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鷲の魔導士の最期の詩(物語詩)


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ジャン=レオン・ジェローム 1890年『ピグマリオンとガラテア』

あなたの美しい声は
降りしきる雪のような言葉は
もう耳にすることが出来ない

あなたのやさしいゆびさきの
ほっそりとした文字は
もう二度と描かれることはない

あなたのひそやかな明るい
朗らかな足音は
もう二度と聞かれることはない

全てはこの時に終わってしまおうとしている
このことに耐えきれず
抗いの禁呪として
わたしはあなたを氷の中へ繋ぎとめる
やがて燃え上がる陽の朝焼けに
この冬が溶けてしまう
最期の夜に

尽きてしまったこの世の希望よ
全てをもう溶けはしない青い石にして
わたしの祈りの全てを注ぐ
あなたの真実だけを隠すために

凍てついた頬の望みは
白く燐光する夜毎の溜息に
輝いている肌から揮発していく
時を永遠に留めんとして

ピグマリオンの神話を遡り
まだやわらかくある
あなたの白い胸よ
冷たく輝く夢となれ

声は静かな響きを取り戻し
ゆびさきはしなやかに光を追い
澄んだ足音は
純白の雪の結晶のように
時を留める
この世に一つきりの
生きた最期の彫像として
あなたは蘇る

凍てついた時の中で
あなたは水晶を抱き
青い水鏡を眺めるだろう
石筍が重なり
静寂の陰だけが
いつまでも積るだろう

星の静かな夜に
あなたとわたしは共にある
この別れの哀しみが
久遠の時に溶けるまで
あなたよ
凍れる宝石の彫像であれ
隠された青い氷窟の
奥底に眠る
誰にも知られぬ痛みであれ

そして
いつか
この溶けない哀しみを
隠された秘密の時を
涙の中へ引き継ぐものが現れる
星が巡り果て
月日が忘れてしまうまで
その遠い日まで
あなたよ
永久(とわ)に美しくあれ