メロディーの在り処

音叉の一音だとしても
そこにどうしてメロディーはないのか

まるで
明晰すぎる夢の中のように
一言も発せず
並行世界から目覚める朝に

まるで
涙の一粒の雨のように
雲の上から連なっている
突然に降りかかる理解に

まるで
哲学書のセリフのように
白と黒の遠近法の狂った
私を見つけた見知らぬ声に

まるで
石膏の乙女のように
美しさだけを固められている
若さという檻の冷たさに

いつも
どうしてもそこには
饒舌すぎる静寂がある
気づいた時には放り出されている
この理不尽な沈黙

一人一人の形をしている声がある
温度がある
感情はどうしても姿を取りたがり
手で触りたがり
手に入れて続けたがる

熱が揺れて言葉の前に生まれるもの
どうしてそこにメロディーがあるのか

まるで
夜明けの夏の始まりのように
小鳥たちが歌う
寿ぎと喜びとそして目覚めのときに

まるで
静かに陽が眠りに落ちるように
夜が足元から冷えて風を呼び
星々の世を明らかにするときに

まるで
断絶の苦しみの声のような
振り回す離れられない炎の
温かさよりずっと熱い肌の横顔に