なごり

公園の木々がざわめいた。
突風が吹いた。
掌の石ころが風にさらわれた。
一瞬のことだった。
石ころの感触は手の中に残っている。
温もりとともに。

真夜中の公園は相変わらずベンチが点滅している。いくつかの灯りが消え、いくつかの灯りが点く。ベンチに座る人、ベンチを立ち去る人。そんな光景が遠く彼方にまで繰り広げられています。わたしのベンチもまた、彼方からは点滅するベンチのひとつとして映るのでしょう。

ひとつの石ころが、わたしの中をすり抜けていった。

手の中に温もりを残したまま、掌には石ころが無い。有るものが無い。それは錯覚なのか...

そして、喪失感。

石ころは、やっぱり無いんだよ。

風景は流れていく。

残像と余韻が交錯する。

こんにちは。と、さようなら。
こんにちは。と、さようなら。

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