ド素人がニュアンスで語るラップ印象論【さらしもの】

雰囲気が堪らないリリックビデオ

星野源の【さらしもの】という楽曲かありまして。
【Same Thing】という配信シングルの2曲目、ラッパーのPUNPEEさんと制作されたものです。
これが星野源の初ラップになります。
結論から言えば、私はこの楽曲が大好きなのです。

ラップ、というものを私はあまりよく知りません。
ごく普通に日本に住む、ごく普通に地上波で流れる音楽番組を眺めて育った、ごく普通の人間ですw
そんな私が源さんのラップを聴いて、思い出したことがありました。

それはたぶん、日本のお茶の間に「ラップ」と呼ばれる風が吹いてきた頃です。
音楽番組で流れてくるラップは、どちらかというと日本語をリズムに「合わせる」スタイルだった印象があります。
かなり画期的でしたし、とても歌謡曲の枠に馴染む日本語でもありました。
個人的にはその最たるものが吉幾三さんの「俺ら東京さいぐだ」です。

これ、凄まじかったんですよ。
もちろん歌詞の内容もあってコミックソング扱いされがちな楽曲ではあるんですが。
この歌唱力をお持ちの吉幾三さんが、1984年当時にこの楽曲をお茶の間に放つインパクトったら壮絶でした。
私はこの当時まだ幼かったので、笑いながら面白がって聴いていただけでしたが。
それでも私のラップ概念の根幹は、間違いなく吉幾三さんが創りあげたのだと思ってます。
「歌なのに音階はなくていいんだ」という、まさに音楽の天変地異です。

そこからしばらくは、このスタイルのラップが主流だった気がします。
今思えばとても日本の歌謡曲を踏襲していた、まさに和製ラップだったのかなあと思いますが。
ただどうしても、日本語を大切にするあまりリズムに乗り切れない感覚もありました。

そんなチリチリする感覚を払拭したのは、やはりRHYMESTERさんだったように思います。

PUNPEEさんとのコラボ


海外のラップにあるような、日本語をリズムに「乗せる」技術が確立された!とゾクゾクした記憶があります。
「合わせる」から「乗せる」への差はとてつもなく、リズムと日本語の韻が滑らかに調和する姿はもはや圧巻でした。
圧倒的にカッコいい、けど、圧倒的に日本語。
この新たなる日本語のラップスタイルは、瞬く間に広がっていきました。
聴いていてもとにかく心地よい、リズムに乗るだけで心に響いてくる日本語は美しいものでした。
神いたな、と思いましたものw

正直、それで日本語ラップは完成したのだと思っていた節もあります。
RIP SLYMEさんとかメチャクチャメジャーに踏み込んでましたし、最近ならCreepyNutsさんも耳が蕩けるほどに日本語が気持ちいい。
そこに現れた黒船が…私にとっての星野源であり、【さらしもの】だったんです。

源さんのラップって、また全然違うんです。
リズムに「乗せる」という概念そのものが当てはまらない感じなんです。
リズムというよりは、楽曲そのものに日本語を「紡ぐ」印象なんです。
リズムだけでなく音楽にもしっかり寄り添いながら、語るような穏やかなラップ。
一瞬、これはラップになるのか?と思うほどに自然な口調で、その日本語そのものが楽器のようでもあります。
動というよりは、静の動き。
こんなラップも存在するのか!と度肝を抜かれたのです。

まあ、あくまでもド素人の私が感じた印象論ですw
もっとラップを良く知る方々なら、もっと違う見方もあるのだと思います。
ただ私は、星野源の【さらしもの】が大好きです。
源さんにしか紡ぐことのできない、静かにたゆたう日本語が大好きなのです。
その静けさの中にある、ドロドロした深淵が大好きなのです。

少しでも興味を持たれたのなら、ぜひリリックビデオやMVを観て欲しいと思います。
【さらしもの】、最高にヤバい名曲ですよ。

こっちのMVも素敵です

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