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灰色の影絵


見た者が悲鳴を
上げるような絵を
真っ黒な影の絵を
恐らくわたしは
描くことが出来る

しかし本物の
美しい花一輪を
描きたいとずっと
想い続けている

儚げなそして
凛とした輪郭の
不意に現れる
姿の無い気配を
消えてしまう姿を

そうして
風景は余りにも
巨大で完全だから
わたしにはとても
描きとれないから
その影だけを
写しとり始めた

それはやがて
線になり
文字になり
言葉になった
だから今は
絵のない絵本の中で
こうして
灰色の影絵を描いている