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のこぎり屋根

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のこぎり屋根工場の魅力。短編4編。
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「ノコギリアン文庫フェア2021」開催中!

「ノコギリアン文庫フェア2021」開催中!

展示作品
①ノコギリヤネ100年マップ(市内に残るノコギリヤネ全2,000棟の分布図)
②アートブック(終わりのない本、ほか)
会期:2021年 5月 23日〜 7月 25日
会場:二坪の眼(のこぎりニ・工房内)
主催:ノコギリアン(今枝忠彦:神奈川県藤沢市在住/一宮市今伊勢町出身)
共催:二坪の眼(▶問い合わせメール)
協力:サカオ・ケンジ(まれびと制作)、平松久典(のこぎりニ)

https:

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魂身の一枚

 スマホのカメラで写真を撮ることが多くなった。撮った写真はスマホに蓄積されていく。便利な時代になったものだ。撮影解像度は低めに設定してある。パソコンのモニタで見れれば十分だ。プリントの質感を求めているわけではない。気軽に手軽に撮れるのが何より使いやすい。

 私が撮る写真はもっぱら記録写真が多い。写真日記、と言ってもいいかもしれない。誰かに見てもらうために写しているわけではない。他から見たら、なん

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のこぎり屋根工場は半屋外

 毛織物工場としての役目を終えた工場空間を再活用している施設が一宮市内にある。私はその八連の「のこぎり屋根工場」の一角に、二坪の事務所スペースを間借りしている。常駐しているわけではないが、そこは私にとって日常を過ごす場所でもある。木造ののこぎり屋根工場には間仕切りが無い。オープンスペースにあるブース状態に近い。事務所自体が一種の展示場となっている。

 事務所は、工場全体を見渡せる広い視界の中に位

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のこぎり屋根工場の匂い

 かつて、毛織物工場として活躍していた木造の「のこぎり屋根工場」。その様式はあまりに特徴的だ。天井のない北向きの屋根から太陽の光を採っている。外観は、屋根の形がのこぎりの刃のようにも見える。地図記号の工場はこの形をしている。

 地域ののこぎり屋根工場が、経済の隆盛を誇ったのは昭和四十年代辺りまで。産業の衰退と世代交代で、街ののこぎり屋根工場は役目を終えて、年々姿を消していっている。

 一人の若

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光のプール

 毛織物工場としての稼働を終えて眠り続けたのこぎり屋根工場。からっぽののこぎり屋根工場は“光のプール”だった。

 2014年秋、十六枚のプラスチックダンボールに描かれた壁画。愛知県一宮市の市民イベントで、市内在住の若手画家がライブペイントで仕上げた作品。ライブペイントは、路上に仮設された建築現場の囲い塀に十六枚のプラスチックダンボールを貼り付けて行われた。天地1メール80センチ、横幅14メートル

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