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かえれないところへ(抒情詩)

かえれないところへ
かえれないところへ
夜の海の波打ち際で
虫が集く鳴いている
遠いだろう
けれど
とても近しいところで

かえれないところへ
かえれないところへ
秋が聞こえる月のない夜に
虫が集く鳴いている
失ってしまったことを
どうしても
夢に見るところで

どうしてだか
そこは明るいのだ
白々としている
もうどこにもないはずの
いつも夢に現れるところは

かえれないところへ
諦めが連れていくから
果てのない波打ち際へ
月の光が導いている
遠いだろう
けれど
すぐ裸足の足元を濡らしている