセントで進行感を生み出していると言えそうです。これもSound Quest様がよりわかりやすく解説してくれているので読んでみてください。(エンヴェロープ② 「ハットを比較」の部分です。)

パーカスの技術的な話をすると、私はこのイントロを演奏するとき、表拍は「チャ」と発音するイメージで舌を前歯で弾き、裏拍は「ツァ」のような発音でどちらかというと上顎寄りの位置で弾いてディケイの差を表現しています。もし興味があったら聴いてみてください。もしかすると出来てないかもしれないです。

このように一見地味なフレーズでも、ディケイの調節で表拍にアクセントを置くだけでビート感が生まれ、いわゆる立体的なパーカスに1歩近づけると思います。

最後に


もちろん私も普段から自分の出す音の波形を測って分析するなんてことはいちいちしていません。ただ、普段録音を聴いて反省するときに闇雲に聴きまくるよりは、アタック、ディケイ、リリースと何となく要素分解して聴いてみることで、「スネアのディケイが短くて薄っぺらいな」「クラッシュのリリースが雑でビートが途切れる感じがするな」「スネアやクラッシュが潰れて叩きつけてるように聴こえるからアタックを少しだけ遅らせた方がいいのかな」など、どこを改善したらよいのかが見えやすくなって、いつもの反省の質が少しだけ上がるんじゃないかなと思います。

有難いことに最近は後輩から私のパーカスを参考にしてますと声をかけてもらうことが増えたのですが、私の場合は他のメンバーの生み出すグルーヴに助けられてる部分がかなり大きいです。本当に。特にJAM以前の演奏は今じゃ聴くに耐えないのでどうか聴かないでください泣。パーカス単体で聴くのであれば是非私が尊敬してやまない先輩方やプロアカのパーカス、もしくはそもそも本物のドラムを沢山聴いてほしいです。

また、頭でわかっているのと実際にそれをアウトプット出来るのは全く別です。私もここに書いたことを意識はしていますが、いざ本番で100%出来ているかと問われると全くそんなことはないです。パーカスに限らず、アカペラにおいて個人練が大事と言われる理由はここにあると思います。十分なインプットがあるのは大前提で、それを本番で実践できる確率を100%に極限まで近づける作業が個人練だという風に考えてます。私は4年間(実質3年間?)で正直70%もいったか怪しいです。もっと個人練すれば良かったなーと今更後悔したりしてるので、現役生活がまだ続く方々には是非普段のバンド練以外に、毎日少しでいいので個人練の時間をとってもらえたら嬉しいです。

それでは、最後までお付き合い頂きありがとうございました!

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