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詩と詩形(エッセイ)

詩は古くよりあった
物語よりずっと古くよりあった
詩とは比喩により掴み難き意味を分からせるための形

それは形式であって思想ではない
それはレトリックであり真意はない
それは方便でありふんわりと意味を感じさせる形
それはやわらかく伝えるための語りであった

今や詩は何処へ行ったのか
経典のそれと異なり何時しか人心と乖離している

詩は大衆へ向けてのものだった
詩は分かりやすくするための言葉だった
詩は比喩の美しい言葉だった
詩は実像と結びついた現世の言葉だった

深淵なる教えや真理を伝えるための最も短い物語として
そこに詩はあった

テンポでありリズムであり抑揚であり韻であり
それは豊富に比喩を含む語り口である

詩はいずれ霊性を最も良く伝える形式となるだろう
遥かなる時の濾過により宗教が形式となり
神が形なく言葉なく恐れだけが残っているように

しかし言葉はまだ動いている故に
詩は未だ形式とならず
まるで彷徨いのように意義を見失っている

文語が近代語となり
現代語と呼ばれ未だ百年を数えない
それ故に現代詩は未だ形式に迷っている
けれど詩が形式であることは変わらない

どのように意味を述べても
それが詩形でこそ分かり易くなっておれば
そこに詩の形式は護られる

そもそも護られるべき詩形などない
護るべきは内包する霊性であり
教えであり真理である

ある時霊性が語りかける形ない何か
詩人をして言葉にせざるを得ないもの
それは吐かざるをえない呼気
水中にあって溺れる泡のごとく

そして沈んでいく深みで
詩形の中に現れる己すら不可知の意味
言霊の萌芽を表し
霊性の言葉の源を表すもの

詩とは
詩形とは
本来、久遠の言葉を翻訳するシステムである
形ないものを言葉にするための作法である

故に形なきものを形なきままに
損なわれないように詩は続く
久遠の言葉がより良く伝わるための形として
詩は何時までもある