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原爆忌

そろそろ原爆忌が近づいてきたわけである。
某Quoraで原爆は米国の背負うべき十字架なのかという問いをしてきた人がいて、先のサミットでバイデン大統領は広島の原爆資料館に行くことは行ったが「絶対謝罪などしない」という強い主張をされていたわけで、まあ米系のSNSであるQuoraではちょっとヤバすぎるだろうと思うのでこちらに記載しておこう。

結局は全てのG7首脳が広島の原爆資料館を見学したということになったわけだが、前回、広島を訪問したオバマ大統領は本館には入らず、ただ折り鶴を見学しただけだというから曲がりなりにも本館の展示を全員に見せたという岸田首相の努力と執念は並々ならぬものがあったということだろう。

それであるからこそ、原爆ドームを背にG7首脳が写真を撮ったということは歴史的意義のあることだと思うわけである。

今は比較的マイルドな展示に変更されているというが、私が修学旅行で広島を訪れた時にはまだまだ被曝した人が現役で活躍していた時代である。展示も実に生々しいものであった。あれ以来、もうあの原爆資料館には足を運ぶ勇気をなくさせるほどであったわけである。けれどもマイルドであったとしてもあれを見ることで、原子爆弾の被害というものは並のものではない、あれはまずいということが心から理解できるはずである。

私が原爆を投下した米軍が十字架を背負うべきというのは進駐軍が設立したABCC (Atomic Bomb Casualty Commission)がただ被爆者の検査や観察に特化した機関であったということである。つまり治療は原則として行わず、ひたすらに観察する。これはタスキギーでの黒人梅毒患者の自然経過をひたすら観察して行く研究ータスキギー事件と本質的に同じ非倫理性を有していたのではないかということである。

https://ja.wikipedia.org/wiki/タスキギー梅毒実験

この事件では梅毒の治療薬である抗生物質が手に入るようになってからも治療を行わなかったらしいので、クリントン大統領が正式に謝罪表明をしたそうである。

広島・長崎に関して言えばそもそも放送規制が行われ、原爆症の患者のことはマスコミで報じることすら規制され、原爆症患者への公式の支援が始まったのはサンフランシスコで講和条約が成立してGHQが日本占領を終了してから後のことだったという。

ちょっとそれは酷いのではないかという気持ちは多くの人の共有するところかもしれない。日本人を実験動物のように扱ったのであればそれは生命倫理的にどうよということになる。何だかpdfの埋め込みに失敗しているようであるが、広島県の「原爆被爆者援護の概要」というファイルである。

広島市公文書館紀要29号(平成28年6月)には「占領期における広島原爆傷害研究所の整備と広島の復興について」という中川利國氏の研究ノートがある。(このpdfも埋め込みに失敗しているようである。

それによると、ABCCの非治療方針は予算がないということのほかに、日本政府の認定した医師免許を尊重し、米国人医師(日本の医師免許を持たない)が治療を行うのは日本政府に対する越権行為だから治療は日本人医師に任せるということであったようである。そして、その禁を犯してでも日本の被爆者を治療しようとした米国人医師もいたということであった。

中川氏は当時の公文書館長であったようであり、いたずらに日米間の反目をもたらすことは本意ではないという意図もあることだと思う。ABCCの医師が度々、被曝で傷ついた日本人のために非治療方針に違反しても治療を行った(39ページ)ということはそれは一つの救いであろうと思う。

そりゃ国としては正義の行為だ!絶対に謝らんと強がっていたとしても、実際に傷ついた人を見て知らん顔をするのはそりゃ冷酷漢である。バイデン大統領も原爆記念館を見学した後は平和の重要性について述べている。

今は核兵器は米国だけが持っている時代ではないのである。少なからぬ国がすでに核兵器を所持している。特にロシアでは自分がウクライナに攻め込んだくせに、「自国が攻められたら核兵器を使う」と喚き出している。

このメドベージェフは以前から核兵器核兵器と騒いでいるわけである。もう観測気球にしか思えないわけである。けれども実際に彼らは核ミサイルを配備しているわけである。彼らの火遊びはおもちゃではない。

岸田首相は米国、英国、仏国そしてインドという4カ国の核保有国の首脳を原爆資料館に連れて行ったわけである。

後は左の国である。日本が核兵器禁止条約に調印しないとか泣き言を言う暇があるなら核兵器禁止条約の推進派は少しは岸田首相の爪の垢でも煎じて飲むべきである。そうしてプーチンやメドベージェフ、そして習近平の首に縄をつけても引っ張ってきて原爆資料館の展示をじっくりと見せるべきである。もちろん、金正恩にも見せなければならないだろう。

我々日本人は原爆投下による地獄絵図を既に知っているのである。けれども他の多くの国の人は地獄などというものはこの世の他にある幻だとでも思っている可能性が高いのである。

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